街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカ、アラスカ動物園のアプーンとリューティクのペアの繁殖への期待 ~ 避妊薬副作用の克服へ

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アプーンとリューティク Photo(C)Anchorage Daily News

アメリカ・アラスカ州の州都であるアンカレッジにあるアラスカ動物園といえばこのブログでも過去に何回かご紹介しています。 規則違反を行った入園者に襲いかかり大けがをさせたものの、それは当然だったと地元の人に称えられさえしたビンキーについては「動物園でホッキョクグマに襲われた人々(後) ~ アラスカの『英雄』ビンキー」 を是非再度ご参照下さい。

さて、このアラスカ動物園では現在2頭のホッキョクグマが飼育されています。 15歳の雌のアプーンと13歳の雄のリューティクです。 このアプーンについては「アメリカ・アラスカ州アンカレッジのアラスカ動物園が始めた奇抜な寄付金募集方法 ~ 『動物園大統領』選挙」、及び「アメリカ ・ アラスカ動物園の『初代動物園大統領』にアプーンが当選」という2つの投稿をご参照下さい。 またリューティクについては「ウスラーダお母さんの2頭の子供たちとの別れ」。及び「ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園の女帝ウスラーダの15頭の子供たちの姿」 をご参照下さい。 現在彼はアンカレッジ動物園ではルイー (Louie) という愛称で呼ばれているそうです。 この2頭について地元のマスコミであるアンカレッジデイリーニュース (Anchorage Daily News) 紙が4月25日付の最新の記事 ("Alaska Zoo has high hopes for a polar bear cub") でかなり詳しく報じていますので、それをごく簡単に要点のみご紹介しておきます。
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アプーン Photo(C)Anchorage Daily News

この雌のアプーンはアラスカ北部のポイントレイ付近で孤児として保護されたわけですが、それはハンターがアプーンの母親を雄だと誤認して射殺してしまった後に、その足跡をたどって巣穴に行きつき、中にいた赤ちゃんを保護したという経緯があったからそうです。 当時アラスカ動物園ではホッキョクグマのペアであったヌカとビンキーが死亡した後でありホッキョクグマの飼育展示場は空いていたわけで、この孤児となってしまったアプーンを他の動物園に移動させる必要はなくアラスカ動物園で保護・飼育させることが可能な状態だったためアプーンはアラスカ動物園に引き取られたというわけだったそうです。 現在アラスカ動物園の園長となっているランピ氏は当時この動物園に到着したばかりのアプーンを世話したスタッフだったそうで、ランピ園長は自分が動物園で働いていて最もおもしろかった時期のひとつであると当時を回想して語っています。 ランピ園長はアプーンに作業服をかけてやって最初の夜を一緒に寝たそうですが、アプーンはその作業服を噛み、そしてランピ園長を叩いたり、また靴にも噛みついたりしたそうですが30分ほどして眠ってしまったそうです。 ランピ園長は、アプーンが自分を恐れなかったのは自分の体の温かみがあったからだろうと考えているそうで、絶えずアプーンに話しかけアプーンはランピ園長の丸めた暖かい両脚に挟まれて寝てしまったということだったようです。 「アプーンは魅力的でとても白いホッキョクグマだ ("She's just a beautifully stunning, very white looking polar bear.")」 とランピ園長は当時を語っています。 それから数か月してアプーンの遊び友達としてヒグマの赤ちゃんだったオレオを彼女と同居させたそうで、最初の頃は仲良くしていたものの、後になってオレオがアプーンに攻撃的な態度をとったためこの2頭を引き離すことにしたそうです。 そうしてアプーンは一頭で飼育されることになったそうです。 このアプーンの2006年のお誕生会の様子を見てみましょう。



そうこうするうちにオーストラリアのシーワールドからアラスカ動物園に来園したのが雄のリューティクだったというわけです。 このリューティクが双子であった片方の雌のリアと共にロシアのサンクトペテルブルクからオーストラリアのシーワールドに移送された件については「ウスラーダお母さんの2頭の子供たちとの別れ」をご参照頂くこととし、そしてさらに彼がシーワールドからアラスカ動物園に移動した背景については「オーストラリア・ゴールドコースト、シーワールドのホッキョクグマたち ~ 繁殖への期待、豪太との関係」をご参照下さい。
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リューティク Photo(C)Anchorage Daily News

