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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ウスラーダの母性とは何か? ~ 魅せられる芯の強さと筋の一本通った強靭なる母親の姿

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今回で彼女自身16頭目となった赤ちゃんを出産したウスラーダである。 
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彼女こそ現在世界で最も偉大な母であることに全く疑いはないが、ではいったい彼女の母性はどう発揮されているかに対して写真と映像で説明しようとするとこれは実に難しいことを痛感せざるを得ない。
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何度も指摘しているように、モスクワ動物園のシモーナ(彼女はウスラーダの長女である)や円山動物園のララが私の母親タイプ分類上では「情愛型」の母親であるのと比較すると、このウスラーダは「理性型」の母親である。
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この「理性型」の母親というのはその特徴が典型的に現れるシーンを映像としてとらえることが難しい理由は、それが長い時間のスパンにわたって行われる子育てにおける一種の「姿勢」とでもいったものだからである。 一方で「情愛型」の母親がその母性を発揮するシーンは、その「情愛」が形をとって行動に表れてくるため映像につかみやすいのある。  写真や映像は「情愛型」の特徴である「行動」は捉えられても「理性型」の特徴である「姿勢」は捉えにくいということである。  私がこのウスラーダを実に偉大な母親であるとようやく実感できたのは彼女の前回の出産であるロモノーソフに対する彼女の育児を見た一昨年2002年の訪問の最終日に至ってである。それほどまでにこの「理性型」の母親の特徴を理解するには時間がかかるということである。
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「理性型」の母親は子供たちに対して「正しいこととそうでないこと、行うべきこととそうでないこと」を示すことを最も優先するのである。 だからそういった母親は人間が認識できるようなスキンシップの愛情表現は行わない。 だから表面的に見れば物足りなく思うのである。 ところがいざ彼女の行動を長い時間観察してみれば、ウスラーダは自分の子供に対して透徹した視線を送り、その子供の行動の正当性の実現という視点で子供たちを監視・観察するのである。危険なことがあれば直ちに対応する用意をしている。 しかしこのウスラーダは長年の育児の豊富な経験により、自分の子供が何を考えどう行動しようとしているかを全て理解できるために絶えず子供たちを監視し続ける必要はないらしい。 こういったことをなんとか映像を用いて説明したいと今日は意気込んでいたのだが、やはりかなり難しいのである。だから以下の映像は何もドラマのない理解が晦渋な例となってしまっているので全て無視していただいて結構である。

歩きながらもそれとなく赤ちゃんへの注意を怠らないウスラーダ


おやつタイムのウスラーダと赤ちゃん

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赤ちゃんが下の段に降りて水に向かう雰囲気を察するとウスラーダはその後を追う。しかしいつもそうだとは限らないのである。そうしない場合もあるのだ。 
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私は今日一日じっくり観察していたが、要するに水辺におもちゃがあって赤ちゃんがそれを取ろうという強い気持ちがあるらしい場合だけウスラーダはこうして赤ちゃんの後にぴったりくっついて赤ちゃんを監視する傾向があることがわかった。 つまりこれは赤ちゃんの息づかいや行動によって監視すべき場合としなくてもよい場合をうまく切り分けているということである。 ウスラーダの並々ならぬ母親としての力量を感じる。
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つまり、赤ちゃんが何かに夢中になっている周りへの注意力がなくなり、そして何かに突進しようとする場合は注意が必要だというウスラーダの感じ方だとみて間違いないだろう。

水に接近する赤ちゃんをそれとなく見守るウスラーダ

水に入った赤ちゃんの状態を見とどけるウスラーダ


おやつをもらった赤ちゃんにウスラーダお母さんの監視は不要

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実はこの親子の関係は何かさばさばしていて見ていて実にスッキリとした気持ちになる。 何か「理の勝った味わい」といったものを感じる。 こういったものはシモーナやララからは感じ取れない。
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ウスラーダは赤ちゃんを水に誘うでもなし誘わないでもなし、非常にべたつかない関係を維持するのである。
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ウスラーダは自分だけで泳いで遊ぼうという気はないが、しかし赤ちゃんをなんとか水に入れようという気もない。 なんとなくリラックスした姿を見せてくれる。 だから赤ちゃんに精神的な焦りは生じない。

