街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ドイツ・ハノーファー動物園に2012年夏に札幌・円山動物園が提示した交換候補個体はアイラだった!

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アイラ (2012年7月7日撮影 於 おびひろ動物園)

掲題の件について、とうとうドイツ側の報道でその事実が明らかになりました。 それがドイツのBild 紙の12月17日付けの記事 ("Endlich wieder! Bärenspaß in Yukon Bay") です。 その前にまず最近のハノーファー動物園の様子をご紹介しておきます。

ドイツ北部ニーダーザクセン州の都市、ハノーファーの動物園 (Erlebnis-Zoo Hannover) については今まで何度もここで取り上げて投稿してきました。 この動物園御自慢のホッキョクグマ飼育展示場である「ユーコンベイ (Yukon Bay)」 は欧州屈指の飼育展示場であるという評価があり、ハノーファー動物園にとってはその集客のための目玉施設であることもご紹介してきました。詳しくは取りあえずは旋回の投稿である「ドイツ ・ ハノーファー動物園とホッキョクグマ展示場『ユーコンベイ (Yukon Bay)』 が味わった苦味」をご参照頂ければ多くの情報を得ていただくことが可能です。
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シュプリンターとナヌーク Photo(C)Norddeutscher Rundfunk

実はこのユーコンベイ (Yukon Bay) を悩ませていた問題は、展示場のプールに使用されている塩水の影響によって、そのプールを設置するために使用されていた金属に生じた錆びの問題であったわけでした。 その修理工事では素材の一部をチタニウムを用いたものに交換したり、あるいはコーティングによって錆びつかないようにする形で110万ユーロの出費によって行われ、このほどそれが終了してホッキョクグマたちは6週間ぶりに非展示スペースから再び姿を現し、ようやく展示場で水に入ることができるようになったとのことです。 それを報じる北ドイツ放送の映像はこちらでご覧ください。 当初この施設を設計・施行した会社を相手にハノーファー動物園では訴訟を提起し、審理は継続中だそうです。
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シュプリンターとナヌーク Photo(C)Neue Presse

さて、このハノーファー動物園では現在、6歳になったばかりのシュプリンターとナヌークという雄の2頭が飼育されており、さらにノイミュンスターの動物園から13歳のカップが同園での工事を理由に一時的にハノーファー動物園に預けられています。 そして札幌・円山動物園が昨年このハノーファー動物園と個体交換交渉を行った件についても、その背景を私なりに読み解いた考えを投稿してきましたので、「ドイツ・ハノーファー動物園と個体交換交渉を行った札幌・円山動物園 ~ その背景を読み解く」、「札幌・円山動物園の新ツインズ(ノワールとブランシュ – 仮称)、そして他のララの子供たちの将来 (上)」、及び「札幌・円山動物園の新ツインズ(ノワールとブランシュ – 仮称)、そして他のララの子供たちの将来 (中)」の3つの投稿をご参照下さい。その中で私は円山動物園の対欧州との二度目の折衝であった2012年夏の対 ハノーファー動物園との交渉について以下のどちらかではないかと考えたわけです。

(a) ナヌークとイコロ or キロルを交換してナヌークをアイラのパートナーにする。 場合によってはピリカのパートナーとする。

(b) ナヌークとアイラを交換してナヌークを将来のために同園で当分温存飼育する。


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シュプリンターとナヌーク Photo(C)Norddeutscher Rundfunk

さて、実はこの今回のハノーファー動物園のユーコンベイ (Yukon Bay) の修理工事完成を伝えるドイツのBild 紙の12月17日付けの記事 ("Endlich wieder! Bärenspaß in Yukon Bay") の中で、とうとうこの交渉についてハノーファー動物園の園長さんが口を開き、その内容が掲載されています。 Bild 紙の取材に対して園長さんは、ある日本の動物園(つまり円山動物園)の意向は、その園の雌(メス)一頭をハノーファー動物園の雄2頭(つまりシュプリンターとナヌーク)のどちらかと交換したいということだったことを述べています。 そしてさらに、相手方(円山動物園)の施設が基準に満たないためにハノーファー動物園の雄(オス)とその園(円山動物園)の雌(メス)との交換はできなかった(つまりハノーファー動物園は雄の若年個体を札幌に送り出すことはできなかった)という内容を述べています。 しかし依然としてハノーファー動物園は雌の導入の問題が解決していないことも認めている内容です。 その部分の記述のみを抜き出します。

- Auch noch ungeklärt: Die Frauenfrage im Eisbärengehege.
Ein japanischer Zoo würde ein Weibchen gegen einen unserer Jungs tauschen.  Scheitert an den dort unzureichenden
Standards. Zoo-Chef Frank Werner: „Da geben wir keinen
unserer Eisteddys hin!“


これによって昨年2012年夏の段階で円山動物園が交換個体として提示したのは雄のイコロでもキロルでもなく、実は雌(メス)のアイラであったことが明らかになったわけです。 何故なら、2012年夏の段階で円山動物園が所有権を持っていてハノーファー動物園に提示できた雌(メス)の幼年・若年個体はアイラだけだからです。 マルルやポロロはまだ生まれてもいなかったわけです。 年齢的にはピリカのほうがはるかに交換個体としては有望ですが、ピリカは帯広市の所有ですから、ピリカを指しているのではないと考えられます。 つまり、私が上にあげた選択肢のうち、やはり (b) が正しかったということが今回のドイツ側での報道によって明らかになったわけです。
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ナヌーク Photo(C)Erlebnis-Zoo Hannover

