街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・イジェフスク動物園のドゥムカお母さんは母親としての力量不足か? ~ 母親の力量を考える

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ドゥムカお母さんと雄の赤ちゃん Photo(C)izhlife.ru

ロシア連邦・ウドムルト共和国のイジェフスク動物園で昨年12月12日にドゥムカお母さんから生まれた一頭の雄の赤ちゃんの情報は非常に乏しく、ましてや9歳で初産の野生出身のドゥムカお母さんがどのような育児を行っているのかについてもその概要を掴むのは容易ではありません。 それだからこそ、数少ない映像でいろいろと推察してみるという楽しみがあるわけです。 このイジェフスク動物園の親子については後日、現地よりレポートしたいと思っていますが、それまでの間に少しこのドゥムカお母さんの母親像について思いを巡らせてみようと思います。

まず最初にこれは以前にすでにご紹介したものですが、この親子の戸外初登場に際に撮影された12分間もある貴重な映像を再度見てみましょう。



この上の映像は戸外初登場ということもあってかドゥムカお母さんと赤ちゃんの距離はかなり接近しているように見えます。 つまりそれだけドゥムカお母さんは赤ちゃんの行動に関与しているわけです。 次の映像も一度ご紹介していますが、これは4月中旬の映像です。



この映像では距離感がありますね。 ドゥムカお母さんが赤ちゃんの行動にどれだけ関与しているのかはわかりません。 さて、ここでごく最近の二つの映像をご紹介しておきます。 このうち最初のものはすでにご紹介していますが、あとの二つ目は今回初めてご紹介するものです。





さて、上の二つの映像ですが、ドゥムカお母さんは寝ていたいにもかかわらず赤ちゃんはお母さんと一緒に遊びたいのでしょう、お母さんを一生懸命起こそうとしています。 これらの映像から推察するに、ドゥムカお母さんというのは母親としての経験不足がもろに露呈してしまっているのではないかということです。 何故そう言えるかについて私の考えを述べておきます。 まず以下の三枚の写真をご覧下さい。  これらはいずれも私の撮影したものです。
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ララお母さんとマルル、ポロロの双子 
2014年1月19日撮影 於 札幌・円山動物園
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シモーナお母さんと三つ子
2012年9月23日撮影  於 モスクワ動物園
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フリーダムお母さんとシークー、セシの双子
2011年5月2日 於 オランダ・レネン、アウヴェハンス動物園

この三頭(ララ、シモーナ、フリーダム)のお母さんたち、いずれも開園時間中に子供たちと体を寄せ合って寝ています。 この三頭のお母さんたちは、子供たちが元気に動いているときは時として一緒に元気一杯に遊んでやったり、また一緒に遊ばないにしてもそれとなく子供たち全てに注意を払っているわけです。 つまりこの三頭のお母さんたちは子供たちの行動が活発になるとそれに合わせて自らの心身を大きく活動させ、子供たちが疲れて眠ってしまう時には自らも一緒に体を休めるというわけです。 子供たちの活動のリズムに母親自らの心身の活動のリズムを一致させることに見事に成功しているわけです。 シモーナというのは100% 子供たちと一緒に体を寄せ合って寝るわけです。 ララやフリーダムもほぼ100% に近いでしょう。 私に言わせれば、これが優れたホッキョクグマの母親の育児の力量なのです。 我々はララのこういった姿を見慣れており、そもそもホッキョクグマの母親は子供たちとこうして寝るものだという考えを当然と思っているわけですが、実は全くそうではありません。 昼間にこういう姿を見せることができる母親の数は極めて限られているのです。 この姿を見ただけでララやシモーナやフリーダムがいかに母親として卓越しているのがわかろうというものです。 ところがイジェフスク動物園のドゥムカお母さんは上の映像によれば、赤ちゃんの活動のリズムと自分の心身の活動のリズムを一致させることができないわけです。 だから赤ちゃんが遊びたくてたまらないのにドゥムカお母さんは疲れて寝ていたいという状況が生じるわけです。 私が推察するにこのドゥムカお母さんは通常の時に必要以上に赤ちゃんに気を遣い過ぎているために途中で疲れて眠くなってしまうのでしょう。 そういったことの片鱗が冒頭の戸外初登場の映像のドゥムカお母さんの姿勢と行動に垣間見ることができるのではないかということです。 冒頭の映像でもドゥムカお母さんは疲れて眠ってしまうのですが、赤ちゃんはまだまだ活動したいらしくお母さんと一緒にすんなりと眠りにつくという状態にはなっていませんね。 つまりこれはドゥムカお母さんの母親としての経験不足が招いた上の映像のシーンではないか....私はそう推察します。