ウスラーダと赤ちゃんの悠々たる泳ぎ

26歳のウスラーダの授乳

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このウスラーダは26歳になっているにもかかわらず、こうして動き回る赤ちゃんと一日中一緒にいても全く疲れた様子を見せない。 つまり、意識を集中すべき部分と気を抜いてよい部分との配分が実に巧みなのである。 ウスラーダは赤ちゃんを差し置いて自分だけが遊ぶということはやらない。 いつも子供に意識を向けているが、それは過度ではないために疲れを感じないということだろう。 「情愛型」のシモーナやララは展示時間中に赤ちゃんと体を寄せ合って昼寝をするが、ウスラーダは全く昼寝をしない母親である。 ウスラーダは子供のいない一頭だけのときは昼寝をするが、育児中はそれをしないのである。 つまり彼女はいつでも母親という高い立場にいて自分の子供に対する責任感を感じていることに間違いない。
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ウスラーダの母性はあくまで子供を上から見る姿勢によって維持されている。 それは、子供はまだ小さくていろいろなことを理解していないという考えからだろう。 子供の行動の物差しは母親であるウスラーダが握っているのである。 その物差しは「やってよいことといけないこと」、「すべきこととすべきでないこと」の明確な基準を持っているのである。 この物差しは「合理性」の目盛りが刻まれており、ウスラーダはその物差しを適用することによって自分の子供と接し、そして子供を育てていくのである。 これこそがウスラーダの愛情ということである。
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ウスラーダは見ていて実にスケールの大きな母親である。 そしてそこには一本、芯が通っている。 しかしこういったウスラーダの育児への姿勢を写真や映像から抽出することは極めて難しい。 それだけウスラーダの育児は高度な次元にあるからなのだろう。 昨年暮れに世界で一気に5頭もの「母親初体験」のお母さんたちが出現したが、あくまでも映像だけでの判断で断定的なことは言えないまでも、やはりどのお母さんも育児に精一杯で余裕が全くないのである。 そういったお母さんたちとこのウスラーダを比較すると、その差は歴然としているように感じる。
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こうしたウスラーダの子育ては見れば見るほど引き込まれてしまうのである。 私はシモーナやララのほうが、たとえタイプの異なる母親であることを考慮してもウスラーダよりは母親としての力量は優っていると最近まで考えていたが、こうして長い時間ウスラーダ親子と向き合っていると、そういった評価は一面的ではないかと改めて気が付いた。 シモーナやララとこのウスラーダの違いは、シモーナやララは自分の子供たちを自己の分身のように認識してその存在を自分の内側で把握するのに対し、このウスラーダは自分の子供たちを自己の外側に認識しているという点である。 つまりウスラーダの子供たちに対する態度にはある種のdetachment とでもいったような感覚が生じているように見える点である。 これも「理性型」の母親に見られる感覚のように思う。
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シモーナ、ララ、そしてこのウスラーダの母親としての力量は甲乙付けがたい。 この三頭の母親の子育てにはいずれも高度な能力が発揮されているのだ。 ウスラーダにあってシモーナやララにはないもの、それは芯の強さと筋の一本通った姿勢だろう。 これこそがまさに「理性型」の母親の典型であるウスラーダの見事な母親像なのである。 このウスラーダを見ていると、彼女の娘のシモーナや、そしてララが子供たちに示す愛情がややわずらわしくさえ感じるような気もするのである。 そういったウスラーダ親子の姿は、何時間、何日間でも見続けていたい気持ちになるのである。
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このウスラーダは、ただただ偉大であるという以外の言葉が見つからない。 崇高ささえ感じる母親ウスラーダの姿である。

Nikon D5300
AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR
(May.3 2014 @ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園)

(過去関連投稿)
「情愛型」 と 「理性型」、「対象関与型」 と 「対象非関与型」 のそれぞれの母親像の違いを探る
女帝ウスラーダとシモーナ、コーラ、リアの三頭の娘たち ~ 偉大な母親たちの三代の系譜
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダの歩む道 ~ 再説: 繁殖可能年齢上限
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園で26歳の女帝ウスラーダが16頭目の赤ちゃんを出産!
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by polarbearmaniac | 2014-05-04 04:45 | 異国旅日記

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