街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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チェコ・ブルノ動物園のウムカ、「偉大なホッキョクグマ」への道を歩む ~ 人工哺育された雄の大器

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ウムカ Photo(C)Václav Šálek / ČTK

チェコ・モラヴィア地方の都市ブルノの動物園については昨年11月24日にコーラお母さんから生まれた双子である雌のコメタと雄のナヌクの成長を追いかけ続けてきました。 しかしその間に一度もこの双子の父親であるウムカについて触れたことはありませんでした。 ホッキョクグマの赤ちゃんが一般公開されると父親の存在感が薄くなり、あまり話題にならなくなるという傾向はどこの動物園にもあるようです。 しかしそういった中でもロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のメンシコフだけは別格で、たとえウスラーダが赤ちゃんたちと一緒に展示場に出ていても、隣のメンシコフの展示場の前にも多くの来園者が彼を見つめているといったわけです。 これはやはりメンシコフの姿の偉大さというものには、たとえ母親と赤ちゃんの姿が魅力的であろうとも、別な意味で多くの人を引き付けるものがあるからです。 そして将来、こういったメンシコフのような存在になるかもしれないのがこのブルノ動物園の15歳になったばかりのウムカかもしれません。
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ウムカ Photo(C)Václav Šálek / ČTK

このウムカの昨年の9月頃の姿を見ておきましょう。



このブルノ動物園のホッキョクグマ飼育展示場は施設的には不十分で、雌のコーラが9月に出産準備に入るたびに雄のウムカは他園へ出張させられるという状況が何度も繰り返されてきました。   
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2010年1月にブルノ動物園に戻ったウムカ Photo(C)iDNES.cz

ブルノ動物園としては彼の度重なる移動は彼にとってストレスとなることを考慮してメインの展示場に隣接したウムカの展示場を整備し、このたび彼専用の水深のある新しいプールも新設したそうです。 実はもっと大がかりな施設整備を行いたかったそうですが予算の乏しいブルノ動物園ではとりあえずこういった部分的な整備を先行させ、近年に予定している新ホッキョクグマ飼育展示場の新装計画までのつなぎにしたいと考えているそうです。 そのウムカ専用のプールが10月下旬にオープンし、そこでのウムカの様子を伝える2つの映像をご紹介しておきます。





さて、このウムカは1998年にカザフスタンのアルマトイ動物園で生まれ、実は人工哺育で育てられたわけでした。 彼の父親は以前にも「カザフスタン・アルマトイ動物園、アリコルの独居の『 孤独 』」、及び「カザフスタン ・ アルマトイ動物園に暮らすアリコルへの朗報 ~ 動物園大改修計画による飼育環境改善へ」という投稿でご紹介したことのあるアリコルです。 このアリコルのアルマトイ動物園での姿をご覧いただきましょう。 2011年の映像です。 冒頭はCMです。
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アリコル(ウムカの父) Photo(C)uber.kz

2011年のアルマトイ動物園でのアリコル(ウムカの父)

このアリコルの母というのが一昨年の秋に私がロシアのカリーニングラード動物園で会ってきたスネジンカです。 スネジンカは私の会ったときにはすでに37歳になっていて当時は世界最高齢のホッキョクグマでしたが、そのような年齢を感じさせない若々しさを感じました。 私がカリーニングラードで会ったそのスネジンカの死の一か月半ほど前の映像をご紹介しておきます。

2011年9月 カリーニングラード動物園でのスネジンカ(ウムカの祖母)

スネジンカは私が会った一月半後に亡くなってしまいましたが、本当に生前の彼女に会うことができて幸運でした。 彼女の姿は今でも心の中にはっきりと残っています。 このスネジンカはブルノ動物園のウムカにとって祖母になるわけです。 
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クリスティーナ(ウムカの母) Photo(C)friends.kz