当時オーストラリアのシーワールドはホッキョクグマの繁殖に関してはカナダの野生孤児個体である雄のネルソンとハドソンを入手したわけで、リューティクは一種の「余剰個体」となってしまったわけです。 その点はモスクワ動物園生まれの豪太も同様であり、シーワールドはリアと彼女と血統上の関係のない豪太を組ませようというアイディアを想定していたもののネルソンとハドソンの入手によって豪太も「余剰個体」となってしまったために、自ら飼育することなしにモスクワから直接豪太を日本に貸し出したというわけです。
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リアとリューティクの双子兄妹 Photo(C)TVF International

さて、シーワールドはリューティクの受け入れ先を探すのに非常に苦労したわけですが、結局はこのアラスカ動物園が受け入れ先となり、ランピ園長はこのリューティク受け入れのために必要な書類の束と格闘したわけでした。 リューティクは2006年8月にカンタス航空の便でシドニーから上海を経由して28時間かけてアンカレッジに到着したそうです。 リューティクが最初にアプーンに引き合わされたときは早速リューティクはアプーンのそばに行こうとしたわけですがアプーンは警戒的で唸り声を上げたりしていたものの4日間ほどでこの2頭は打ちとけた様子になったそうです。
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アプーン Photo(C)AP

この2頭は繁殖行為はあったそうですが、特にここ2年については繁殖について有望だと考えられているようで、特に昨年はアプーンの体が太ったことから彼女が妊娠したのではないかと考えられていたそうですが、実際は妊娠していなかったということだそうです。 アプーンは2010年の6月までデスロレリン(Deslorelin) という一種の避妊効果のある薬物を与えられていたそうです。 これはどうもアラスカ動物園ではちゃんとした産室が完備されていなかったらしいという事情とホッキョクグマの繁殖には従来から消極的であった同園の姿勢があるということのようです。 このデスロレリンの影響が抜け切れないために妊娠しないのではないかという懸念もあるそうで、ホッキョクグマの場合はデスロレリンの投与終了後5年にわたって副作用の形で妊娠しない状態が続くとトレド動物園の担当者は語っているようですが、研究によれは確かにこの避妊薬の影響は予想以上に長く継続はするもののネコ科の動物では妊娠の能力が回復することが報告されているそうで、アプーンについても悲観すべきことではないのではないでしょうか。 ここで2009年のアプーンの映像をご紹介しておきます。 エンリッチメント・デー(Enrichment day) でのアプーンです。



それから下は水中でのアプーンの様子です。



アメリカ・アラスカ州アンカレッジのアラスカ動物園が新施設計画 ~ 野生孤児保護センターの機能強化」という投稿でもご紹介していますがアラスカ動物園ではホッキョクグマ飼育の新施設の建設が計画されており、このアプーンとリューティクとの間での繁殖についても当然これからは期待されていることは間違いないでしょう。 今年もすでにこの2頭には繁殖行為があったそうですが、完備されていないと言われていたこのアラスカ動物園の産室も十分に整備してやってほしいところです。

(資料)
Anchorage Daily News (Apr.25 2014 - Alaska Zoo has high hopes for a polar bear cub)

(過去関連投稿)
動物園でホッキョクグマに襲われた人々(後) ~ アラスカの「英雄」ビンキー
アラスカ・アンカレッジの動物園でのお誕生会
アメリカ・アラスカ州アンカレッジのアラスカ動物園が始めた奇抜な寄付金募集方法 ~ 「動物園大統領」選挙
アメリカ ・ アラスカ動物園の 「初代動物園大統領」 にアプーンが当選
アメリカ・アラスカ州アンカレッジのアラスカ動物園が新施設計画 ~ 野生孤児保護センターの機能強化
オーストラリア・ゴールドコースト、シーワールドのホッキョクグマたち ~ 繁殖への期待、豪太との関係
ウスラーダお母さんの2頭の子供たちとの別れ
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園の女帝ウスラーダの15頭の子供たちの姿
by polarbearmaniac | 2014-04-26 23:45 | Polarbearology

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