街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、「本命」の2年続きの失望結果

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エサクバク Photo(C)Le Quotidien

大いに出産を期待されていたカナダ・ケペック州のサンフェリシアン原生動物園 (Zoo sauvage de Saint-Félicien) の11歳の雌のエサクバク (Aisaqvak/Aisaqvaq /Aisakvak) ですが、すでに産室を出たようで突如として同園のSNSのページに動画として登場しています。 それは1月11日に行われた「ホッキョクグマの祝日 (Fête des ours blancs) というイベントですが、もともとこれは彼女の現在のパートナーである雄のイレ (Yellé) の一月半遅れの誕生会のような性格のイベントだったわけです。 そこに登場したエサクバクの姿をご覧いただきましょう。



しかしそれにしてもエサクバクは2年続けて出産が無いとは実に意外です。 彼女に前回に出産が無かった件については「カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、展示場に復帰 ~ 本命の意外な失望結果」をご参照いただきたいのですが、「本命」であるはずのエサクバクに2年続けて出産が無いということは、やはり以前の彼女のパートナーだったイヌクシュクと比較して現在のイレの繁殖能力というものに疑問符が付く可能性があると考えてよいように思います。 同園の担当獣医さんによればエサクバクの秋口からの状態は2009年に双子を出産した時と非常に酷似していたそうで、同園としても早めにエサクバクを隔離するなど相当に神経を使っていたそうです。

2009年にはイヌクシュクをパートナーとしてタイガとガヌークの双子を出産したエサクバクですが、パートナーがイレに変わった以降は出産がありません。 イヌクシュクの繁殖能力というのは素晴らしく、現在彼はコクレーンのホッキョクグマ保護教育文化村で飼育されており、繁殖シーズンになるとトロント動物園に出張してオーロラとの間で繁殖行為を行い、そして再びコクレーンに戻るという往復生活を送っています。 この結果トロント動物園でオーロラは3回出産しており、いずれも三つ子の出産だったわけですが結局誕生した9頭のうち成育したのは人工哺育された2011年生まれのハドソンと今回の2013年のレミーの2頭だけではあるものの、イヌクシュクの繁殖能力は折り紙つきだと言ってよいでしょう。 そういったイヌクシュクからエサクバクのパートナーがイレになったわけですが、2年続きの出産無しはやはり意外ではあります。 ここで今回のイベントでのイレの様子をご紹介しておきます。



封建的家族制度を背景としていたかつての日本では夫婦で子供ができない場合に一方的に女性に責任があると見られたわけですが、実は広範にその責任が男性にある場合は非常に多いわけで、ホッキョクグマの例を人間の例と比較するのは大変に不謹慎ですが、このエサクバクの場合のようにパートナーを変更した場合に雄(男性)の繁殖(生殖)能力の差が歴然と表面に出てくることは不思議ではないわけです。 同じ封建的家族制度下でも朝鮮の場合は日本と違って女性が非難されることはなかったようです。 何故ならば20世紀初頭まで続いた李氏朝鮮の風習では、娘を嫁に出すときに父親、もしくは下男が一度その娘を妊娠させて腹を大きくして嫁に出すということが行われたそうで、要するにこの娘には繁殖(生殖)能力があることを証拠で示して嫁に出すということですね。 その娘は嫁ぎ先でまずお腹の子を出産し、生まれた子供は先方の家の下男となり、その次の段階で今度は嫁ぎ先で夫と子供ができない場合は全て夫に責任があるということになるわけです。 これは大変に女性を蔑視した風習ではあるものの、朝鮮の人々にとっては封建的家族制度を維持するためには単純明快でスッキリとしたやり方なのかもしれません。 そういった意味では、 いかにも朝鮮らしい風習であるとは言えましょう。 ちなみにこの朝鮮の風習は1910年の日韓併合後に日本の朝鮮総督府によって直ちに廃止されたそうですが、その理由は戸籍制度の混乱を避けるということだったようです。 エサクバクはイヌクシュクとの間での繁殖に成功しているわけですから、次のパートナーのイレとの間で繁殖に成功しなくても責任はイレにあるということと同じです。

(資料)
Zoo sauvage de Saint-Félicien (Jan.8 2014 - Fête des ours blancs 11 janvier)
L'Étoile du Lac (Jan.11 2014 - Le Zoo de Saint-Félicien revet son décor hivernal)
Le Quotidien (Nov.21 2013 - Des oursons dans le bedon d'Aisaqvaq ?)

(過去関連投稿)
カナダでの飼育下期待の星、イヌクシュクの物語
カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、展示場に復帰 ~ 本命の意外な失望結果
カナダ・ケベック州 サンフェリシアン原生動物園のエサクバクとイレのペアへの大きな期待
カナダ・ケペック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、早々と出産準備のための別区画に移る
「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(10) ~ 出産に備えた雌の「隔離」とは?
カナダ・ケペック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバクの産室内の姿が公開 ~ スタッフの余裕
カナダ・サンフェリシアン原生動物園の産室内のエサクバク ~ ” Bonne nuit belle Aisaqvak !”
by polarbearmaniac | 2014-01-15 01:00 | Polarbearology

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