街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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フィンランド・ラヌア動物園のランツォがオーストリア、ウィーンのシェーンブルン動物園へ  

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ランツォ Photo(C)Kaleva.fi / Jukka Leinonen

フィンランドのラヌア動物園で2011年11月にヴィーナスお母さんから誕生した雄のランツォはすでに2歳になっています。 以前からラヌア動物園の園長さんはこのランツォの移動先選定について非常に熱心に関与の姿勢を示したいたわけで、その飼育環境について高いハードルを設定してEAZAのコーディネーターに対する働きかけを行なっていたわけです。 これについては昨年の投稿である「フィンランド・ラヌア動物園のランツォの移動先選定が難航か? ~ 綻びを生じた(?)欧州の繁殖計画」、及び「フィンランド・ラヌア動物園のランツォの移動先選定が混迷を極める ~ 繁殖成功後の次なる壁」をまずご参照下さい。

さて、とうとうこのランツォの移動先が決定しました。 それはオーストリア・ウィーンのシェーンブルン動物園だそうで、5月に同園のホッキョクグマ新飼育展示場の完成に合わせてランツォがウィーンに移動するそうです。ラヌア動物園の園長さんは、「ちょっとほろ苦い気持ちですが、ランツォとの別れは最初からわかっていたことです。」 と感慨深げに語っています。
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ランツォとヴィーナスお母さん Photo(C)Ilta-Sanomat

さて、今回のランツォの移動先ですが私は欧州の方から実は別の移動場所を聞いていました。 その場所ならば十分にありえるなと思っていたわけですがオーストリア・ウィーンのシェーンブルン動物園とは意外な感じがします。 ラヌア動物園の園長さんは、面積が十分はあるにせよあくまで既存の動物園の延長上にある施設では不十分だと考えていたであろうことはかねてからの発言でよく伝わっていました。 ですからラヌア動物園の園長さんは欧州の「基準」よりもはるかに優れた環境である自然を活用した広大な施設をランツォの移動先として希望していただろうと思います。 たとえばスコットランドのハイランド野生公園とかスカンジナヴィア野生動物公園とかオルサ・ベアパークのような環境の施設です。 しかしその希望は満たされることは難しかったようです。 ウィーンのシェーンブルン動物園の新ホッキョクグマ飼育展示施設 (“Franz Josef Land”) は確かに素晴らしいものができるそうですが、しかしそれはあくまでも従来の動物園の施設といった枠組みを出るものではありません。
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シェーンブルン動物園の新施設「フランツ・ヨーゼフ・ラント」 (C)Tiergarten Schönbrunn

昨年から何回か投稿していますが、欧州の繁殖計画(EEP)にやや綻びが生じてきていることは間違いなく、幼年個体の移動先選定にEAZAのコーディネーターが非常に苦労するようになったわけです。 特に「ロストック系」の幼年個体の移動先確保、そしてその後のパートナー候補の選択に極めて苦心しているわけです。 さらにラヌア動物園サイドの情報ではウィーンでランツォのパートナーとなるのはオランダで生まれたランツォと同じ歳の雌であるとされています。 それが正しいとすれば、それは2012年3月に現地で私も会ったことのあるレネンのアウヴェハンス動物園で2011年12月にフギースお母さんから誕生した双子の一頭である雌のリンとなるでしょう。
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リン (C)explore.org

しかしリンの父親のヴィクトルはランツォの母親のヴィーナスと兄妹の関係にありますから、これは問題です。 ウィーンのシェーンブルン動物園には当初はロッテルダム動物園生まれのヴィックスとアウヴェハンス動物園生まれのセシが移動するはずだったわけですが、このペアはすでにフランスのミュルーズ動物園に移動してしまったわけです。 EAZAのコーディネーターとしては一歳年齢が違うもののヴィックスとランツォを本来は入れ替えたかったのだろうと思いますが、そうはいかない何らかの事情があったと思われます。 ともかく、ランツォのパートナー候補がラヌア動物園サイドの情報のように本当にリンになるのかのかを含めて、幼年・若年個体の再配置にはまだ紆余曲折が予想されるような気もします。 この欧州の幼年・若年個体のペア形成もパズルのような形をとるわけで、そこにララファミリーの幼年・若年個体の存在を加味すればより一層複雑となり、これを考えていくことは実に興味深い話となるわけですが、今回はそれに深入りしないこととします。 この問題については稿を改めたいと思います。

ともかく「ロストック系」の幼年・若年個体の多さに頭を痛めている欧州の繁殖計画の一端を垣間見せてくれる今回のランツォのウィーン・シェーンブルン動物園への移動決定のニュースです。

(資料)
YLE (Feb.24 2014 - Ranuan jääkarhu muuttaa Itävaltaan)
Kaleva.fi (Feb.24 2014 - Ranzo-jääkarhu muuttaa Ranualta Itävaltaan)
Ilta-Sanomat (Feb.25 2014 - Ranuan jääkarhu Ranzo muuttaa Itävaltaan - katso video!)

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by polarbearmaniac | 2014-02-25 15:00 | Polarbearology

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