街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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チェコ・ブルノ動物園のコメタのロシア・ロストフ動物園への移動が大幅に延期 ~ 複雑な背景を読み解く

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コーラお母さんとコメタとナヌクの双子 Photo(C)Zoo Brno

さて、これもなかなかその本当の理由を推し量ることが非常に難解なニュースがチェコから流れてきています。 やはり「マニア向き」の話のようです。 それは、チェコ・ブルノ動物園で一昨年11月24日にコーラお母さんから誕生した双子の雌のコメタですが、近く予定されていたブルノ動物園からロシア・ロストフ動物園への移動が、夏の終わりまで延期となったというブルノ動物園からの発表と、そしてマスコミの報道です。

雌のコメタについては先日、「チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシア・ロストフ動物園へ ~ ブルノ、モスクワ、ロストフの巧妙な三角関係」 という投稿で彼女が「冬の終わり頃 (*追記 - 2月末だったそうです)」 にロシアのロストフ動物園に移動する予定であることを御紹介しています。 ところが今回のブルノ動物園の発表では、コメタのロストフ動物園への移動は夏の終わりまで延期となるため、コーラお母さんと双子はまだ一緒に暮らすことが可能となったと報じられています。 実は双子のもう一頭の雄のナヌクについては、すでにウクライナからの報道で彼がウクライナのムィコラーイウ動物園へ移動してモスクワ動物園生まれの三つ子の一頭である雌のパートナーとなる計画が存在していることを「チェコ・ブルノ動物園の双子の雄のナヌクがウクライナ・ムィコラーイウ動物園へ移動か?」 という投稿でご紹介していました。 そしてこの計画は従姉弟のペアとなるために実際にムィコラーイウ動物園にやってくる雄の個体はブルノ動物園のナヌクではなく最終的には別の雄の個体になるだろうという私の予想についてもその投稿で述べています。 
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コメタとナヌク Photo(C)Zoo Brno

さて、雌のコメタのロストフ動物園行が半年以上も延期になった理由ですが、ブルノ動物園は表向きにはこれが移送に関する管理上、及び作業上の理由であると極めてあいまいな表現をしていますが、私の見たところこれはロシア側、つまり今回の移動のスキームを構築・管理しているであろうモスクワ動物園からストップがかかったためだろうと思います。 何故モスクワ動物園がコメタのロストフ動物園行きに待ったをかけたかの理由ですが、これはおそらくロストフ動物園とウクライナのキエフ動物園との間の紛争(ロシア南部・ロストフ動物園とウクライナ・キエフ動物園との間の紛争 ~ 「ホッキョクグマ詐欺」事件の概要)においてロストフ動物園がモスクワ動物園から購入するホッキョクグマの代金についてはキエフ動物園が支払わねばならない立場に立たされたものの、キエフ動物園はその代金の支払いが資金上の理由でできない状態に陥っているのだと考えるのが有力な見方であろうと私は思っています。 これによってモスクワ動物園はブルノ動物園に対して雌のコメタのロストフ動物園への移送にストップをかけたというのが真相であるとみて間違いないように思われます。
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コメタとナヌク Photo(C)Zoo Brno

さて、こうなると雌のコメタのロストフ動物園への移動は今年の夏の終わり頃どころか、ひょっとしたら来年の初頭にまで延びる可能性すら出てくるかもしれません。 「ホッキョクグマ詐欺事件」で被害者だったはずのロストフ動物園ですが、モスクワ動物園を味方に付け、そのモスクワ動物園が「ホッキョクグマ詐欺事件」で加害者であるキエフ動物園を「締め上げている」というのが現在の構図のように思われます。 キエフ動物園はもともと資金的には非常に苦しい動物園ですから、モスクワ動物園にホッキョクグマの代金を直ちに支払うことなどできるはずはなく、この状態が長期化すればナヌクはさらにブルノ動物園のコーラお母さんのもとに留まるでしょう。 コーラお母さんが3年サイクルの繁殖に挑戦するのは来シーズンですから、来年の2月頃までにはどうしてもコメタとナヌクをブルノ動物園から移動させる必要があるわけで、そこまでにキエフ動物園がモスクワ動物園に代金の支払いができるかどうかはブルノ動物園にとっても大問題です。 それができませんと2015年のコーラお母さんの繁殖挑戦が不可能となるからです。 モスクワ動物園、そしてロストフ動物園はキエフ動物園をより一層「締め上げる」という状況がしばらく続くでしょう。

