街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カナダ・トロント動物園に戻ったイヌクシュクのさらなる挑戦 ~ 優秀な雄の最後の課題は相性の克服

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イヌクシュク Photo(C)Polar Bear Habitat

現在、雄のホッキョクグマでは北米でおそらく最もその繁殖能力に信頼性がおけるのがカナダの野生出身で11歳になったイヌクシュク (Inukshuk) でありましょう。 このイヌクシュクについては以前、「カナダでの飼育下期待の星、イヌクシュクの物語」と投稿でその軌跡を追ったことがあります。 その投稿以降で彼は先日その名前が決定したトロント動物園のハンフリーの父親にもなったわけでした。

このイヌクシュクは今年の1月31日にオンタリオ州 コクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村 (Polar Bear Habitat) からまた再度、オーロラとニキータの双子姉妹との間の繁殖を目的にトロント動物園に出張しているわけです。 このコクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村 (Polar Bear Habitat) はトロント動物園の後方支援施設のような機能も果たしているわけで、イヌクシュクはこのコクレーンとトロントの間を行き来して繁殖に貢献しているというわけです。ここで昨年2013年の繁殖シーズンにトロント動物園に出張したイヌクシュクの姿、そして再びコクレーンに戻ったイヌクシュクの昨年暮れの姿を見ておきましょう。





彼の昨年のトロント出張の成果が今回人工哺育されたハンフリーなのですが、このハンフリー、及びその前回のハドソン(現 アシニボイン公園動物園)の母親はいずれも雌のオーロラで、このオーロラの双子姉妹であるニキータとの間ではイヌクシュクはまだ繁殖行為はなされていないそうです(*後記 - 別の報道によりますとイヌクシュクとニキータとの間には過去には繁殖行為があったと報じています)。 コクレーンの担当者の話によれば、これはまさに “chemistry” (「相性」と訳しておきます)の問題だと言っています。 その点でイヌクシュクとオーロラの相性は非常に良いということも言っています。 イヌクシュクの今年のトロントでの課題はやはりニキータとの間で繁殖行為に至るかどうかということだと思われます。 オーロラについては2011年10月の三つ子出産ではそのうち2頭を虐待し、残る一頭(すはわちハドソン)は人工哺育となっています。 次の2012年12月の三つ子出産は全て衰弱死、そしてさらに次の2013年11月の三回目の三つ子出産でも二頭は衰弱死で残る一頭が今回の人工哺育されたハンフリーというわけで、二回目、三回目の出産ではオーロラは育児を行おうという意思はあったものの授乳に十分に成功していないという事実があるわけで、これが彼女の今後の大きな課題でしょう。 こうなるとオーロラの双子姉妹のもう一頭であるニキータにも期待かかるわけで、ここでイヌクシュクの新たなる挑戦の真価を問われることになるでしょう。
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イヌクシュク Photo(C)Polar Bear Habitat

2009年11月に誕生したケベック州のサンフェリシアン原生動物園でのエサクバクをパートナーにしたタイガとガヌークの双子から数えればイヌクシュクは4回の繁殖行為で合計11頭もの子供を出産させているわけですが、雌の側の問題で実際に育ったのはタイガ、ガヌーク(以上自然繁殖)、ハドソン、ハンフリー(以上人工哺育)の4頭だけです。 イヌクシュクは優秀な繁殖能力を有する雄であるが故に、今度は雌との相性というホッキョクグマの繁殖においては克服が難しいと考えられている問題に挑戦するという、さらなる困難かつ高い課題、つまり具体的にニキータとの間の繁殖が期待されているというわけです。 それはまさにトロント動物園が彼に最も期待していることでもありましょう。 究極の課題にイヌクシュクがどう挑みかかるか、それに注目したいと思います。

(資料)
Sudbury Star (Feb.15 2014 - Love is in the air)
Jezebel (Orphaned Baby Polar Bear "Talks" To His Zookeeper)
A World Trough Lenses (Jul.11 2003 - New polar bear cub in the zoo)

(過去関連投稿)
カナダでの飼育下期待の星、イヌクシュクの物語
カナダ・トロント動物園のオーロラとニキータの物語 ~ 双子姉妹と繁殖との関係
カナダ・トロント動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ 今シーズン最初の出産ニュース
カナダ ・ トロント動物園でホッキョクグマの三つ子の赤ちゃんが誕生するも全頭死亡!
カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村のイヌクシュク、繁殖への期待を担って再びトロント動物園へ
デンマーク ・ オールボー動物園のミラクがカナダ・コクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村へ!
カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村へのイヌクシュクの帰還とEAZAの狙うミラクの欧州域外流出阻止
カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村にイヌクシュクが無事帰還 ~ 息子のガヌークの近況
カナダ・ケベック水族館のタイガ、次世代の繁殖への期待を担う
カナダ・オンタリオ州 コクレーンの保護教育生活文化村に暮らすイヌクシュクとガヌークの父子の近況
by polarbearmaniac | 2014-03-09 06:00 | Polarbearology

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