街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

プロフィールを見る

トーニャの素顔、そしてその血統の謎に迫る ~ 北京に負けたベルリン

a0151913_550364.jpg
さて、このトーニャの血統について依然として解けない謎が存在しているのである。 
a0151913_5504791.jpg
それはヴァロージャがこのベルリン動物公園に来園して8月に一般公開された時にさかのぼる。実はこの件は非常にやっかいである。「超マニア向き」の話であり、格別興味のある方以外は読み飛ばしていただいて結構である。 しかし近年においてホッキョクグマに関する議論のうちでこの件ほど興味深い話題はなかったと言えるだろう。 この議論を御理解いただくためには以下の三つの投稿、すなわち、「ドイツ・ベルリン動物公園のトーニャのパートナーとしてモスクワから到着した『謎の幼年個体』の正体は?」、「ベルリン動物公園のトーニャと『謎の幼年個体』との間の繁殖は姉弟間の近親交配との大きな批判起きる」、及び「ベルリン動物公園の担当者、ドイツ国内の『近親交配批判』に反論 ~ “Errare humanum est...”」の内容を完全に御理解いただく必要がある。 問題はベルリン、モスクワ、北京の三つの動物園にまたがる壮大な話である。 単純化すれば、このベルリン動物公園のトーニャと北京動物園のムーシャ(美美)の本当の母親は誰なのかということに換言される。
a0151913_5505643.jpg
決して自慢して言うわけではないが、ベルリン、モスクワ、北京の三つの動物園でトーニャとムーシャ(美美)に実際に会い、そしてモスクワで彼女たちの母親であるシモーナとムルマに実際に会ったことのある人間は多分私だけだろうと考える。 そこで今回このベルリンで再びトーニャに会ってみて再度私の考えを述べておくのは無駄ではないと考える。
a0151913_551988.jpg
以前にもご紹介しているが2011年2月17日付のモスコフスキー・コムソモーレツ (Московский комсомолец) 紙の記事で、記者がモスクワ動物園から幼年個体を2頭、北京動物園に移送する作業を取材し、その雌の一頭についてどうやって母親からこの幼年個体を引き離すかについて詳しく述べているが、それは明らかに一人娘を母親から引き離す状況の描写であり、つまりこれは2009年に一頭の雌を産み、そして育てたムルマから娘を引き離すシーンを意味しており、その雌は北京動物園に送られたのである。それがムーシャ(美美)である。 この件については「モスクワ動物園の幼年個体、ペアとして中国・北京動物園へ」をご参照いただきたい。 そうなると消去法でこのベルリン動物公園のトーニャはシモーナの娘ということになるが、最新の血統登録台帳では以前の記載が訂正されており、トーニャはムルマの娘ということになっている。 となれば、北京動物園のムーシャ(美美)は実はシモーナの娘であることを意味していることとなる。
a0151913_5512386.jpg
結論から申し上げれば、今日ベルリン動物公園で再会したトーニャを長時間観察した印象では、トーニャの母親はシモーナである可能性が極めて濃厚であると感じた。 だから、「ベルリン動物公園の担当者、ドイツ国内の『近親交配批判』に反論 ~ “Errare humanum est...”」 という投稿の冒頭に掲げた二枚の写真は母娘の写真であるという考え方と結論的に合致するのである。 このことはつまり、血統登録情報の最近の訂正は意図的なものであることを意味することとなる。
a0151913_55132100.jpg
そもそも北京動物園がモスクワ動物園の幼年個体を繁殖のためのペアとして入手しようとモスクワ動物園と折衝を開始したのは2010年であり、そして実際にペアとして入手したのは2011年2月である。 この時には当然、血統面を考慮してウスラーダの息子のサイモンとムルマの娘のムーシャを入手したわけである。 ところが2011年の3月にベルリン動物園でクヌートが亡くなり、そのクヌートのパートナーとしてモスクワからロストフを経由してベルリンにやってきたトーニャはパートナーがいなくなってしまったわけである。 ベルリン動物園は故クヌートについては、血統面としては彼のパートナーはシモーナの娘だろうがムルマの娘だろうが、どちらでもよかったわけである。
a0151913_5514262.jpg
ところが今度はトーニャのパートナーなるべきクヌートが亡くなったためにベルリン動物園は今度は雄を求めてまたモスクワと交渉したのである。 その結果ベルリンにやってきたのがシモーナの産んだ三つ子の一頭であるヴァロージャである。ベルリンがモスクワに幼年個体の入手を交渉して入手したのはトーニャとヴァロージャの2頭であるが、これはそれぞれ別個の交渉による入手であり、最初からペアとして2頭同時の入手を図った北京とはまるで状況が異なるわけである。 北京は最初から血統面で近親交配を回避した組み合わせとなるようにペアとして入手したのである。 ところがベルリンはそうではない。 2つのバラバラな交渉で2頭をモスクワから入手したのである。 だから条件は全く異なるのである。 辻褄を合わせるためには書類上の訂正で処理されたのだろう。