本当にスラヴ文化圏の複雑な社会背景を読み解いていかねばならないわけで、こうした文化圏での動物園間の暗闘というのは我々にとっては馴染みのないものであるわけです。 こうしたスラヴ文化圏の動物園間での動物と金のやり取りを見ていると、金銭プラス他種の複数個体を組み合わせて他園間での複雑な個体のやり取りを行うケースについて、どうもそれらは貨幣経済以前の物々交換の感覚が色濃く反映していることが垣間見えてくることに気づかされるわけです。 もっと異なった表現をすれば、それはむしろ「バザール経済」に貨幣経済が乗っかっているような印象すら受けることがあるということです。 これがいわゆる「西欧」の感覚とは大きく一線を画している現在のスラヴ文化圏の社会の特質であるように考えています。

(資料)
Zoo Brno (Jan.30 2014 - KOMETA A NANUK ZŮSTÁVAJÍ V BRNĚ DO KONCE LÉTA)
Centrum News (Jan.30 2014 - Lední medvíďata Kometa a Nanuk zůstávají v Brně do konce léta)

(過去関連投稿)
(*以下、コメタとナヌク関係)
チェコ・ブルノ動物園がコーラの出産に園の浮沈をかける ~ 食害の瞬間を映した貴重な映像記録の公開
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チェコ・ブルノ動物園で誕生の双子の赤ちゃん、順調に生後7週間目に突入
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チェコ・ブルノ動物園で誕生した双子の赤ちゃん、生後三カ月が経過  ~ 前回5年前の映像を振り返る
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チェコ・ブルノ動物園の双子の赤ちゃんの性別判明 ~ 雄(オス)と雌(メス)!
チェコ・ブルノ動物園の双子の赤ちゃんが地元で大人気 ~ 週末は入園者が長蛇の列となる
チェコ・ブルノ動物園の双子の赤ちゃんの名前が決定 ~ 「コメタ」 と 「ナヌク」
チェコ・ブルノ動物園の双子の赤ちゃん、コメタとナヌクの命名式が盛大に行われる
チェコ・ブルノ動物園の双子の赤ちゃんの一頭のナヌクが消化不良で一時体調を崩す
チェコ・ブルノ動物園の双子の赤ちゃんのナヌクが右前脚を負傷 ~ ブルノ動物園の抱く思惑への憶測
チェコ ・ ブルノ動物園の双子の赤ちゃんコメタとナヌクは順調に間もなく生後7か月が経過へ
チェコ ・ ブルノ動物園で誕生の双子、コメタとナヌクが順調に生後8か月が経過
チェコ・ブルノ動物園のコメタとナヌクの人気で入園者数は好調 ~ 双子は1頭の場合より常に魅力的か?
チェコ・ブルノ動物園のコメタとナヌクの性別の異なる双子の性格と行動を探る
チェコ・ブルノ動物園のコメタとナヌクの双子の淡々として着実な成長 ~ 雌雄の双子に生じた体格差
チェコ・ブルノ動物園のコメタとナヌクの双子の一歳の誕生会が開催される ~ 注目すべき来春の移動先

(*以下、移動・権利関係)
モスクワ動物園がカザン市動物園に1頭のホッキョクグマを贈与 ~ 帰属意識と権利関係の狭間で
モスクワ動物園のシモーナお母さんの三つ子の一頭の雌がウクライナ・ムィコラーイウ動物園に移動へ
ロシア南部・ロストフ動物園とウクライナ・キエフ動物園との間の紛争 ~ 「ホッキョクグマ詐欺」事件の概要
チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシア・ロストフ動物園へ ~ ブルノ、モスクワ、ロストフの巧妙な三角関係
チェコ・ブルノ動物園の双子の雄のナヌクがウクライナ・ムィコラーイウ動物園へ移動か?
by polarbearmaniac | 2014-01-31 06:00 | Polarbearology

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