街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ビーグル犬のエルヴィス君の妊娠判定(3) ~ シンシナティ動物園のベリトは “妊娠なし”

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ベリト Photo(C)The Cincinnati Zoo and Botanical Garden

過去の妊娠したホッキョクグマのサンプルを用いた訓練によってビーグル犬のエルヴィスが嗅覚で雌のホッキョクグマの妊娠の有無の判定に極めて高い確率 (95%) で成功し、そして今年全米の14の動物園で合計17頭の繁殖行為のあった雌のホッキョクグマのプロテインのサンプルに対してエルヴィスが「妊娠判定」に挑戦する試みがなされていることは「アメリカ・デンバー動物園、コロンバス動物園などがホッキョクグマの妊娠判定にビーグル犬の嗅覚を利用へ」という投稿でご紹介してきた通りです。
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ベリト Photo(C)The Cincinnati Zoo and Botanical Garden

さて、このたびこの犬の嗅覚による妊娠判定を主導してきたオハイオ州のシンシナティ動物園 (The Cincinnati Zoo and Botanical Garden) ですが、自園の間もなく15歳になる雌のホッキョクグマのベリト (Berit) の妊娠の有無についてのエルヴィス君の判定結果を公表しました。 判定は “Negative(妊娠なし)” だそうです。 このシンシナティ動物園では前回ホッキョクグマの赤ちゃんの生まれたのは24年前のことであり、現在のペアである14歳の雌のベリトと23歳の雄のリトルワン(旭山動物園のサツキの兄ですが、父親は異なります)との間には毎年のように繁殖行為があるものの、まだ赤ちゃんの誕生はないそうです。
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リトルワン (旭山動物園サツキの兄)
Photo(C)The Cincinnati Zoo and Botanical Garden

そういったことで今年の繁殖行動期には思い切って雌のベリトにホルモン剤を注射してみたそうです。 この注射は2回行われ、それぞれの間が90時間の間隔を開けて行われたそうです。 なんとかホッキョクグマの繁殖を成功させたいというシンシナティ動物園は多くの研究と多くの試みを行っていますが今回もそういったことの一環だというわけです。 ここでこのベリトとリトルワンの実際の姿を映像でご紹介しておきます。 一番目の映像では最初と最後に映っているのがベリト、真ん中に登場しているのがリトルワンです。リトルワンはさすがにサツキと似ていますね。



次は雪の中の2頭です。


これは活魚のプレゼントですね。


さて、今回の全米の14の動物園の合計17頭の雌に対してエルヴィス君の嗅覚による「妊娠判定」が終了したそうです。 この研究を主導しているシンシナティ動物園のカリー研究員はそれぞれの動物園の結果について現時点では明らかにすることは避けていまが、全米の動物園で今年の出産シーズンに実際に誕生する赤ちゃんの数は昨年と似たようなものとなるだろうという厳しい結果をエルヴィス君は出しているそうです。 昨年生まれたのはトレド動物園のスーカーとサカーリの双子とバッファロー動物園で人工哺育で育てられたルナの3頭です。 ということはつまり、エルヴィス君が “妊娠している” と判定したのは17頭のうち多くても3頭の雌だけであるということを意味しているのでしょう。 双子のケースを考慮すれば、多分妊娠しているのは2頭の雌だけであるような気がします。 ただし、ちゃんと出産に成功して育児も成功するという確証はないわけです。
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ベリト(左)とリトルワン(右)
Photo(C)The Cincinnati Zoo and Botanical Garden

アメリカの動物園関係者に冷水を浴びせるようなエルヴィス君の「妊娠判定」ですが、これはまあそんな数だろうという予想は十分につくわけです。 昨年には「大本命」であるトレド動物園の大物お母さんであるクリスタルがいましたし実際に彼女は双子を出産しています。 今年は彼女が育児中ですから出産はなく、そうなるとアメリカにはもう「本命」はないわけで、やはり私は今年のアメリカは、良くて1頭の雌だけの出産成功で終わるのではないかと予想しています。 一昨年も大物お母さんは不在だったわけで、誕生した赤ちゃんはなんとゼロだったはずです。 今年もゼロであっても何らおかしくないでしょう。 そう考えてみれば、このエルヴィス君の嗅覚による「妊娠判定」は冗談などではなく、やはり相当な精度なのではないかと思われます。

こういった確率から翻って日本のホッキョクグマ界を見渡していけば、日本で繁殖行為があったために「産室エリア」にいるホッキョクグマの数はアメリカの半数程度と見積れば、日本ではアメリカの半数の今年は1頭が出産に成功すれば大きな幸運であると考えられるという程度でしょう。 言葉に非常に語弊がありますが、「0.5 頭」というのが順当なところではないでしょうか。 要するに大物お母さんたちが出産の順番ではない年は欧米でも日本でも「ホッキョクグマは繁殖しなくても当たり前だ」という程度だということです。 もちろん私は日本のホッキョクグマの何頭もの雌に出産してもらいたいと思う気持ちは人後に落ちません。 しかし、願望と現実を混同してはいけないわけです。

(資料)
Christian Science Monitor (Nov.19 2013 - Is she or isn't she? Beagle sniffs out polar bear pregnancies.)
News & Observer (Nov.19 2013 - Beagle's nose predicts few US polar bear cubs)
Washington Post (Nov.19 2013 - Beagle’s nose predicts few US polar bear cubs this year, no pregnancy at Cincinnati Zoo)
Daily Journal (Nov.19 2013 - Beagle's nose predicts few US polar bear cubs this year, no pregnancy at Cincinnati Zoo)
ABC News (Nov.19 2013 - Beagle's Nose Predicts Few US Polar Bear Cubs)
Denver Post (Jun.24 2000 - Denver polar bears off to Cincinnati)
Cincinnati Zoo Blog (Feb.2 2013 - Polar Bear Love is in the Air) (Nov.8 2013 - Beagle Sniffs out a Pregnancy Test for Polar Bears)

(過去関連投稿)
アメリカ・デンバー動物園、コロンバス動物園などがホッキョクグマの妊娠判定にビーグル犬の嗅覚を利用へ
ビーグル犬のエルヴィス君の妊娠判定 (1) ~ カンザスシティ動物園のバーリンは “妊娠なし”
ビーグル犬のエルヴィス君の妊娠判定(2) ~ サンディエゴ ・ シーワールドのセーニャは “妊娠”!
by polarbearmaniac | 2013-11-20 06:00 | Polarbearology

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