街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・ロストフ動物園に移動したチェコ・ブルノ動物園のコメタの処遇にブルノの地元ファンから怒りの声

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ロストフ動物園で検疫期間中のコメタ Photo(C)Аргументы и Факты 

今回の件はやや「マニア向け」の話です。 チェコ・ブルノ動物園で一昨年11月24日にコーラお母さんから誕生した双子のうち雌のコメタが4月上旬にロシアのロストフ・ナ・ドヌの動物園に移動した件についてはすでに「チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシアのロストフ・ナ・ドヌに無事到着 ~ 早速ロストフ動物園へ」という投稿でご紹介していました。 そもそも何故コメタがロストフ動物園に移動したかですが、これは以前に「ロシア南部・ロストフ動物園とウクライナ・キエフ動物園との間の紛争 ~ 『ホッキョクグマ詐欺』事件の概要」、及び「チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシア・ロストフ動物園へ ~ ブルノ、モスクワ、ロストフの巧妙な三角関係」という二つの投稿でその背景を読み解いたことがあります。 ロストフ動物園はキエフ動物園との契約でホッキョクグマの若年ペアを入手するはずだったもののキエフ動物園の前園長の詐欺行為によってホッキョクグマのペアの入手が不可能であることが判明し、それに代わるペアをモスクワ動物園から入手しようとしていたわけです。 チェコのブルノ動物園からコメタとナヌクの双子の移動先選定を依頼されたEARAZA(実質上はモスクワ動物園)はホッキョクグマ以外の種を含む複数の動物たちの他園間移動のスキームを作り上げ、そのスキームの中にコメタを入れたわけです。 そしてその移動先をホッキョクグマの若年ペアの入手を計画していたロストフ動物園に指定したわけです。 つまりチェコのブルノ動物園とロシアのロストフ動物園はお互いに交渉したわけではなく、全てEARAZA(実質上はモスクワ動物園)の調整によってコメタはロストフ動物園に送られることになった...そういうことになるわけです。

チェコのブルノ動物園の多くの地元ファンはコメタのロストフ動物園への移動に大きな不満を抱き、ブルノ動物園のSNSのページで同園を突き上げたわけでした。 その内容には、ロストフ動物園のホッキョクグマ展示場の飼育環境の悪さを指摘したものが多く、またロストフ動物園がコメタの到着に関する情報をほとんどHPで紹介しなかったこともあり、ブルノの地元ファンの不満は高まるばかりです。 そうしたブルノの地元ファンは、コメタの移動に関してブルノ動物園が直接ロストフ動物園と交渉して移動させたのだと理解しているようで、「何故ロストフ動物園なのか?」 という問いかけを行っていますが、実はそういうブルノの地元ファンの方々は、実は今回の移動はEARAZAの作り上げたスキームの一環であって背後にはモスクワ動物園がいることを理解していないためにブルノ動物園を突き上げているわけです。 ブルノ動物園はこのスキームを作り上げたのはモスクワ動物園であり、コメタの移動先選定は全てモスクワ動物園の決定であることを地元ファンには一切説明せず、そのために地元ファンの不満は高まるばかりといった状況です。
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ロストフ動物園でのコメタ Photo(C)Zoo Brno

ブルノ動物園はロストフ動物園に移動後のコメタの写真(上)をロストフ動物園から入手して公開しましたが、その写真に対してもブルノの地元ファンは「飼育環境が悪い」と怒りを爆発させています。 ブルノ動物園の飼育環境も決して人に威張れるわけではないのですが、やはり自分たちが大切にしてきたコメタがこれから暮らすロストフ動物園の飼育環境については非常に不満を抱きやすい心情になっているということでしょう。 それはまさに、円山動物園のマルルとポロロの移動先における飼育環境を厳しい目で見る傾向が存在しているであろうことと同じわけです。 さらにブルノの地元ファンはロストフ動物園がコメタのその後に関する情報をほとんど発信しないことにも大きな不満を抱いているようです。 ロストフ動物園はそういったチェコのファンの声についてどうも気が付いているようで冒頭の写真をマスコミを通して公開しています。 コメタはロストフ動物園に来園後は一か月間の検疫期間に入っていることを明らかにし、その期間が終了すれば一般公開を行うということを示したいということなのでしょう。

さて、ロストフ動物園はホッキョクグマの若年ペアの入手を図っていたものの、どうもコメタのパートナーとなる雄の若年個体の入手ができなかったようです。 つまりこれは、モスクワ動物園がそういった雄の若年個体をコメタにあてがうことができなかったということを意味します。 ですからロストフ動物園は今頃になって1歳の雌のコメタの繁殖上のパートナーはサーカス出身の13歳のイョシとペルミ動物園から移動してきた11歳のテルペイだなどと言い出したわけです。 こうなると、モスクワ動物園で2011年の暮れにシモーナお母さんから誕生した三つ子のうち雄の一頭が余ってしまったことになるわけですが、この2歳になっている雄はロシア国外に出る可能性が濃厚になってきた気配がします。 まさか上野動物園がそれを狙っているなどということは無いとは思いますが、どうしてもデアのパートナーを国外から調達しようとすれば、これは有り得ない話ではないかもしれません。 血統的にはシモーナの子供たちは「アンデルマ/ウスラーダ系」ですから、すでに何頭も飼育されている雄の若年個体と血統的には同系統となりますので、今後を考えるとかなり厳しいものがあると言わざるを得ません。

ともかく、非常に複雑な背景が存在しているコメタのロストフ行きだったということです。

(資料)
Аргументы и Факты (Apr.17 2014 - Правда ли, что в Ростовском зоопарке появилась необычная медведица?)

(過去関連投稿)
ロシア南部・ロストフ動物園とウクライナ・キエフ動物園との間の紛争 ~ 「ホッキョクグマ詐欺」事件の概要
チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシア・ロストフ動物園へ ~ ブルノ、モスクワ、ロストフの巧妙な三角関係
チェコ・ブルノ動物園の双子の雄のナヌクがウクライナ・ムィコラーイウ動物園へ移動か?
チェコ・ブルノ動物園のコメタのロシア・ロストフ動物園への移動が大幅に延期 ~ 複雑な背景を読み解く
チェコ・ブルノ動物園のコメタとナヌクの将来への不安 ~ 忍び寄るロシアとウクライナの紛争の暗い影
チェコ・ブルノ動物園のコメタが4月にロシア・ロストフ動物園へ ~ 表向きのニュースの裏側を探る
チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシア・ロストフ動物園に向けて出発 ~ 双子に遂に別れの日来る
チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシアのロストフ・ナ・ドヌに無事到着 ~ 早速ロストフ動物園へ
by polarbearmaniac | 2014-04-18 23:45 | Polarbearology

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