街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ハンガリー・ブダペスト動物園、ターニャ (1990~2013)  ~  「さすらいのホッキョクグマ」の旅の終焉

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ターニャ (1990 ~ 2013) Photo(C)Állatkert Budapest szívében

色々な国のホッキョクグマのニュースを注意深くチェックしていた私ですが、赤ちゃん誕生のニュースに気を取られ見落としていた重要なニュースがありました。それは以前に「さすらいのホッキョクグマ」として何回がご紹介したことのあるハンガリー・ブダペスト動物園の22歳の雌のホッキョクグマであるターニャの死です。 ブダペスト動物園のHPのニュース欄に昨年の12月5日の午後にターニャが亡くなったことが報じられていました。その前の何日間というものターニャの病状は悪化しており獣医さんの治療も功を奏さなかったとのことです。
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ターニャ Photo(C)Állatkert Budapest szívében

このターニャについては過去関連投稿をご参照頂きたいのですが生前は非常に移動の多かったホッキョクグマでした。 1990年にオランダのロッテルダム動物園に生まれていますが、それからはパリやアムステルダムやレネンで飼育され、そして2008年には生まれ故郷のロッテルダムに戻り、そこで雄のエリックとの間で繁殖が試みられたものの成功せず、なにがなんでもホッキョクグマの赤ちゃんを誕生させたかったらしいロッテルダム動物園は、わざわざウィーンのシェーンブルン動物園でアルクトスとナヌークという双子の息子と暮らしていたオリンカをロッテルダム動物園に呼び寄せ (あくまでもEAZAのコーディネーターの調整という形ではありましたが)、そしてこのターニャを2010年3月にウィーンのシェーンブルン動物園に移動させてしまったわけです。 アルクトスとナヌークは共にドイツのハノーファー動物園に移動し、そしてターニャは新しいパートナーをあてがわれることもなくシェーンブルン動物園で一頭で暮らしていたわけでした。 そのターニャのシェーンブルン動物園時代の映像をご紹介しておきます。



やがてターニャはハンガリーのブダペスト動物園の雄のヴィタスのパートナーとしてターニャは2011年11月にブダペスト動物園に移動したわけです。 ところが雄のヴィタスは2012年4月に急死し、それからというものこのターニャはまたまた一頭でブダペスト動物園で飼育されていたわけです。 ブダペスト動物園での生前のターニャについてTVのニュース映像をご紹介しておきましょう。



このターニャは実に同情すべきホッキョクグマです。 それぞれの移動先で繁殖を期待されながら実現せず、そしてまるで放り出されるかのように他園に移動していくといったことの繰り返しでした。 彼女の終焉の地となったブダペスト動物園ですが、雄のヴィタスと雌のレディとの間で長年にわたり繁殖が成功しなかったために不妊検査が行われ、その繁殖の不成功の原因が雌のレディにあることがわかるとレディはブダペスト動物園から移動させられたわけです(移動先は幸運にも飼育環境の極めて優れたデンマークのスカンジナヴィア野生動物公園で、彼女はそこでスミラという名前で飼育されましたが先日亡くなっています)。 レディのかわりにブダペスト動物園に来たのはイタリア・ピストイア動物園の雌のビンバです。 ビンバは出産経験があるというものの生まれてからずっと暮らしていたピストイア動物園から23歳にもなってブダペスト動物園に移動させられたわけですが、到着後わずか一か月ほどで亡くなってしまったわけです。 死因は肝臓がんと発表されてはいるものの、私は実はそうではないのではないかと疑っています。 亡くなったビンバにかわってブダペスト動物園に送られたのがターニャだったわけでした。 これら一連の経緯は全て過去関連投稿でご紹介してきた通りです。
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ターニャ Photo(C)Mirkó István/Blikk.hu