展示場を歩き回るトーニャ


この下の3枚の写真は私が今年の10月にモスクワ動物園で撮影したシモーナの写真である。 じっくりとご覧いただきたい。
a0151913_6303195.jpg
a0151913_6304430.jpg
a0151913_6305875.jpg
以上3枚がシモーナ (2013年10月4日撮影 於 モスクワ動物園)

次に、この上のシモーナの写真を下の今日ベルリン動物公園で撮影した3枚のトーニャの写真と比較していただきたい。
a0151913_5521331.jpg
a0151913_5522379.jpg
a0151913_5523243.jpg
シモーナとトーニャは実に良く似ていることがお分かりいただけるであろう。 そして私の以前の投稿である「ベルリン動物公園の担当者、ドイツ国内の『近親交配批判』に反論 ~ “Errare humanum est...”」の冒頭の2枚の写真をじっくりとご覧いただきたい。 これも実に良く似ている。 つまりこれらは、ベルリンのトーニャの母親はシモーナであり、北京のムーシャ(美美)の母親はムルマであることを強く示している。 つまり全く矛盾がないのである。
a0151913_552252.jpg
今回の件は北京の勝ちでありベルリンの負けである。
a0151913_5515241.jpg
このトーニャ(手前)とヴァロージャ(奥)は姉弟である。
a0151913_6534166.jpg
a0151913_6594662.jpg
どんよりした天気の日曜日である。

Nikon D5300
AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR
(Dec.29 2013 @ベルリン動物公園)
by polarbearmaniac | 2013-12-30 07:50 | 異国旅日記

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
エッセイ、コラム
街角にて
未分類

最新の記事

*新規投稿お知らせ
at 2017-08-19 23:45
ロシア・ヴォルガ川流域のペン..
at 2017-08-19 02:00
ロシア・西シベリア、ボリシェ..
at 2017-08-18 02:00
ロシアのクラスノヤルスク環境..
at 2017-08-17 01:30
チェコ・プラハ動物園のホッキ..
at 2017-08-16 01:30
ロシア・サンクトペテルブルク..
at 2017-08-15 01:30
ロシア・ウラル地方、エカテリ..
at 2017-08-14 01:30
大阪・天王寺動物園のシルカ ..
at 2017-08-13 01:30
フィンランド・ラヌア動物園で..
at 2017-08-12 22:30
カナダ・ウィニペグ、アシニボ..
at 2017-08-11 23:30

以前の記事

2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ライフログ


人生と運命 1


スターリン―青春と革命の時代


モスクワは本のゆりかご


私のモスクワ、心の記憶


自壊する帝国 (新潮文庫)


甦るロシア帝国 (文春文庫)


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


ロシア 春のソナタ、秋のワルツ-1999-21st


それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影


ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫)


わがユダヤ・ドイツ・ポーランド―マルセル・ライヒ=ラニツキ自伝


ベルリン戦争 (朝日選書)


Hof――ベルリンの記憶


カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺


北京烈烈―文化大革命とは何であったか (講談社学術文庫)


慟哭の通州――昭和十二年夏の虐殺事件


主題と変奏―ブルーノ・ワルター回想録 (1965年)


藤田嗣治 異邦人の生涯


Barle's Story: One Polar Bear's Amazing Recovery from Life As a Circus Act


Hotel Adlon: Das Berliner Hotel, in dem die grosse Welt zu Gast war


Ein seltsamer Mann


Alma Rose: Vienna to Auschwitz


St Petersburg: A Cultural History


Gulag


The Guest from the Future: Anna Akhmatova and Isaiah Berlin