街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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中国・黒龍江省の哈爾濱 (ハルビン) 極地館、雄の飼育個体の血統を偽ってまで行うパートナーの雌探し

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ベーリングとマリーギン Photo(C)凤凰网

ロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園で2002年11月にウスラーダお母さんから誕生した雄の三つ子 (セードフ司令官、ベーリング、マリーギン)のうちベーリング、マリーギンの行方が不明だったものの、中国国内でのホッキョクグマの個体移動情報と複数の過去の報道の事実をチェックして裏付けのとれた結果として、このベーリング、マリーギンが黒龍江省、哈爾濱 (ハルビン)の 極地館で一緒に飼育されていることが判明した点については過去の投稿である「中国・黒龍江省、哈爾濱 (ハルビン) 極地館で暮らすベーリングとマリーギン ~ ついに所在が判明する」をご参照下さい。

さて、この兄弟について非常に興味深い報道が中国からなされています。 それは、雌のパートナーのいないこの二頭の雄のパートナー探しについて哈爾濱極地館は、中国国内には雌の個体がほとんどいないためにそれを入手するために国外の動物園や国際的な野生動物保護団体と協定を締結しようと計画しているという報道です。 さらに報道では、この二頭は野生出身個体で2006年にロシアから輸入され、血統的には兄弟ではないとも報じでいます。

さて、今回の中国からの報道の内容が事実に反することは明白だと言えましょう。 つまり、2006年の段階ではすでにロシアは自国内で保護された野生個体を国外に出すということは禁止していたからです。 それは2000年以降からは明白な事実なのです。 この点については「鼻薬」は勿論のこと、「袖の下」 すら、よほどの筋からのものでないと効き目はないということです。 野生個体はロシア連邦政府の自然管理局 (RPN - Федеральная служба по надзору в сфере природопользования) が完全に管理していて、ロシア国内のどの動物園で飼育するかも事細かく全て取り仕切っているのです。 そういう事実があるにもかかわらず哈爾濱極地館はこの二頭の兄弟は野生出身であるのだと事実とは異なる主張をしてまで雌のパートナーを獲得しようと必死だというわけです。 大きな血族グループに属するウスラーダの息子としてではなく、野生出身であると主張すれは雌のパートナーははるかに得やすいだろうという狙いからでしょう。 それに加えてそもそも、この二頭が2006年にロシアから来たなどということ自体もおかしいわけです。 何故なら2006年より前の中国国内の報道にこの二頭はすでに登場しているからです。 こうした報道の内容は一般の動物園関係者は騙せてもホッキョクグママニアは騙せないといったところでしょうか。
(*追記 - つまり中国側の「落としどころ」は、この2頭の雄のうちの一頭を雌と交換したいということでしょう。 雄とはいっても「野生出身」という貴重なセールスポイントがあるので飼育下の雌との交換は可能だと考えていると思われます。 「野生出身」などと事実ではない血統を自称する理由はそこでしょう。 さらに推察してみますと、これはデンマークのオールボー動物園に対する呼びかけのような気がします。 この2頭のうちの一頭を雌と判明したミラクと交換したいということです。 オールボー動物園にすればこの11歳になる雄が入手できれば同園で飼育されているヴィクトリアとメーリクという2頭の雌のパートナーとして年齢的にも適しているからです。 そういうことを知っていて中国側はこういう事実に反する「野生出身」という血統を主張しているように思います。)

もともと中国の施設は自らが飼育しているホッキョクグマの血統について事実とは反することを平然とマスコミに流すのは日常茶飯事であることは過去のいくつもの例で明らかにされています。 有名な例では中国の某施設が飼育している個体がフィンランド生まれのホッキョクグマだなどとその施設は主張したものの、フィンランドが初めて飼育下でホッキョクグマの繁殖に成功したのはラヌア動物園で2011年11月に誕生したランツォが初めてであり、それ以前にフィンランドで誕生した個体などいないにもかかわらず、それよりも遥かに早い時期に「フィンランドからの友好の印として中国に贈答された」 などと事実とは反する情報を流し、フィンランドの報道機関にその虚偽性を暴露されてしまった件は有名です。

ホッキョクグマが一度中国に入ってしまうとその後の情報を追跡するのは容易ではありません。温度管理は十分になされているにせよ室内の飼育展示場でパートナーもいないまま一生を終えるといった運命のホッキョクグマは何頭も存在しているわけです。 それにしてもこのベーリングとマリーギンは本当に可哀想なホッキョクグマです。 しかし自らの施設て飼育している彼らの血統を偽ってまでパートナーを入手したいと考える哈爾濱極地館は、まだ良心的なのだという解釈も可能かもしれません。

ここでごく最近の哈爾濱極地館でのベーリングとマリーギンの映像をご紹介しておきます。



私はこの種の閉鎖的空間の展示場を見ると、何か息が詰まりそうになってくる感じがします。 

(資料)
新浪黑龙江 (Feb.15 2014 - 哈尔滨极地馆北极熊两兄弟征婚 全球择偶求脱单
中国新闻网 (Feb.14 2014 - 哈尔滨极地馆为北极熊兄弟向全球征婚)
People's Daily Online (Feb.15 2014 - Polar bear brothers in China zoo want mates)
凤凰网 (Dec.24 2013 - 哈尔滨极地馆圣诞节活动

(過去関連投稿)
中国・黒龍江省、哈爾濱極地館のホッキョクグマたち ~ ブラックホールの内側の謎
中国・黒龍江省、哈爾濱極地館のホッキョクグマ、河徳の眼科治療
ロシア・シベリア中部のクラスノヤルスク動物園のセードフ司令官の10歳のお誕生会 ~ 行方不明の兄弟たち
中国・黒龍江省、哈爾濱 (ハルビン) 極地館で暮らすベーリングとマリーギン ~ ついに所在が判明する
by polarbearmaniac | 2014-02-15 22:30 | Polarbearology

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