街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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和歌山・白浜、アドベンチャーワールドのミライの死の状況から死因を憶測する

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ミライ Photo(C)アドベンチャーワールド

和歌山・白浜のアドベンチャーワールドで飼育されていた4歳の雌のミライが16日に急死したことについてはすでに投稿しています。 アドベンチャーワールドの発表にはミライが死亡した時の状況についての記述はありませんでしたが、その後の報道で非常に簡単ではあれ状況が報じられています。 以下にまとめます。

・「16日昼前に水中に沈んで動かなくなっているのを飼育員が見つけ、すぐ引き上げて蘇生(そせい)を試みたが助からなかった。 この日朝まで体調に異常はなく、外傷もなかったという。」 (産経新聞)

・「16日の昼前、展示用プールに沈んでいるのを飼育員が見つけた。病理検査を行い、詳しい死因を調べている。」 (紀伊民報)

・「16日正午ごろ、水中に沈んで動かないのを飼育員が見つけた。直前まで元気に泳いでいたという。」 (共同通信)

・「16日昼前、展示用プールに沈んだまま動かなくなっているのを飼育員が見つけた。獣医らが蘇生を試みたが助からなかった。」 (毎日新聞)


これらから言えるであろうことは、ミライは潜水中に体に異変が生じたということです。 陸上で何かの異常が発生して水中に落下したのではないだろうということです。 何故かと言えばベルリン動物園のクヌートの例を見れば明らかです。 以下にもう一度クヌートの死の映像をご紹介しておきますが、問題なのは前半の水中への落下シーンではなく、後半の写真による映像です。クヌートは体の異変によって引き起こされた発作によって水中に落下したものの泳ぐことができず最終結果としては溺死という形をとったわけです。



このように水中に落下して溺死した場合は体が水に浮いてしまうわけです。 ところがミライは水中に沈んで動かなくなっていたわけですから、クヌートとは状況が異なると考えてよいでしょう。 つまりこのことからミライが水中から引き上げられた時点では死亡までは至っていなく仮死状態だったろうと推察しますが、このあたりの詳しい状況は報道からは十分には読み取れませんが獣医さんらが蘇生を試みたというのですから完全に死亡していなかったということは推察できます。 ただし言えるであろうことは、クヌートの死因は「溺死」 という最終結果ではあったがミライの死因は純粋に体の「異変」 だっただろうということです。 この「異変」 が何だったかですが、クヌートの死を踏まえて以下に可能性をまとめてみます。

A.脳に生じた異変
  ①癲癇(てんかん – epilepsy)の発作
  ②ウィルス性炎症による発作
  ③その他(脳内出血など)
B.内臓などに生じた異変 (心臓発作、体内出血、神経麻痺など)
C.その他 (毒物、薬物など外部的要因)


今回のミライの死を単純に人工哺育に結びつけるのは根拠がないということを前回書きましたが、まずそれはこういうことです。 つまり上のA~Cのうち人工哺育との関連に若干の疑いが残るのはA①だけであるということです。 A②③、B、Cは人工哺育だろうが自然繁殖だろうが起こり得ることですから人工哺育云々を論じることの意味はありません。 クヌートの死の引き金となった原因はA②であり、A①ではありません。 ですからクヌートの死を彼が人工哺育されたことと関連付けることは意味がありません。 この件については「ベルリン動物園の故クヌートの死因解明の最終報告書が発表される ~ 『ウィルス感染による脳炎』」を是非ご参照下さい。クヌートの死については広く社会一般の関心を引き、そしてベルリン動物園の責任問題の有無についても問題視されたわけで、その死因究明に時間がかけられ徹底的に行われたわけです。 今回のミライの死ですが、その死因解明の病理検査ではA①とA②の可能性を解明するほど時間をかけたものが行われる(or 行われた)ことは到底考えられず、せいぜいA③とBとCの可能性のどれなのかを解明しようという程度でしょう。 ですからミライの死因がA①であることの特定がなされるはずもなく、ましてや彼女の死が人工哺育と何らかの関係があるという結論が得てくる可能性はないと言ってよいということです。

しかし私はミライの死が人工哺育と全く無関係であると断言するつもりもありません。 要するに「人工哺育と関係がある」 ということの証明、立証ができないということです。 「立証」 できずとも「実際には関連がある」 ということは自然界の事象ではあり得ます。 ただしその関連性はあくまでも憶測の域を出ないということです。 私はミライの死因はオランダ・アウヴェハンス動物園のスウィマーの死と同様、「横隔膜(から)の体内大量出血」ではないかとも思いました。 このスウィマーの死については「『ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)』よりの考察(8) ~ いつ頃から赤ちゃんを水に親しませるか?」をご参照下さい。 しかし仮にそうであるならば検死によってそれは比較的楽に発見できるはずですが、16日に亡くなって20日付の報道で発表されるまでの間、まだ死因が特定されていないという状況から考えて、私はやはりA①かA②が死因ではないかとも憶測しています。 BやCならば死因の特定は比較的容易であるものの、まだそれが特定できていないということがその理由です。  しかし同時に、ミライの本当の死因が解明される可能性も低いだろうとも思っています。

最後に再び、若くして世を去らねばならなかったミライに哀悼の意をささげます。

(資料)
産経新聞 (May.21 2014 - アドベンチャーワールドの人気者、ホッキョクグマ急死 和歌山)
紀伊民報 (May.20 2014 - 4歳のホッキョクグマ急死 白浜アドベンチャーワールド
共同通信 (May.20 2014 - 4歳ホッキョクグマ死ぬ 和歌山のレジャー施設)
毎日新聞 (May.21 2014 - ホッキョクグマ:4歳急死 「天国でも元気に遊んでね」−−白浜・アドベンチャーワールド /和歌山)

(過去関連投稿)
和歌山・白浜、アドベンチャーワールドのミライが急死
ベルリン動物園のクヌートが急死! ~ ホッキョクグマのアイドル、死して永遠・不滅の伝説となる...
ベルリン動物園の故クヌートの死因解明の最終報告書が発表される ~ 「ウィルス感染による脳炎」
「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(8) ~ いつ頃から赤ちゃんを水に親しませるか?
ピース、その生と死の地平線の彼方に ~ 彼女の癲癇(てんかん)は母親の血統の「負の遺産」が原因?
by polarbearmaniac | 2014-05-21 14:00 | Polarbearology

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