街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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今年2013年の日本のホッキョクグマ界を振り返って ~ 漠然とした期待感の中で封印されてきたもの

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クルミ親子 (2013年5月1日撮影 於 男鹿水族館)

人間の用いる暦の区切りがホッキョクグマの一年の生活のサイクルとは一致していないため、現時点で今年一年を振り返るとなりますと書きにくいことがあります。 それは、産室に籠っている雌たちの出産の可能性の有無を確認できる前にこうして今年の総括をせねばならないからです。 しかし、降誕祭も過ぎてから何のニュースもない場合は、おおむね結果は悲観的だとみてよいでしょう。

さて、今年を振り返りますと、まず男鹿水族館のミルクと円山動物園のマルルとポロロの双子が順調に成育を遂げているということは嬉しい出来事です。 とはいうものの、9月に起きたマルルの転落事故はいくつかの教訓を与えてくれました。 私の考えは他の方とは少々違うと思いますが、それは「ホッキョクグマはバランス感覚に秀でている」というような根拠のない考え方が存在していたことに一番の問題があったように思います。そのような根拠のない考え方が背景にあったがために円山動物園は「世界の熊館」の右端の展示場に転落対策を施さなかったということでしょう。 「雌(メス)の双子は取っ組み合いをしない」 という考え方も今年見事に打破された考え方です。 やはり世界の過去の事例といったものを受け入れていきませんといけないように感じました。しかし、マルルが無事で本当に良かったと思います。
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ララ親子 (2013年12月22日撮影 於 円山動物園)

次に、やはり繁殖可能年齢の上限が迫った個体の繁殖への挑戦ということが大きな意義でした。 現時点では確定的なことは言えないにしても、結果は非常に厳しいものであろうという予想は簡単には覆らない状況です。 しかしこの ”Reproduction Resources” (「繁殖資源」という訳語はいささかホッキョクグマたちにとっては失礼ではありますが)の有効活用というものは絶対に不可欠で、とにかく諦めないで繁殖にトライさせるということの意義は大きいわけで、だめならだめでしょうがないわけですが、トライしてみないことにはその見極めは不可能なわけです。そうした、繁殖可能上限年齢に達したか、それとも達しようとしている雌の個体をさらに来年また同じ雄を相手に挑戦させるかどうかは微妙な問題でしょう。 少なくともそういった雌たちは今年、パートナーの雄と交尾までいったがために産室入りしているわけで、ではまたパートナーを変えてみるということはリスクが大きいでしょう。 しかし雌の個体の出張の再(々)延長は(つまりBL契約の再々延長)は送り出した園の都合もありますから簡単ではない場合もあるわけです。 こうした契約には更新条項、解除通知期間などが付されており、そういった条項を考慮に入れませんと意味がありません。 また、たとえ条項に具体的に落とし込まれていないとしても両園の暗黙の了解事項というものも存在するのが現実の日本の社会です。それらを総合して早く結論を出してほしいところです。 事態の進展を注視したいと思います。

常識的に考えれば来年の春はホッキョクグマの大移動の年になるはずです。 しかしミルクが釧路に移動するだけで、日本のホッキョクグマ界の個体移動はそのひとつだけであるということも可能性としてはあるでしょう。 つまり、札幌のララは双子の娘たちともう一年一緒に過ごし、釧路ではツヨシとミルクが同居し、そしてバフィンもバリーバもキャンディも現在の場所を動かず、そして上野のデアのパートナーも決まらないという場合です。 そうなるかもしれません。 そうなった場合、要するに諸々のことがあたかも一年先送りにされてしまったかのような状態を結果的には意味することになるでしょう。 欧州では今年、今まで発表されたたけでも、ジョヴァンナ(ミュンヘン)とフリーダ(タリン)という全く新しい母親たちが登場しました。 では来年、日本で現在の繁殖可能年齢上限付近の雌たちのうちでパートナーや環境の変更無しに新しく母親となる個体が果たして出現するかどうかを考えてみた場合、厳しい今年の現実よりももっとさらに厳しい現実が待っているでしょう。

今年一年を総括すれば、ミルク、マルル、ポロロの無事の成長を見守ってきたという事実はあるものの、実は私たちはバフィンやバリーバやキャンディや、そしてサツキやルルなどが繁殖に成功するだろうという漠然とした淡い期待だけで、その他のことを考えることを封印してきたのが今年一年だったということに尽きるでしょう。
by polarbearmaniac | 2013-12-26 01:00 | Polarbearology

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