街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ウクライナ東部、ハリコフ動物園のティムの無事を願う ~ ウクライナの動物園に蔓延した根深い腐敗

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ティム  Photo(C)Онлайн путеводитель по Украине
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ウクライナの政治状況がますます混沌としてきています。東部地域のいくつかの都市の行政庁舎や警察署を占拠している親ロシア派の武装勢力ですがハリコフもそういった都市の一つです。 このハリコフの街の動物園には以前にも何度かご紹介したことのあるサーカス出身で1998年からハリコフ動物園で飼育されている28歳の雄のホッキョクグマであるティムが一頭で飼育されています。 前回の「ウクライナ・ハリコフ動物園のティムにとっての不安 ~ 同国の政治的混乱とハリコフ動物園の窮状」という投稿で、このハリコフ動物園が政治的混乱の影響で飼育している動物たちへの飼料調達に非常に苦労している件を投稿しています。 これはハリコフ動物園だけではなく、ウクライナの全ての動物園でも程度の差こそあれ、似通った状態に陥っているわけです。
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ティム Photo(C)Жизнь в Харькове

このウクライナの動物園の抱える問題についてナショナルレビュー (National Review) 誌に "Ukraine’s Animal Victims" という非常に興味深い報告記事が掲載されていました。それによりますと、こういったウクライナの動物園の窮状は現在の政治的混乱によってだけでもたらされたわけでは必ずしもないそうで実は以前から、動物園に回される資金の半分もが行政の側の人間の個人のポケットに入ってしまっていることも大きな問題であり続けていたようです。 ウクライナという国の腐敗、汚職は以前から相当なものであり、ある調査によれば透明度においては177か国のなかで144位という不名誉な順位だそうで、社会のシステムの隅々まですっかり汚職と腐敗が蔓延しているというのが現実です。 動物園の上層部が自分の身内や友人を動物園に就職させるものの、そういった人間は仕事もせずに金をくすねるだけのことしかしないといった驚くべき現実もあるそうです。 非常に歪んだネポティズムといったところです。 これはウクライナの社会全体の事象から考えればさほど驚くことではないかもしれません。
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ティム  Photo(C)Крузо.рф

ウクライナが好きになってそこに移住した南アフリカ出身の裕福な実業家は、こういった動物園の動物たちの窮状をなんとか救おうとLAEO (the Lawrence Anthony Earth Organization) という動物たちに対する飼料の現物支援組織を作り、ハリコフ動物園の園長さんに対して動物たちに対する援助を申し出たところ、それに対して園長さんは 「金が必要だ。」 とだけ言ったそうです。 LAEO は金ではなく動物たちへの飼料の現物提供でと申し出たところ、ハリコフ動物園サイドは結局は、そうした援助は不要だということになったそうで、とにかく 「金をくれ」 ということだったそうです。 私も前回の投稿で指摘しましたが、ハリコフ動物園の言うことの全てをそのまま鵜呑みにしてはいけないという一つの例がここにあります。 要するに現金による援助は、結局はその多くが個人のポケットに入ってしまい動物たちを救うことにはならないということです。
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ティム  Photo(C)Mediaport

ロシアはウクライナよりは遥かにましですが、やはりこうして動物園関係者の個人のポケットに入る金はやはりあるわけです。 ですからホッキョクグマの血統を偽って移動させたりするというのは、結局動物たちが移動すればそこに金の流れができ、そしてそういった金のうちのある部分が個人のポケットに入る仕組みになっているということです。 私が以前から指摘していますが、血統を偽ったホッキョクグマの売却やら繁殖のための他園間の移動スキームというものの裏側にはこうした個人のポケットに入るであろう腐敗した金の流れが付きまとっているということなのです。 ホッキョクグマの場合は他の動物と比較するとそういった金の流れが大きいということです。 これこそまさにスラヴ世界の「暗黒の闇」という実態だということです。 こういったことに関しては「ロシア南部・ロストフ動物園とウクライナ・キエフ動物園との間の紛争 ~ 『ホッキョクグマ詐欺』事件の概要」、及び「チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシア・ロストフ動物園へ ~ ブルノ、モスクワ、ロストフの巧妙な三角関係」などの投稿をご参照下さい。 ともかくも、一番可哀そうなのは動物たちだということです。

ここでハリコフ動物園のティムの映像をいくつか見てみましょう。 冒頭にCMが入るものもあります。 実に厳しい飼育環境だと思います。





ウクライナの親欧米派の暫定・新政権というのは以前の政権と変わらぬ腐敗した人間から成り立っており、こうした政権に援助を行うなどというのは金をどぶに捨てるようなものです。
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(C)The Economist

そもそもウクライナは、ロシアがクリミア半島を手中にした時も、ほとんど何もせすに静観していたような印象があります。 ウクライナはあれが侵略だなどとは思っていないのでしょう。 思っていれば軍を出動させて血を流してでも奪還作戦をとっているはずです。 つまりこれから言えることは、ウクライナは民族としての強いアイデンティティーをそれほど持っていないということです。 それほどウクライナは実はロシアとは関係の深い国であり、だからこそロシアと一戦を交えようという気概などあるはずがないわけです。 そういった国がロシアの影響から離れて将来のEU加盟やNATO加盟を目指すなどという資格はないと言ってよいでしょう。 ロシアの「属国」であるほうが遥かに利益は大きいはずです。 親欧米派の暫定・新政権が善玉で親ロシア勢力が悪玉などという単純なことでは到底ありえず、ドイツなどは今回の問題であくまでロシアと話し合おうという姿勢であるものの、アメリカやイギリスはロシアへの制裁を強めようとしています。 日本がそういった動きに乗っかっていくというのは危険でしょう。 ウクライナの親欧米の暫定・新政権は旧政権とは何ら変わりのない、いやそれよりももっと悪質な頭の上から足の先まで完全に腐りきった政権ですので資金援助などは無用でしょう。

(資料)
National Review Online (Apr.17 2014 - Ukraine’s Animal Victims)
NBC (Mar.10 2014 - Ukrainian Zoo Strapped for Food, Looks for Help)
The Huffington Post (Mar.8 2014 - Ukrainian Zoo Animals Faced Starvation Due To Lack Of Funds)
Крузо.рф (Apr.12 2014 - Харьковский зоопарк)
Онлайн путеводитель по Украине (Харьковский зоопарк)
Жизнь в Харькове (Для маленьких харьковчан / Итак, №2 в нашем списке – Харьковский зоопарк)
Харьковский зоопарк (Павильон медведей)
zoobiz.ru (Белый хозяин полярных снегов)
Mediaport (Aug.7 2012 - Сиеста, душ и особое мороженое в зоопарке)

(過去関連投稿)
サーカスを「引退」し余生を送るホッキョクグマ ~ ウクライナ・ハリコフ動物園のティムの夏
ウクライナ・ハリコフ動物園のティムの近況 ~ 繁殖の「過去の栄光」をどう考えるか
ウクライナ ・ ハリコフ動物園に到来した暑い夏とサーカス出身のティムの近況 ~ 同園での繁殖の歴史
ウクライナ・ハリコフ動物園のティムにとっての不安 ~ 同国の政治的混乱とハリコフ動物園の窮状
ロシア南部・ロストフ動物園とウクライナ・キエフ動物園との間の紛争 ~ 「ホッキョクグマ詐欺」事件の概要
チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシア・ロストフ動物園へ ~ ブルノ、モスクワ、ロストフの巧妙な三角関係
by polarbearmaniac | 2014-04-17 23:45 | Polarbearology

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