街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ドイツにおける「動物園と政治」の対立 ~ ブレーマーハーフェン臨海動物園の赤ちゃん公開について意見対立

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ブレーマーハーフェン臨界動物園のヴァレスカお母さんと赤ちゃん 
Photo(C)Zoo am Meer Bremerhaven
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ミュンヘン・ヘラブルン動物園の双子の赤ちゃん 
Photo(C)Tierpark Hellabrunn

さて、数日前に「ドイツ・ブレーマーハーフェン臨海動物園の赤ちゃんへの思惑 ~ 赤ちゃんの集客力への評価は可能か?」という投稿で、同じドイツのブレーマーハーフェン臨海動物園のキュック園長が同園における赤ちゃんについては大々的にその存在をアピールして集客につなげるということには消極的であることをご紹介しています。 一方でこのミュンヘンのヘラブルン動物園は頻繁に産室内の動画を公開しメディアに対してこの双子の赤ちゃんの存在とその成長をまさに「これでもか」と言わんばかりにアピールしているようで、ドイツ国外のマスコミも映像を交えてこのヘラブルン動物園の赤ちゃんの存在を報道しています。 日本のマスコミもその例外ではありません。 ブレーマーハーフェンのキュック園長はこういったミュンヘンのやり方に対して批判的なのでしょう。 ミュンヘンのヘラブルン動物園では赤ちゃんの戸外登場と一般公開を3月に設定しているのに対してブレーマーハーフェン臨海動物園ではなんと5月までは公開しない方針だそうで、これに対してブレーマーハーフェン市の収入役 (Stadtkämmerer) であるタイザー氏はかなり怒っているようです。 ホッキョクグマの赤ちゃん公開によって動物園の入園者数を伸ばし、そして入場料収入の増加を見込んでいるタイザー氏にとっては、赤ちゃん公開が遅くなることはもっての外ということのようです。 タイザー氏はおそらくミュンヘンの双子の赤ちゃんに対する報道量の大きさを見て、なにか焦りを感じているのではないでしょうか。 ブレーマーハーフェンの赤ちゃんは12月16日生まれで、一方のミュンへンの赤ちゃんは12月9日生まれということで、誕生日が一週間しか違いません。 にもかかわらず一般公開に二か月の差が生じるということに納得できないのでしょう。 キュック園長は赤ちゃんに対するブーム的な関心の高まりは赤ちゃんとってよいことではないと考えているようです。 しかしすでにここには「政治と動物園」という問題が入り込んできているわけです。 ブレーマーハーフェン市のグランツ市長は ドイツ社会民主党 (SPD) に属しており、収入役のタイザー氏はドイツキリスト教民主同盟 (CDU) に属しています。 グランツ市長はタイザー収入役とキュック園長とのホッキョクグマの赤ちゃん公開に対する意見の対立に対して、幾分キュック園長の言い分を認めた形で円満な解決を望んでいるのに対してタイザー収入役は市の観光協会の意向をバックにしてキュック園長と対立しているという図式です。 こうしたホッキョクグマの赤ちゃんの公開についてさえも党派性が持ち込まれ政治問題として扱われ議論されるというのはドイツらしい話です。 この件についてのニュース映像をご紹介しておきます。 ドイツ語の理解の問題は別にして音声はon にして下さい。





そういえば日本でも一昨年は円山動物園のマルルとポロロの誕生は12月8日一般公開開始は翌年の3月22日でしたが、男鹿水族館のミルクは誕生は一昨年の12月4日だったにもかかわらず一般公開開始は5月1日と非常に遅かったわけでした。 その理由は今回のドイツのミュンヘンとブレーマーハーフェンの両園の考え方の違いとはまた別な理由によるものだったはずです。 円山動物園のほうが「戸外登場」と「一般公開開始」をリンクさせるという考え方が背景にあるわけで、これについては海外の動物園での事例も含めて「オランダ・ヌエネンの『動物帝国』で誕生の双子の赤ちゃんのピセルとノルチェ、早々と戸外に初登場!」という投稿にまとめていますのでそれを是非ご参照下さい。 マルルとポロロの戸外初登場は生後103日目の3月21日、そして一般公開開始は翌日の3月22日(生後104日目)だったわけです。 男鹿水族館の場合はミルクがまだ水に親しんでいないという理由で公開を遅くしたはずだと記憶しています。 とはいうものの私はやはり男鹿水族館のミルクの一般公開開始はやや遅すぎたような印象を持っています。 しかし日本ではホッキョクグマの赤ちゃん公開について「政治」が入り込んでくるという可能性はあまりないでしょう。 仮にあったとしても、「動物園と政治」という対立図式は成立しないでしょう。 

ドイツでは諸々のことについて意見の対立がある場合に研ぎ澄まされた形で表面化し、そしてなんでも突き詰めた形での議論の対象になる傾向が強いですが、そこに党派性、つまりCDUとSPDの立場の違いといったものが入り込んできた場合に尖鋭化するという形をとることがあり、このブレーマーハーフェンの例もそういったドイツ社会の姿というものの片鱗を見せつけられたような気持になります。 しかし私は、この下のような映像を見ていますと、キュック園長の言うようにこの赤ちゃんについては騒がずに静かにして成長を見守ってやってほしいという気持ちはよく理解できます。



これからもホッキョクグマの赤ちゃんに対する飼育展示についてミュンヘンとブレーマーハーフェンの両園の考え方の違いが出てくることが予想されますので、これは興味深いことになりそうです。

日本人にはよく、「ドイツには親しみが持てる」 と、いとも簡単に言う人がいますが、実はドイツは日本にとっては「非常に遠い国」です。 私も学生の頃にはドイツに親近感のようなものを持っていましたが、後年になってドイツとの付き合いが深くなればなるほど、いかにドイツが日本から遠い国であることを思い知らされたわけです。 私の個人的な感じではドイツは「フランスよりももっと遠い国」だと思います。 私は年をとればとるほど、フランスとロシアのほうが私に接近してきた感じを持っています。 欧州の国のなかで遠そうで意外に遠くないのはスペインとオランダかもしれません。 ちょっと余談になってしまいました。

(資料)
Radio Bremen (Jan.13 2014 - Eisbären-Vermarktung : Oberbürgermeister bittet Kämmerer um Mäßigung) (Jan.15 2014 - Nachwuchs in Bremerhaven : Das Problem der Eisbären-Vermarktung)

(過去関連投稿)
ドイツ・ブレーマーハーフェン臨海動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生!
ドイツ・ブレーマーハーフェン臨海動物園で誕生の赤ちゃん、順調に生後2週間が経過
ドイツ・ブレーマーハーフェン臨海動物園の赤ちゃんへの思惑 ~ 赤ちゃんの集客力への評価は可能か?
ドイツ・ブレーマーハーフェン臨海動物園の赤ちゃん、無事に生後一か月へ
by polarbearmaniac | 2014-01-18 02:30 | Polarbearology

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