街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ウクライナ・ハリコフ動物園のティムにとっての不安 ~ 同国の政治的混乱とハリコフ動物園の窮状

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ティム Photo(C)Фото Блог TiRoV.com

依然として先行きの見えないウクライナ情勢です。とにかくウクライナという国の財政は破綻寸前の状態であり、そういったことにより多くの影響が現れています。 ウクライナ北東部の都市ハリコフ(ウクライナ語では「ハールキウ」)の動物園に一頭で暮らすサーカス出身の28歳の雄のホッキョクグマであるティムについては過去3回ほど投稿していますので、過去関連投稿をご参照下さい。 このティムの暮らすハリコフ動物園ですが実は先週からハリコフの地元では多くの報道がなされています。それは、今回のウクライナの政治危機がきっかけとしてハリコフ動物園に対する国庫金からの運営資金の供給がストップしてしまい、動物たちの飼料調達が困難になっているという報道です。 ハリコフ動物園もHPで市民に呼びかけを行い、動物たちの餌になるものを是非持ってきてほしいと懇願しています。 さらに、入場料を払って多くの人に動物園に来てもらいたいとも言っています。 入場料収入は日銭として動物たちの飼料を調達する資金にできるという意味でしょう。 報道によれば、非常に切迫した状態のようです。
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(C)日本経済新聞社

実はかつてから私は諸々の事象についてのウクライナという国のこうした報道には懐疑的な見方をしており、そしてハリコフ動物園の言うように本当に切迫した状態なのかにも確信が持てないまま、ここ数日ウクライナのいろいろな報道をチェックしていました。 3月7日の報道で園長さんが国庫金からの運営資金のハリコフ動物園への供給額の変化についていろいろと数字を挙げて説明しているものの煩雑ですのでここでは省略しますが、要点は動物たちの飼料の供給者(主に農業組合)に対するハリコフ動物園の支払いが滞っており、飼料の供給者からは10日の月曜日の分から資料の供給はできないと言われたということです。 「動物たちは政治的な抗争を行っているわけではないのに。」 と園長さんは悲痛な表情です。



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週末ハリコフ動物園に集まった市民 Photo(C)Городской Дозор

こういったハリコフ動物園の窮状に対して週末には多くの市民が思い思いの食料を手にして動物園に集まり入り口には長蛇の列ができたそうです。 その様子を伝えるTVニュースの映像をご紹介しておきます。 これはウクライナ語ですね。 冒頭はCMです。



しかし果たしてこういう状態でハリコフ動物園はいつまで耐えられるのかが問題でしょう。 ハリコフ動物園が本当に困っているらしいということは事実ではあるようですが、しかしどうも気になることがないわけではありません。 というのもいわゆる「一流紙」といったマスコミはコムソモリスカヤプラウダ紙のウクライナ版以外はこのハリコフ動物園の窮状についての報道が無く、政治的に「色」のついたマスコミがこれを報じているように感じられる点です。 園長さん(ロシア系)は、一番の問題は首都キエフの新政府が動かないことだと語っていますが、このハリコフという街はロシア系の人口の多い街で、いわゆる親欧米のウクライナの新政権には批判的な声の強い街です。 動物園の話ですから本来は非政治的は話題であるはずですが、なにかこうして政治性をかぶった報道になっているような気がしないでもありません。そのあたりのことも考慮しておかねばいけないような気がします。 さらにハリコフ動物園の言うことを100%そのまま鵜呑みするのは注意が必要でしょう。
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ティム Photo(C)Отзовик

いずれにせよ、ハリコフ動物園で老後を暮らすティムにとっても、気がかりな状態は続きそうです。

ウクライナの情勢ですが欧米のマスコミは親欧米の新政権が善でヤヌコーヴィチの旧政権、そしてロシアが悪であるという図式の報道を行っていますが、物事はそう簡単ではありません。 問題は今回の政変で親欧米派の後ろにいた得体の知れない正体不明の民族主義者の暴力集団の存在です。



こういう集団がティモシェンコのような生まれながらの詐欺師と今後結託すればいったいどういうことになるかは目に見えています。 ウクライナの政治が安定するためには、ロシア系の多いクリミア半島をロシアに割譲、そして西部のガリツィア地方を切り離すことです。 やはりロシアのプーチン大統領はたいしたものです。 戦略的な状況がよく見えています。 それに引き換え、アメリカのオバマ大統領とケリー国務長官は本当に醜態をさらしています。 こういった事態は十分想定できたはずなのに、対応が後手後手となっています。 この地域のことを十分に理解していないようです。 アメリカはレーガン大統領の時代まではこういった国務省の地域専門家の意見をうまく政策に取り入れていました。 しかし今ではもうそういった専門家の意見を政策に反映することができなくなっています。 ウクライナの新政権というのは実は自由と民主主義といった考え方とは程遠い政権であり、相当に問題がありますから、これに対して巨額の援助を行おうというのは賢明なやり方ではないでしょう。 現時点では私はロシアのクリミア半島併合は正しいだろうと考えています。 そのほうが現実的でしょう。 ウクライナにとってクリミア半島を抱えていくというのは決して国の安定に寄与しません。 爆弾を抱えているようなものだからです。

(資料)
Харьковский зоопарк (Дорогие друзья Харьковского зоопарка!)
Интернет-газета "Вести" (Mar.6 2014 - В Харьковском зоопарке от голода начнут умирать животные)
Городской Дозор (Mar.7 2014 - Животные в Харьковском зоопарке могут погибнуть от голода. К горожанам обращаются за помощью)
Интернет-газета "Вести" (Mar.7 2014 - Харьковский зоопарк попросил горожан нести голодным животным еду)
Телекомпания НТВ (Mar.7 2014 - В зоопарке Харькова предупреждают, что уже на следующей неделе начнется гибель ни в чем не повинных животных)
ТВ Центр - Официальный сайт телеканала (Mar.7 2014 - Животные харьковского зоопарка могут умереть от голода)
СЕГОДНЯ (Mar.8 2014 - Харьковчане массово ринулись в зоопарк спасать животных)
Комсомольская Правда в Украине (Mar.8 2014 - В харьковский зоопарк несут охапки еды для животных)
Медиа группа «Объектив» (Mar.9 2014 - Гора продуктов и проданные билеты. Харьковчане пришли на помощь животным в зоопарке)
Радио Свобода (Mar.7 2014 - Харьковчане объединяются для поддержки зоопарка)

(過去関連投稿)
サーカスを「引退」し余生を送るホッキョクグマ ~ ウクライナ・ハリコフ動物園のティムの夏
ウクライナ・ハリコフ動物園のティムの近況 ~ 繁殖の「過去の栄光」をどう考えるか
ウクライナ ・ ハリコフ動物園に到来した暑い夏とサーカス出身のティムの近況 ~ 同園での繁殖の歴史
by polarbearmaniac | 2014-03-10 06:00 | Polarbearology

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