街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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チェコ・ブルノ動物園のコメタとナヌクの将来への不安 ~ 忍び寄るロシアとウクライナの紛争の暗い影

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コメタとナヌク Photo(C)DENÍK/Drahomír Stulír

今回の件も非常にマニア向けの話であり奇々怪々とした背景を考えなくてはならない厄介な話です。 以前からチェコのブルノ動物園で一昨年の11月にコーラお母さんから誕生したコメタとナヌクの双子の移動先に関する報道をご紹介してきました。 雌のコメタがロシアのロストフ・ナ・ドヌ (Росто́в-на-Дону́) の動物園(以下、「ロストフ動物園」と記載します)に移動となることは内定しており、一方で雄のナヌクはウクライナのムィコラーイウ (Миколаїв/Николаев) 動物園に移動する可能性があることはすでに、前者についてはチェコの報道、後者についてはウクライナの報道で明らかになっていることはご紹介していますので過去関連投稿をご参照下さい。 また、このコメタとナヌクの移動が大幅に遅れるという件についても「チェコ・ブルノ動物園のコメタのロシア・ロストフ動物園への移動が大幅に延期 ~ 複雑な背景を読み解く」という投稿でご紹介しています。 最近のブルノ動物園でのコメタとナヌク、そしてコーラお母さんの様子を一つ映像でご紹介しておきます。



まず前者のコメタのロストフ動物園への移動予定についてはロシアのロストフでのБлокнот の3月14日付の報道によっても報じられ、これでチェコ側とロシア側の両方の報道内容が一致してその裏付けがとれたということになります。 そもそもチェコ・ブルノ動物園のコーラお母さんが前回2007年11月に産んだトムとビルの双子はEAZAのコーディネーターの調整でトムはプラハ動物園、ビルはドイツのゲルゼンキルヘンの動物園に移動していますが、今回のコメタとナヌクに関してはEAZAのコーディネーターが移動先を調整しようとした形跡がない点がまず興味深いわけです。 実はこのコメタとナヌクが生まれる直前にブルノ動物園はコーラお母さんの出産・育児の成功を願ってモスクワ動物園の助言を求めた件は「チェコ・ブルノ動物園のコーラに出産間近の兆候! ~ モスクワ動物園担当者の助言を求め万全の体制へ」 という投稿でご紹介しています。 今から考えれば、ひょっとしてこの時から生まれてくる赤ちゃんの将来の移動先についてモスクワ動物園と EARAZA (Евроазиатская региональная ассоциация зоопарков и аквариумов / Еuro-Аsian Regional Association of Zoos and Aquariums - ユーラシア地域動物園水族館協会) に調整を委ねることを考えていたのかもしれません。 何故EAZA (European Association of Zoos and Aquaria - 欧州動物園水族館協会) ではなくEARAZA に移動先の調整を委ねようとしたのかの真相は謎ですが、これはおそらくブルノ動物園がEAZAのコーディネーターに対して強い不信感と嫌悪感を示していたと考えて間違いないだろうと考えます。 その原因が生じた理由は前回のトムとビルの移動に関して何か大きな不満があったためだと思われます。 ですから、このコメタとナヌクの移動時期が大幅に遅れている間にEAZAのコーディネーターが調整に乗り出してくるということは可能性としては極めて低いと考えざるを得ません。 ただしかし、以前に「チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシア・ロストフ動物園へ ~ ブルノ、モスクワ、ロストフの巧妙な三角関係」という投稿でも指摘しましたが、コメタのロストフ動物園への移動についてブルノ動物園とモスクワ動物園との間で権利関係の移動があったかどうかがはっきりせず、仮にあったとすればそれはコメタの売却を意味し、なかったとすればそれはEARAZA、つまり事実上はモスクワ動物園による移動先の単なる調整を意味することになります。 当初の経緯から考えれば後者の可能性が正しいと思われますが、EAZAのコーディネーターの介入を排除しているように見える現状と、そしてこれが複雑な三園間での複数の種の複数個体の交換であるらしいことを考えれば前者の可能性のほうが真実に近いのではないかと思われます。 非常に難解です。
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コーラお母さんとコメタとナヌク Photo(C)Zoo Brno

次に雄のナヌクについてですが、ウクライナの報道ではムィコラーイウ動物園に移動する計画があると報じていますが、チェコ側からの裏付け情報がありません。 さらに今回のウクライナの政治状況の激変によってムィコラーイウ動物園も先日「ウクライナ・ハリコフ動物園のティムにとっての不安 ~ 同国の政治的混乱とハリコフ動物園の窮状」という投稿でご紹介したハリコフ動物園と同じ事態に陥っており動物たちに与える飼料の代金を払う金がないために飼料の供給が絶たれ、市民からの差し入れを受けているほどです。 以下の映像は15日のムィコラーイウ動物園の様子です。 市民たちからの差し入れです。



こんな状態をいつまでも続けられるわけがありません。 動物園に関してだけではなく、こういったウクライナにおける諸々の事態について私は今日の夜はずっとウクライナよりの多くの報道を追いかけていました。 しかしどうも今一つすっきりとしない点が残ります。 何故ウクライナのハリコフ動物園はクラスノヤルスク動物園その他のロシアの動物園に支援を求めているかについて、園長さんがロシア系だからという理由だけで説明がつくのかといったことも問題です。 ハリコフ動物園やムィコラーイウ動物園をはじめとする現在のウクライナ国内の動物園の状況とその問題点については稿を改めたいと考えます。 調べれば調べるほどこれはウクライナ社会に潜む実に根の深い複雑、かつ容易ではない問題が浮かび上がってきます。 結論から言えば、私はウクライナの動物園は全てclose して、動物たちはロシア各地の動物園が手分けして引き取ってやるべきでしょう。 それが動物たちためには一番良いだろうと思います。 そうしてやらなければ彼らは救われません。
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コメタとナヌク Photo(C)DENÍK/Drahomír Stulír

いずれにせよブルノ動物園のコメタとナヌクの将来については非常に厳しい状況が予想されることは間違いないでしょう。 本当に可哀想な気がします。

(資料)
Блокнот (Mar.14 2014 - В ростовский зоопарк привезут самку белого медведя из Чехии)
DENÍK (Nov.24 2013 - Medvědí párty: Kometa a Nanuk oslavili první narozeniny)

(過去関連投稿)
チェコ・ブルノ動物園の双子の赤ちゃんのナヌクが右前脚を負傷 ~ ブルノ動物園の抱く思惑への憶測
モスクワ動物園のシモーナお母さんの三つ子の一頭の雌がウクライナ・ムィコラーイウ動物園に移動へ
ロシア南部・ロストフ動物園とウクライナ・キエフ動物園との間の紛争 ~ 「ホッキョクグマ詐欺」事件の概要
チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシア・ロストフ動物園へ ~ ブルノ、モスクワ、ロストフの巧妙な三角関係
チェコ・ブルノ動物園の双子の雄のナヌクがウクライナ・ムィコラーイウ動物園へ移動か?
チェコ・ブルノ動物園のコメタのロシア・ロストフ動物園への移動が大幅に延期 ~ 複雑な背景を読み解く
ウクライナ、ムィコラーイウ動物園がホッキョクグマの輸入許可を取得するものの立ちはだかった難題
ウクライナ・ハリコフ動物園のティムにとっての不安 ~ 同国の政治的混乱とハリコフ動物園の窮状
by polarbearmaniac | 2014-03-18 23:45 | Polarbearology

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