一方でこのウムカの母親であるクリスティーナですが、彼女は1985年サンクトペテルブルクのレニングラード動物園生まれで、アルマトイ動物園ですでに2009年に亡くなっています。 このクリスティーナは今は亡き上野動物園のレイコの両親が同じの妹であり、そしてこれも先日亡くなった、とくしま動物園のバーレーの腹違いの妹ということになります。 レニングラード動物園からいただいた記録資料にあたってみますと、当時の1980年代のレニングラード動物園では雄のバレンツに対して雌がリトカとエジャの2頭が飼育されていて繁殖を担っていたわけですが上野動物園の故レイコとアルマトイ動物園のクリスティーナの母親はリトカ、とくしま動物園の故バーレーの母親はエジャというわけです。
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ウムカ Photo(C)DENÍK/Attila Racek

アリコルとクリスティーナとの間にできた唯一の子供であったウムカはアルマトイ動物園で人工哺育で育てられ、そして1999年にチェコのブルノ動物園に移動してきたというわけです。 現在ではウムカは非常に堂々とした貫録のある姿をしています。 雄としての存在感も十分です。 「偉大なホッキョクグマ」への道をしっかりと歩んでいるように見えます。 雄の場合は、人工哺育されても繁殖には影響がないという見事な例がこのウムカなのです。 最近まではこのウムカはその姿が見にくい場所に飼育されていたわけで、「ウムカは元気ですか?」とブルノ動物園の担当者は来園者からしばしば尋ねられていたそうですが、今回の改良工事によって専用のプール設置だけでなく来園者からもウムカの姿がよく見られるようになったそうで、これからこのウムカの人気が増々上がっていきそうな気配です。
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ウムカ Photo(C)DENÍK/Attila Racek

(資料)
Česká televiz (Oct.31 2013 - Umca dostal nový bazén, brzy se dočká i Nanuk a Kometa)
DENÍK.cz (Oct.31 2013 - OBRAZEM: Lední medvěd Umca si zaplaval v novém bazénu)
Novinky.cz (Oct.31 2013 - Lední medvěd Umca má nový bazén)
Česká televize (Nov.1 2013 - V Zoo Brno má lední medvěd Umca nový bazén)
CENTRUM (Oct.31 2013 - Lední medvěd a otec medvíďat Umca má nový bazén)
AGF Media (Oct.31 2013 - OBRAZEM: Umca se před fotografy styděl, s koupáním v novém váhal)
iDNES.cz (Jan. 15 2010 - Lední medvěd Umca se vrátil do Brna, do výběhu jej spouštěli hasiči)
friends.kz (Jul.18 2007 - Алматинский зоопарк (теперь с фотографиями))
uber.kz (Jul. 30 2013 - Медведям и слонам алматинского зоопарка подарят свободу)

(過去関連投稿)
カザフスタン・アルマトイ動物園、アリコルの独居の「孤独」
カザフスタン ・ アルマトイ動物園に暮らすアリコルへの朗報 ~ 動物園大改修計画による飼育環境改善へ
カリーニングラード動物園を訪ねる ~ 老ホッキョクグマの姿を求めて
世界最高齢のホッキョクグマ、間もなく38歳になるスネジンカの姿に感激!
カリーニングラード動物園訪問2日目 ~ スネジンカさん、お元気で! 必ずまたお会いしましょう!
ロシア・カリーニングラード動物園のスネジンカ、その日常の姿(1) ~ 遠征での映像より
ロシア・カリーニングラード動物園のスネジンカ、その日常の姿(2) ~ 遠征での映像より
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ロシア・カリーニングラード動物園、最高齢のスネジンカ逝く...
ロシア・カリーニングラード動物園で一昨年亡くなった故スネジンカのソ連時代 (1980年) の貴重な映像
若々しさを保つバーレー ~ 偉大なる母の娘、ここにあり
とくしま動物園のバーレーが亡くなる ~ アンデルマのカザン市動物園における同僚だった彼女の死
by polarbearmaniac | 2013-11-18 06:00 | Polarbearology

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