街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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チェコ・ブルノ動物園のコメタが4月にロシア・ロストフ動物園へ ~ 表向きのニュースの裏側を探る

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コメタ Photo : Блокнот

今回の投稿も「マニア向け」の話ですので関心のない方は無視していただきたいと思います。 モスクワ動物園が実質上のイニシアティブを握ったホッキョクグマとその他の種の他園間移動のスキームがいかに複雑怪奇にものであるかについては過去に何度かご紹介しています。 「繁殖計画」のための移動の調整という体裁を装いつつ、実際は金銭や権利の移動を伴う、外部からはなかなかうかがい知れないホッキョクグマの移動が行われるわけです。

チェコ・ブルノ動物園で一昨年11月24日にコーラお母さんから誕生した双子のうちの雌のコメタですが、すでにロシアのロストフ・ナ・ドヌ (Росто́в-на-Дону́) の動物園(以下、「ロストフ動物園」と記載します)に移動となることは内定していました。 その件については、「チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシア・ロストフ動物園へ ~ ブルノ、モスクワ、ロストフの巧妙な三角関係」という投稿をご参照下さい。 その移動時期が大幅に遅れて夏の終わり頃になるということを「チェコ・ブルノ動物園のコメタのロシア・ロストフ動物園への移動が大幅に延期 ~ 複雑な背景を読み解く」という投稿でご紹介しています。 ところが先日3月14日付のロシアの Блокнот 紙の報道によれば、近いうちにブルノ動物園から雌のホッキョクグマが移動してくることを伝えており、いささか状況に変化が生じたのかと思っていましたところ、それに呼応するようにブルノ動物園とチェコの報道がコメタが4月中にロストフ動物園に移動することを報じています。 双子のもう一方のナヌクについては依然として待機となる模様です。

その理由としてロストフ動物園の受け入れ態勢が整ったことを表向きの理由として報じられていますが、以前からご紹介しています通り、これはロストフ動物園がモスクワ動物園から購入するホッキョクグマ(つまりブルノ動物園のコメタのこと)の代金について、それを負担すべきウクライナのキエフ動物園の支払いに何らかの目途がついたからだと考えるのが正しいでしょう。 キエフ動物園にかわって誰かがその費用を負担した(することになった)ということに違いないと考えられます。 ブルノ動物園は、今回のコメタのロストフ動物園への移動のスキームの背後に存在しているモスクワ動物園については一切触れていませんが、それはそういった複雑な業界事情は公にすべきものではないと考えているからでしょう。

ブルノ動物園はロストフ動物園の飼育環境に危惧を抱く一般からの意見に対しては、実際にロストフ動物園を訪問して飼育展示場の状態をチェックしてコメタの将来の繁殖には問題がないことを確認している事実を説明したようです。 ブルノ動物園はロストフ動物園においてコメタの将来のパートナーとなるのは野生出身個体になるだろうと語っていますが、おそらくそれは野生孤児が近い将来保護された際にロシアの自然管理局 (RPN - Федеральная служба по надзору в сфере природопользования) がその飼育先としてロストフ動物園を指定してくるだろうという強い見通しがあるものと考えられます。 私もおそらくそうなるだろうと考えています。 そうでなければロシアにおいて「アンデルマ/ウスラーダ系」の個体の繁殖のパートナー探しは容易なことではないからです。 しかしそもそも、このコメタがロシアへ行くことが本当に彼女の幸福につながるのかどうかについて、私は釈然としない気持ちがどこかに残ります。

それにしても、物事にロシアが絡むと実に不思議な話になってきます。ホッキョクグマの移動の件も例外ではないようです。 一つのニュースの背後に潜む意味について、それを読み解いていきませんとスラヴ圏の状況については理解が難しいように思います。 今回の件も、キエフ動物園とロストフ動物園との間の紛争から始まって全て情報を総合しなければ理解が容易ではありません。

以前にもご紹介していますが、ブルノ動物園のホッキョクグマ展示場のライブカメラはこちらになります。 コメタとナヌクの双子がコーラお母さんとそろって一緒に居られるのもあと少しということになりました。 ここで3月9日の映像を2つ御紹介しておきます。





(資料)
Блокнот (Mar.14 2014 - В ростовский зоопарк привезут самку белого медведя из Чехии)
Brněnský deník (Mar.20 2014 - Medvědice Kometa pojede do Rostova dřív, Nanuk musí počkat)

(過去関連投稿)
チェコ・ブルノ動物園の双子の赤ちゃんのナヌクが右前脚を負傷 ~ ブルノ動物園の抱く思惑への憶測
モスクワ動物園のシモーナお母さんの三つ子の一頭の雌がウクライナ・ムィコラーイウ動物園に移動へ
ロシア南部・ロストフ動物園とウクライナ・キエフ動物園との間の紛争 ~ 「ホッキョクグマ詐欺」事件の概要
チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシア・ロストフ動物園へ ~ ブルノ、モスクワ、ロストフの巧妙な三角関係
チェコ・ブルノ動物園の双子の雄のナヌクがウクライナ・ムィコラーイウ動物園へ移動か?
チェコ・ブルノ動物園のコメタのロシア・ロストフ動物園への移動が大幅に延期 ~ 複雑な背景を読み解く
チェコ・ブルノ動物園のコメタとナヌクの将来への不安 ~ 忍び寄るロシアとウクライナの紛争の暗い影
by polarbearmaniac | 2014-03-25 01:00 | Polarbearology

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