さて、上のララ、シモーナ、フリーダムは私の分類では「情愛型」の母親になります(フリーダムは幾分中間型にも近いですが)。 これが「理性型」の母親となるとまた違うわけです。 それをご覧いただきましょう。 それはあのウスラーダです。 この下の映像は共に私が先月サンクトペテルブルクで撮ったものですが、赤ちゃんは疲れて眠りそうな状態ですが、赤ちゃんが寄りかかっているのはウスラーダお母さんの柔らかい体ではなく、なんと固い石です。 そして映像の最後のシーンではウスラーダお母さんはゆったりと歩き回っています。



そして赤ちゃんは眠ってしまいます。



ウスラーダというのは、まず絶対と言ってよいほど赤ちゃんと体を寄せ合って眠るということをしない母親です。 彼女は26歳になっていますが、赤ちゃんが活動しているときもそうでないときもウスラーダは常にコントロールされた一定の心身の活動レベルを保つため、開園時間中に自らが疲れて眠るなどという必要はないわけです。 このウスラーダという母親の、自らに対する心身のコントロールというのは実に見事です。 彼女は赤ちゃんと一緒に遊ぶということはほとんど行いませんので、赤ちゃんが活動的な場面でもウスラーダは自分のエネルギーを遊びに費やすということはありません。 やがて赤ちゃんが疲れて眠ってしまってもウスラーダは疲れていませんので、ゆったりと赤ちゃんのそばで歩き回っている...そのエネルギーのコントロールは抜群だということです。 さすがに16頭もの子供を産む偉大な母親だけのことはあります。 ララ、シモーナ、フリーダムの姿がホッキョクグマの母親の卓越した力量を示すのとは全く違った意味で、ウスラーダの母親としての実力も抜群だということです。 つまりウスラーダは、育児においてどこが大事でどこがそうでないかについて要領をよく知っているために、自らのエネルギーの放出を一定量に保てるということでしょう。 こういったウスラーダのような母親像というのは別格の存在だと言ってよいと思います。 概ね言えることは、ララやシモーナやフリーダムのように子供たちの活動のレベルに合わせて自らの心身の活動レベル一致させるがために、昼間に子供たちと体を寄せ合って長時間寝ることのできる母親は優れた母親だろうということです。 例外はウスラーダぐらいでしょう。 やや角度をかえて言えば、「ララ、シモーナ、フリーダムは一頭の母親として抜群の存在である。 一方、ウスラーダは一頭の雌のホッキョクグマとして抜群の存在である。」 ということでしょうか。

さて、イジェフスク動物園のドゥムカお母さんが本当にまだ実力の備わっていない母親なのかどうか、それをどうしても見てこなければなりませんね。 これは興味津々といったところです。 私が今まで海外でホッキョクグマの母親を何頭も見た経験からも、ホッキョクグマの母親は一頭一頭、その子育てのやり方は全て異なるわけです。 一頭として全く同じやり方を行う母親はいないということです。 これだからホッキョクグマの親子の観察はおもしろくて止められないわけです。  まさにこれこそがホッキョクグマ観察の醍醐味だろうと私は考えています。

(資料)
izhlife.ru (Apr.15 2014 - Недавно родившийся в Ижевском зоопарке белый медвежонок вышел на прогулку)

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by polarbearmaniac | 2014-06-09 23:45 | Polarbearology

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