街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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スコットランドのハイランド野生公園に実現した「個体の幸福」、実現しない「繁殖の可能性」

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ウォーカーとアルクトス Photo(C)Highland Wildlife Park

欧州の動物園では雌のパートナー獲得のあてもなく毎日ぶらぶらと優雅に暮らしている雄の若年個体が何頭かいるわけですが今回もそういったケースを振りかえってみましょう。 2009年にオープンしたイギリス北部スコットランドのキンクレイグ (Kincraig) にあるハイランド野生公園 (Highland Wildlife Park) は、エジンバラ動物園に長く暮らした名ホッキョクグマであるメルセデス(Mercedes/マーセディス) がオープンに合わせて移動し、そして2011年4月の彼女の死までの最晩年をここで過ごしました。 このメルセデスは白浜のアドベンチャーワールドに暮らすオホトの母であることは今まで何回も指摘してきたことです。 このメルセデスについては是非、「メルセデス(1980 – 2011)、その生涯の軌跡」 をご参照頂ければ幸いです。 私がどうしても会っておきたかったホッキョクグマの中の一頭でした。

さて、現在この施設では雄の2頭の若年個体である5歳になったばかりのウォーカーと6歳になったばかりのアルクトスです。 彼等のこのハイランド野生公園での暮らしぶりについては今まで何回か投稿を重ねていますので過去関連投稿をご参照下さい。 雄の2頭の同居というのはかなりその両者の相性が良くないと危険な場合が多いのですがのウォーカーとアルクトスに関しては非常にうまくいっているようです。飼育責任者であるダグラス・リチャードソン氏は一時期、このウォーカーとアルクトスのパートナー探しに熱心でいろいろな抱負を語っていましたが最近ではそういった発言も影を潜めているようで、この2頭の将来をどうするかについての展望も開けないままの状態のようです。 オランダ・レネンのヴィクトルの息子であるウォーカー、ウィーン生まれでオリンカお母さんの息子であるアルクトス、この組み合わせは昨日投稿したドイツのハノーファー動物園の雄の2頭と非常に良く似た立場であり、要するにEAZAのコーディネーターも彼らのパートナーとなるべき雌の幼年個体を確保することに手詰まり状態というわけです。
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ウォーカーとアルクトス Photo(C)Highland Wildlife Park

日本が仮にかつてのロシアのように飼育下のホッキョクグマの輸出国・配給国なのであればララの娘たちは欧州にとっては喉から手が出るほど欲しい若年・幼年個体であることには間違いありません。 しかし日本はまず国内でホッキョクグマの繁殖を続けて国内で個体数を維持していく必要があるため日本から欧州への一方的な個体移動などは絶対に有り得ないわけで、個体移動があるとすれば個体交換というものが前提となるわけですが、その前に立ちはだかっているのが「飼育基準」というものの存在であることはすでに御承知の通りです。

このスコットランドのハイランド野生公園というのは気候的に寒冷地にあり、飼育場は自然を生かした広大なものであるため飼育下のホッキョクグマが暮らすには絶好の環境であるわけですが「僻地」にあるために、いかんせんアクセスは良好ではありません。 そういった比較的静かな場所で伸び伸びと、そして暇を持て余すように暮らしている2頭の雄の若年個体はある意味では非常に恵まれているわけです。 これぞまさしく飼育下における「個体の幸福」が実現した場所であるわけですが、それと「引き換え(?)」に彼らが失っているには「繁殖の可能性」というわけです。

最近のウォーカーとアルクトスの様子をご紹介しておきます。





日本もこのハイランド野生公園やスカンジナヴィア野生動物公園やオルサ・ベアパークのような自然を生かしたホッキョクグマの飼育施設を作るとすれば私は北方領土の色丹島 (Остров Шикотан) が適しているように思います。 しかしそういう可能性が実現する以前に日本の動物園からホッキョクグマがいなくなる日のほうが早く訪れるでしょう。

(過去関連投稿)
南紀白浜アドベンチャーワールドのオホトのお母さんメルセデス(写真)は健在!
ホッキョクグマの健康管理 ~ スコットランドのメルセデス(南紀白浜AWSのミライの祖母)の体重測定
オランダのウォーカー、スコットランドへ! ~ 新しい繁殖基地への期待
スコットランド・ハイランド野生公園に到着したウォーカーがメルセデスと初顔合わせ
雪と寒波に御満悦な表情のホッキョクグマ ~ スコットランドのウォーカーとメルセデス
スコットランドのメルセデス、重い骨関節炎で病床に臥せる ~ 危惧される「安楽死」決定への可能性
スコットランドのメルセデス、とうとう安楽死が執行される!
メルセデス(1980 – 2011)、その生涯の軌跡
ドイツ・ハノーファー動物園のウィーン生まれの双子に別離の時来る ~ アルクトスがスコットランドへ
ドイツ・ハノーファー動物園のアルクトス、スコットランドに無事到着しウォーカーと初顔合わせ
スコットランドのハイランド野生公園、ウォーカーとアルクトスの親密な関係 ~ 雄2頭の同居成功
スコットランドのハイランド野生公園、ウォーカーとアルクトスの近況 ~ 雌の伴侶欠乏世代の個体たち
スコットランド・ハイランド野生公園のアルクトスが歯科治療を受ける
スコットランドのハイランド野生公園、ウォーカーとアルクトスのお誕生会 ~ 若年世代の雌不足に悩む欧州
スコットランドのハイランド野生公園におけるホッキョクグマ飼育場 ~ 「量」を軽視せぬ簡素な設計思想
by polarbearmaniac | 2013-12-20 12:00 | Polarbearology

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