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上野動物園にユキオが無事帰還 ~ 報じられるデアとのペア形成はあり得るのか?

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ユキオ (2012年11月17日撮影 於 釧路市動物園)
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デア (2013年6月16日撮影 於 上野動物園)

釧路市動物園からユキオが昨日夕方無事に恩賜上野動物園(以下「上野」と略記します)に帰還したことが東京新聞の電子版(4月8日付け)で報じられています。 麻酔を使用しての移動だったでしょうから、無事に完了してなによりです。  さてこの記事、実に興味深いことが書かれています。 それをそのまま文字通り信じてよいかは微妙ですが、とりあえず記事の要点を以下に整理します。

(1)ユキオの体調は良好だが今後検疫のために一週間動物病院に入り、公開日は未定。

(2)ホッキョクグマは絶滅危惧種であり国内に動物園は繁殖できそうなホッキョクグマを移動させ、ペア形成を試みている。

(3)今後ユキオはデアとの相性を見ながらペア形成を試みる。


さて...これを読んだときに私はいくつかの考えが頭に浮かびました。 もちろん(3)についてです。 これが意味するところは実に意味深長です。 以下の二つの可能性が想定可能です

A.上野はデアのパートナー探しに成功しておらず、とりあえずユキオをデアのパートナーとせざるを得ない。

B.上野が言う 「デアとユキオのパートナー形成」 は表向きの話であって、実は真意は別のところにある。


Aについてですが、これはイコロ(or キロル)の獲得について現時点では不可能だと判断しているということになります。 これは昨年も散々投稿したのですが、この件については札幌市(円山動物園)から拒絶されたことを意味します。 何故円山動物園がその申し入れを断るかについては、明らかにイコロとキロル(M1+M2)マルルとポロロ(F1+F2)を対の存在にしておくほうが対欧州との交渉に便利だからだろうと考えられるからです。 (M1+M2)の一頭をFXと交換し(F1+F2)の一頭をMXと交換して、(M1+FX)と(MX+F1)の2ペアを形成させようということでしょう。 これが円山動物園のロジックとみて間違いないでしょう。 非常に合理的な考え方だと思いますし、対欧州についても説得力があると思われます。 ところがイコロ(or キロル)をデアのパートナーにしてしまえば(M1+M2)は対の存在ではなくなり、このロジックは崩壊してしまうことになるわけです。 だから札幌市(円山動物園)は上野の申し入れを断ったと考えるのが妥当な見方でしょう。 ただし、今年の年末に仮にララが雄の双子でも出産すれば、その新ツインズが新しい(M1+M2)を形成することになり、今度はイコロ(or キロル)の上野行きが可能となるはずですが、しかしこれは仮定の問題でしかありません。

札幌ルートが絶たれた上野が次に頼りにするのはモスクワルートでしょう。 上野が本気になってこれを求めればモスクワ動物園は自らが権利を持つ個体を上野に出すでしょう。 その個体はモスクワ動物園生まれとは限りませんし年齢的にもデアと若干の年齢差があるでしょうが可能でしょう。 これはマニア向けの話になり、私はそのいくつかのロシア内の選択肢について考えてみたいところです。 しかしそのモスクワルートまで上野が真剣に考えているかについては現時点では疑問符がつきます。

ということで(とりあえず)デアのパートナーはユキオにならざるを得ないということなのでしょう。 これがAの意味するところです。

Bについてですが、これは実はあまり生産的な話ではありません。 ユキオをさらに繁殖に場に立たせることが繁殖の成功という実際面を目的としたことではなく、実は外部に対してのメッセージではないかという考え方です。 誰に対してかと言えばまず釧路と札幌に対してでしょう。 釧路に対してという意味は、「釧路に対してのわだかまり」 をこういう形で示したのではないかということです。 札幌に対してという意味は、「イコロかキロルをどうしても欲しいから早く何とかしてほしい」という意向をこういう形で示したのではないかということです。
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デア (2013年6月16日撮影 於 上野動物園)

このAとBでは、やはりAが妥当な見方でしょう。 ただし、デアとユキオとのペア形成については大きな疑問符がつきます。 このデアというのは幼年期に父親と同居したという、世界のホッキョクグマ界では「禁じ手」となっていることを実際に体験した個体です。 この件については是非「上野動物園の女神デア、その神性の宿るところ ~ 父親との同居成功という稀有の体験が語るもの」という投稿を再度ご参照下さい。こういう体験でデアは雄に対する許容力が通常の雌の若年個体と比較すると大いにあると言ってよいと思われます。 しかし今回は逆にそれが災いして、年齢差のあるユキオと同居させてもデアは、「以前にどっかにいたようなおじさん」 として認識するだけでしょう。 つまり、ユキオは彼女の「雌としての本性」を呼び覚ます存在にはならないでしょう。 つまり、デアの雄に対する許容力は単に同居に関してであり繁殖については別の問題ではないだろうかということです。 しかしイコロやキロルとではそうではないはずです。 これならば、デアは異性としての雄を意識することになるだろうと思います。

上野動物園、本当に困りましたね。 デアのパートナー探しにここまで苦闘するとは私も予想していませんでした。

ともかくも、ユキオさんの無事の上野帰還を祝福したいと思います。

(資料)
東京新聞 (Apr.8 2014 - ホッキョクグマ「ユキオ」上野に戻る 地元でペア形成試み

(過去関連投稿)
釧路市動物園のユキオとツヨシ ~ 残された繁殖の時間の限られたペアの姿
釧路市動物園へ ~ 余生安楽モードのユキオへの苦言
憂愁のホッキョクグマ ・ ツヨシの憂鬱
釧路市動物園のユキオが上野動物園へ、男鹿水族館のミルクが釧路市動物園へ ~ その後を予想する
釧路市動物園のユキオが4月に上野動物園へ帰還 ~ "Never bark up at the wrong tree"
釧路市動物園でユキオのお別れ会が開催 ~ ほろ苦さを後に残したユキオの釧路滞在
上野動物園の女神デア、その神性の宿るところ ~ 父親との同居成功という稀有の体験が語るもの
梅雨の合間の女神デアに会い彼女のパートナー候補を考える ~ イコロ、キロルの線はすでに消えた?
南国で地中海の太陽を浴びて育ったデアの冬の日 ~ "Ti piace la neve ?"
by polarbearmaniac | 2014-04-08 14:00 | Polarbearology

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