つまりその先を考えていけば、アイラを欧州に移動させ、交換でナヌークを入手し、それをピリカ(帯広市の所有ではありますが)のパートナーにしようという考えだったと思われます。つまり、ピリカを帯広から買戻して札幌でナヌークとペアを組ませ(年齢的にはほぼピッタリです)、札幌でララ/デナリの後継ペアにしようと考えた可能性が大きいのではないでしょうか。 その妥当性はともかくとして、ナヌークを日本に連れてきた場合にはパートナーは2012年夏の段階ではピリカ以外は想定できないということです。 何故ならララはまだマルルとポロロを出産しておらず、また2012年12月に出産するであろうと期待されていた赤ちゃん(結果的にはマルルとポロロ)が雌(メス)であろうなどという予想ができたはずがないからです。 それに第一、2012年12月に誕生するであろう個体が雌であることを期待していたにせよ、その結果見事に誕生した雌のマルルとポロロはナヌークとは年齢的にやや開きがあります。 さらに一歩進めて考えれば、円山動物園は少なくとも2012年の段階ではピリカを札幌に戻そうと考えていたであろうことを意味していると思われます。
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シュプリンターとナヌーク Photo(C)Norddeutscher Rundfunk

しかし、依然としてハノーファー動物園の雄の若年個体はパートナー獲得の見通しがたっていないようです。 それは園長さん自身が認めていることでもあります。 「札幌・円山動物園の新ツインズ(ノワールとブランシュ – 仮称)、そして他のララの子供たちの将来」の連続投稿について私はまだ最終章である(下)を投稿していません。 今後の展開を最新の時点で考え、そして後日に投稿するつもりです。 今回のドイツ側の報道によって、アイラは完全に欧州との交換個体であると円山動物園がみなしていることが明らかになりました。 となれば、マルルとポロロもアイラ以上に欧州との交換個体と位置付けられていることは明白でしょう。 そうなるとイコロとキロルが問題です。 時計の針が少し回り、状況に多少の変化があった時点でまた考えてみたいと思います。 円山動物園の新ホッキョクグマ飼育展示場建設とからめて、ララの子供たちの将来を考える場合には常に欧州の若年・幼年個体の動向を見据えていかねばならないわけです。 

ここで一つだけ、かなり途方もない大胆な予想をしておきましょう。 現在オランダのロッテルダム動物園でオリンカお母さんが産室に籠っているそうです。 もう出産しているのかもしれません。 あるいは今週中、または来週に出産するのかもしれません。 しかし仮にオリンカお母さんが雄(オス)の双子を出産すれば、その一頭はかなり高い確率で札幌 (の新ホッキョクグマ飼育展示場)に来るでしょう。 何故ならEAZAのコーディネーターはニュルンベルク動物園のフェリックスの息子やレネンのアウヴェハンス動物園のヴィクトルの息子やロッテルダム動物園のオリンカの息子たちにもう雌のパートナーを欧州域内の個体から当てる余裕が血統的には難しくなってしまっているからです。 そしてそうなると、マルルかポロロのどちらかが欧州に行き、残った方がその欧州から来たオリンカお母さんの息子のパートナーになるでしょう。 オリンカお母さんの出産のニュースがあればもちろんこのブログでご紹介しますが、その赤ちゃん(たち)の姿をじっくりと今のうちから写真や映像で見ておきましょう。 そして、オリンカお母さんがどのようにして息子を育てるか(ララとは当然違ったやり方です)を観察しておく必要があります。 遠い欧州でのホッキョクグマの赤ちゃん誕生のニュースは他人事ではなくなりつつあります。 私たちは絶えず世界のホッキョクグマ界を知っておかねばならないというわけです。

(*追記 - ちなみにシュプリンターの母親はフリーダム、ナヌークの母親はオリンカです。 どちらにも私は会ったことがありますが、実に素晴らしいお母さんたちでした。)

(資料)
Norddeutscher Rundfunk (Dec.17 2013 - Eisbären im Zoo - sie schwimmen wieder !)
Neue Presse (Dec.17 2013 - Zoo Hannover: Eisbären können wieder draußen planschen)
BILD.de (Dec.17 2013 - Endlich wieder! Bärenspaß in Yukon Bay)
Hannover Zeitung (Dec.17 2013 - Eisbären erobern Meeresbucht in Yukon Bay)

(過去関連投稿)
ドイツ・ハノーファー動物園の新施設 Yukon Bay
ドイツ・ハノーファー動物園に仲良しトリオ出現 ~ ユーコンベイで3頭の同居開始
ドイツ・ハノーファー動物園の大きな成功
ドイツ・ハノーファー動物園のアルクトスとナヌークの双子兄弟に4歳のお誕生祝い ~ 将来への不安
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ドイツ ・ ハノーファー動物園とホッキョクグマ展示場「ユーコンベイ (Yukon Bay)」 が味わった苦味
ドイツ・ハノーファー動物園と個体交換交渉を行った札幌・円山動物園 ~ その背景を読み解く
札幌・円山動物園の新ツインズ(ノワールとブランシュ – 仮称)、そして他のララの子供たちの将来 (上)
札幌・円山動物園の新ツインズ(ノワールとブランシュ – 仮称)、そして他のララの子供たちの将来 (中)
by polarbearmaniac | 2013-12-19 01:00 | Polarbearology

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