街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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チェコ・ブルノ動物園の双子の雄のナヌクがウクライナ・ムィコラーイウ動物園へ移動か?

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ナヌク Photo(C)Getty Images

スラヴ文化圏独特の感性と思考は実に興味深いものがあります。 ロシア人にとって「憶えている」 という言葉は「愛している」という言葉と同義語であるのだと言う人がいます。 それはなんとなく理解できるような気がします。 こういった言い方にはロシア人独特の言語濾過装置を通した極めて独特な言語感覚を背景としているように感じます。

先日、「チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシア・ロストフ動物園へ ~ ブルノ、モスクワ、ロストフの巧妙な三角関係」という投稿でチェコ・ブルノ動物園で一昨年2012年11月24日にコーラお母さんから誕生した双子のコメタとナヌクのうち雌のコメタがロシアのロストフ動物園に移動する予定であることを投稿しています。 その投稿でも触れましたが、このブルノ動物園生まれの双子のうちのもう一頭の雄のナヌクの移動予定先について私はいろいろと探っていましたが、ウクライナ南部の都市であるムィコラーイウ (Миколаїв、ロシア語では「ニコラーエフ - Николаев」) の地元マスコミの報じる記事の中にこれに関する情報を見出しました。 このムィコラーイウ動物園というのは以前に「モスクワ動物園のシモーナお母さんの三つ子の一頭の雌がウクライナ・ムィコラーイウ動物園に移動へ」という投稿でもご紹介していますが、今回のムィコラーイウの地元報道によれば三つ子の一頭のこの雌のホッキョクグマは今年2014年に同園に移動することは決定しており、この雌の幼年個体とのペアを形成する雄としてブルノ動物園の雄の幼年個体(つまりナヌク)をそれに充てようという青写真がすでに出来上がっているそうです。
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さて、実はこれについては私も先日の投稿でその可能性に触れていたわけですが、実はこのモスクワ動物園生まれの三つ子の一頭とブルノ動物園生まれのナヌクは従姉弟にあたりますので通常は繁殖上のパートナーとはしないはずです。 そこで再びモスクワ動物園主導の新たなもう一つの個体移動のスキームが発動される可能性が大きいと予想します。 これは三つの動物園とさらにもう一頭の幼年・若年個体からなるホッキョクグマ以外の種をも含む複数の個体移動となるはずですが、そうなると事前の予想は極めて困難だと言えましょう。 しかし敢えて思い切って以下のように予想してみることにします。

私はこのムィコラーイウ動物園にやってくる雄の個体はブルノ動物園のナヌクではなく最終的には別の雄の個体になるだろうと考えます。 具体的にどの個体になるかと言えば、やはりノヴォシビルスク動物園に預けられているムルマの息子しかいないはずです。 しかしこのムルマの息子はブルノ動物園からロストフ動物園に移動予定の雌のコメタのパートナーとしても最有力候補であるわけで、そうなるとこの問題をどう解決するかが課題です。しかしこうした問題点があるにもかかわらずこうした計画が進行しているとすれば、それは外部には容易に知り得ない別の個体の存在を想定するか、あるいはこれから誕生する個体について前もって約束手形を切ったかのいずれかです。

昨年11月24日にエストニアのタリン動物園で誕生した赤ちゃんですが、この父親のノルドは実はモスクワ動物園からタリン動物園に移動した個体であり、現在彼の権利がモスクワにあるのかタリンにあるのかは不明であるものの、ここでこの赤ちゃんの存在を考えに入れないとモスクワ動物園が関与している幼年個体を他には想定できません。今までの事例を考えればモスクワ動物園というのは欧州や日本に個体を売却するようなケースは別として旧ソ連地域に個体を自園から移動させるようなケースには容易に所有権を手放さないという強い傾向があります。 それは、モスクワ動物園が旧ソ連地域におけるホッキョクグマ繁殖についての主導的立場を維持しようと言う姿勢の表れだといってよいでしょう。 となればタリン動物園のノルドの権利も依然としてモスクワ動物園が保持していると考えるのが自然であり、そうなると、このタリン動物園の赤ちゃんの権利は通常はモスクワ動物園にあることになりますから、仮にタリン動物園の赤ちゃんが雄ならばその個体をムィコラーイウに移動させようということではないでしょうか。 このタリン動物園の赤ちゃんとシモーナお母さんう産んだ三つ子とは非常に遠い血の繋がりはあるものの、それは問題ないレベルのことであるとモスクワ動物園は考えるだろうと思われます。 モスクワ動物園とムィコラーイウ動物園との間の合意では個体の所有権は全てモスクワ動物園が保持することがすでに明らかにされていますので、そのことからもこの件はうまく説明できるように思われます。

事態の推移を注目して見守りたいと思います。 良くわからないことの多いスラヴ文化圏でのホッキョクグマ事情です。

(資料)
Вечерний Николаев (Jan.17 2014 - Николаевский зоопарк: итоги года)
The Huffington Post (Jul.25 2013 - Nanuk The Polar Bear Really Loves His Traffic Cone Toy)

(過去関連投稿)
(*以下、コメタとナヌク関係)
チェコ・ブルノ動物園がコーラの出産に園の浮沈をかける ~ 食害の瞬間を映した貴重な映像記録の公開
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チェコ ・ ブルノ動物園で誕生の双子、コメタとナヌクが順調に生後8か月が経過
チェコ・ブルノ動物園のコメタとナヌクの人気で入園者数は好調 ~ 双子は1頭の場合より常に魅力的か?
チェコ・ブルノ動物園のコメタとナヌクの性別の異なる双子の性格と行動を探る
チェコ・ブルノ動物園のコメタとナヌクの双子の淡々として着実な成長 ~ 雌雄の双子に生じた体格差
チェコ・ブルノ動物園のコメタとナヌクの双子の一歳の誕生会が開催される ~ 注目すべき来春の移動先

(*以下、移動・権利関係)
モスクワ動物園がカザン市動物園に1頭のホッキョクグマを贈与 ~ 帰属意識と権利関係の狭間で
モスクワ動物園のシモーナお母さんの三つ子の一頭の雌がウクライナ・ムィコラーイウ動物園に移動へ
ロシア南部・ロストフ動物園とウクライナ・キエフ動物園との間の紛争 ~ 「ホッキョクグマ詐欺」事件の概要
チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシア・ロストフ動物園へ ~ ブルノ、モスクワ、ロストフの巧妙な三角関係
by polarbearmaniac | 2014-01-20 23:45 | Polarbearology

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