街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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イタリアのマスコミ取材に対しイコロとデアのペア実現にかなりの自信を示していた2年前の上野動物園

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イコロ (2012年4月29日撮影 於 おびひろ動物園)
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デア (2014年4月27日撮影 於 恩賜上野動物園)

さて、実は2年前にイタリア・ファザーノのサファリ動物園のデアの上野動物園への移動についてのイタリアでの報道記事を読んでいましたら非常におもしろいことが書いてありました。 それは Osservatorio Oggi 紙の2012年3月15日付の記事で、上野動物園の園長さん (*注 - "direzione dello zoo di Tokyo" を「上野動物園の方針」と理解することも可能ですが、要するに "direzione" というからにはこれは "direttore"、つまり園長さんの意向と理解するのが語学的にも内容的にも正しいでしょう) に取材した内容が含まれていますが(おそらくイタリアからの電話取材かそれとも東京の特派員の取材でしょう)、それによりますと上野動物園の園長さんは、

“(Yukio) E’ un esemplare maturo e, pur se tranquillo, non sarebbe opportune.  Invece, è più probabile l’accoppiamento con un maschio più giovane, forse proveniente dallo zoo di Hokkaido.” 「ユキオはもの静かではあるものの年齢がいっており(デアのパートナーには)ふさわしくない。(ユキオのかわりに)デアのパートナーとなるのは北海道の動物園から来園する雄の若年個体となるだろう。」
(*追記 - これはホッキョクグマファンとして私は非常に言いにくいことですが、上のイタリア語で"maturo" と "tranquillo" という二つの単語が対比されていることから考えてイタリア語のプロの翻訳家だったら「老いぼれていて無気力だ」と訳すかもしれません。 明らかに否定的評価ですね。 おそらく園長さんの日本語の回答をイタリア語にした段階でそういったニュアンスが付加されたように思います。 おそらく園著さんはそういった意味でユキオ自体に対しての否定的評価はしていないでしょう。)

と語っています。 この記事は2012年3月15日付けです。 つまりデアが上野動物園に到着する前日の記事です。 ということは少なくともその段階では上野動物園は 「北海道の動物園の雄の若年個体」つまりイコロの入手にかなりの自信を持っていたということがわかります。 これで上野動物園がデアのパートナーにしたかった(or したい) 雄の個体はやはりイコロであることが明確になったわけです。 アイラがおびひろ動物園に到着したのは2012年2月20日であり、その時からイコロと壁へ隔て一緒に飼育が始まったわけでした。 それから約一か月してデアの来日となったわけです。 イコロは現時点でもおびひろ動物園で飼育されているわけですが、イコロの所有権を持つ札幌市がイコロの上野行きに待ったをかけたのは少なくとも2012年の4月以降であるということが、この記事ではっきりしたわけです。 なぜ4月以降であるかと言えばユキオが釧路市動物園に移動となるのが発表されたのが2012年4月4日だからです。 これで上野動物園にはイコロの受け入れの環境が整ったということになったからです。 しかし...その後に何かが起きたのでしょう。 そのためにイコロは現在もまだおびひろ動物園で飼育されているというわけです。 

しかしここでちょっと時期的に気になる符号があります。 それは円山動物園が2012年夏にドイツのハノーファー動物園に個体交換の話を持ち込んだ件ですが、その交換個体候補がアイラであったことが欧州サイドのマスコミ報道で明らかになった点です。 つまり、円山動物園は2012年夏にアイラを欧州に出すことが間違いなく成功するだろうと楽観的に考えていたのではないでしょうか? そうなると、おびひろ動物園にはイコロ一頭になってしまうわけです。 仮にアイラを欧州に送り出し、そして上野動物園の希望通りイコロを東京に移動させれば、おびひろ動物園にはホッキョクグマ不在となってしまうわけです。 ララが今後産むであろう個体の預け入れ先として円山動物園が頼りにしているおびひろ動物園が困るようなことを円山動物園は避けたかったと考えることは可能です。 そうなるとイコロは当分はどうしても帯広においておかねばならないと考えて円山動物園はその時点でのイコロの上野行きを断った...そう推理してみることも可能です。 2012年春にララとデナリとの間で繁殖行為があり、そしてその年の年末に期待されるララの出産の結果次第でイコロを上野に移動させる選択肢を改めて考えようということだったのかもしれません。 ところがララがその年の年末に産んだのはマルルとポロロの雌の双子でした。 この双子の性別が判明した段階で初めて円山動物園は「イコロ+キロル」の雄の双子のセット、そして「マルル+ポロロ」の雌の双子のセット、これらを欧州個体との交換候補として提示し、そして一気に2ペアを実現したいと考えるに至ったのではないでしょうか。 そうなると今度はイコロをデアのパートナーとさせてしまえばこのロジックは崩壊し、そして将来における対欧州との交渉への目論見が崩れると考えて、円山動物園はイコロの上野行きを再度断った...そう推理してみることも可能です。 少なくとも私が円山動物園だったら、それくらい戦略的な発想をするでしょう。

上野動物園における「イコロとデアの黄金のペア」、果たしてそれを見る日が来るでしょうか? 日本の首都東京の上野動物園で日本が世界に誇る偉大なる母であるララの息子が飼育されるということは、私は当然だろうと思っています。 それはある種の「象徴的存在」として必要だろうと思っています。 ただし、日本のホッキョクグマ界の将来を考えれば、対欧州との個体交換はどうしても必要でしょう。 そういったことを視野に入れつつもデアのパートナー候補は依然としてやはり、「本命イコロ」、「対抗」はなく 「大穴キロル」...そういうことではないでしょうか。

(資料)
OsservatorioOggi.it (Mar.15 2012 - L'orsa polare Dea vola in Giappone)

(*デア関連)
イタリア・ファザーノ、サファリ動物園での2008年産室内映像を振り返る ~ デア (現 上野動物園)の誕生
イタリアよりデアが元気に上野動物園に到着
上野動物園がイタリアのマスコミ取材に対して、デアのパートナーに雄の若年個体導入の意向を語る
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女神デアのパートナー問題の推移や如何 ~ 候補はイコロかキロルかイョシか?
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by polarbearmaniac | 2014-05-31 06:00 | Polarbearology

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