ブダペスト動物園は雄のヴィタスを繁殖の中心において雌を同園に移動させるようにEAZAのコーディネーターに強く働きかけたのでしょう、こうしてさほど若くもない2頭の雌がブダペスト動物園に移動したわけですし、その決定は実に鮮やかではありましたが、私はどうもすっきりとしない気持ちが残っています。 ブダペスト動物園は大事な雄の「ヴィタス様」の繁殖に執着しすぎたように思います。 今になって思えば、随分と他園の雌に無理を強いたような印象を持ちますね。 このヴィタスが亡くなった時に私は、これは「ホッキョクグマの神様」の怒りに触れたためだろうとさえ、ふと思ったほどでした。 さらにこのブダペスト動物園でヴィタスの生涯で彼に関連した3頭の雌のホッキョクグマは、レディ(スミラ)が23歳、ビンバも23歳、そしてこのターニャが22歳で全て亡くなってしまったのは何か不自然で不可解な気もします。 確率的にもほとんどあり得ない話です。 そもそもこういった年齢では飼育下のホッキョクグマはまだまだ元気なはずで、それが3頭も同じような年齢で亡くなってしまうというのは、ひょっとして「ヴィタス様」のもたらせたとんでもない厄災なのかもしれません。 飼育下のホッキョクグマに雄のスターはメンシコフ一頭で十分です。 繁殖に貢献するためにホッキョクグマを移動させねばならない場合、それは基本的には雄のほうだろうと思います。 ニュルンベルク動物園の雄のフェリックスなどはその点では腰が軽くて移動に慣れているわけで、なかなか頼もしいと思います。
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ターニャ Photo(C)Állatkert Budapest szívében

さて、こうして移動に移動を強いられた肝心のターニャですが、もうこれ以上移動する必要がなくなったときに彼女の死が訪れたということです。 本当に可哀そうなことをしたものです。 心よりターニャの冥福を祈るとともに、彼女の訃報について投稿が遅れてしまったことについて彼女に深くお詫びせねばならないと思っています。

(資料)
Budapest Zoo (Hírek, újdonságok/Dec.11 2013 - Tania emlékére) (Jul.29 2013 - Az állatok hűtése) (Sep.20 2013 - Együtt a sarkvidéki élővilágért)
RTL Klub (Oct.18 2011 - Új jegesmedve a budapesti állatkertben)
Blikk.hu (Oct.18 2011 - Hering kell neki, nem pasi!)
PORTHOLE (Oct.4 2013 - JEGESMEDVE KUPA)
RICHPOI (Oct.18 2011 - Új jegesmedve érkezett a fővárosi állatkertbe + képek)
Zoobesuche (May.9 2014 - Budapest: Farewell, Eisbärin Tania!)
Blikk.hu (Tanya az uj jegesmedve)

(過去関連投稿)
ハンガリー・ブダペスト動物園のレディとヴィタスの不妊検査 ~ ドナウ河岸の憂鬱
トスカーナの丘からドナウの真珠へ ~ 繁殖への希望をのせてビンバがブダペストへ
ハンガリー・ブダペスト動物園のビンバ死す!
ターニャの悲劇(前) - 「繁殖計画(EEP)」と「個体の幸福」の狭間で
ターニャの悲劇(後) - 「繁殖計画(EEP)」と「個体の幸福」の狭間で
いなくなったオリンカお母さんを呼び続けるウィーンの双子兄弟(アルクトス&ナヌーク)
オリンカとエリックの「再会」、そして「成就」...
オランダ・ロッテルダム動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生!
ウィーン・シェーンブルン動物園、ターニャの孤独(上)
ウィーン・シェーンブルン動物園、ターニャの孤独(下)
ウィーンの「さすらいのホッキョクグマ」ターニャ、今度はハンガリーのブダペストへ移動
ハンガリー・ブダペスト動物園のヴィタス死す ~ ブダペスト動物園の夢消えるか?
by polarbearmaniac | 2014-05-15 23:30 | Polarbearology

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