街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カナダ・トロント動物園で人工哺育のハンフリーの成長 ~ 「適応化 (Socialization)」 のステージへ

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ハンフリー Photo(C)Toronto Zoo

昨年11月9日にカナダのトロント動物園でオーロラお母さんから誕生し人工哺育で育てられている雄の赤ちゃんのハンフリーについては、その誕生、そしてまだ仮名として「レミー」が用いられて呼ばれていた時期も含めて可能な限りその成長を追ってきたつもりです。 ハンフリーも生後7か月が経過し、体つきもしっかりとしてきたようです。 そうしたハンフリーの最近の様子を二つほど映像で見てみましょう。





このハンフリーの二歳年上の兄は2011年10月生まれの雄のハドソン(現カナダ・ウィニペグのアシニボイン公園動物園)ですが、このハドソンも人工哺育で育てられたわけで兄弟での人工哺育は実はこれはかなり珍しいケースにあたります。 このハドソンとハンフリーの兄弟のこれからが注目されるわけですが、ハドソンはすでに「適応化 (Socialization)」に完全に成功しており、このハンフリーもハドソンと同じやり方でこの「適応化 (Socialization)」がなされていくと予想されます。 この人工哺育個体の「適応化 (Socialization)」については以前の投稿である「デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園でのシークーの 『適応化 (Socialization)』が順調に進行中」 を是非ご参照頂きたいのですが、ホッキョクグマの人工哺育は方法論としてはすでに1990年代にアメリカで完全に確立されており、人工哺育の問題はその個体の「適応化 (Socialization)」の成否の問題に移っているわけです。 デンマークのスカンジナヴィア野生動物公園でのシークーの「適応化 (Socialization)」実現の見事さについてもその投稿で触れたつもりです。
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ハンフリー Photo(C)Torontoist

このブログ開設以来、人工哺育されたホッキョクグマの成長過程についてはカナダ・トロント動物園のハドソン、デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園でのシークー、アメリカ・バッファロー動物園でのルナの例を詳しく追いかけてご紹介してきたわけですが、この三頭とも非常に順調に成育を遂げており健康面(特に精神面)では全く問題を感じさせません。人工哺育における「第二ステージ」である「適応化 (Socialization)」 についてもこうして欧米では実践面で方法論が確立したと考えてよいと言えるでしょう。 このトロント動物園のハンフリーもこの線で「適応化 (Socialization)」がなされていくものと予想されます。 こういったことは全てこうした欧米での具体的な実践例を追っていくことが重要であり、我々はホッキョクグマの「適応化 (Socialization)」 についてそれ以外の方法で知識を得ていくことは難しいと思います。 ホッキョクグマの人工哺育と「癲癇 (Epilepsy)」 との間に何らかの相当因果関係があるのかについては非常に難しい問題ではありますが、仮にあると仮定すれば、この「第二ステージ」である「適応化 (Socialization)」 の成否が大きなカギを握っているものと思われます。 そしてこの「第二ステージ」はやはりそれに協力する他個体の存在、そしてその展示場の環境に大きく左右されるでありましょう。 この点についてトロント動物園は熟知していることは間違いないものと思われます。

こういう欧米での視点に立つならば日本の動物園におけるホッキョクグマの人工哺育は、「第一ステージ」に関するならば、とべ動物園のピースはその成功例でしょう。 しかし「第二ステージ」がなされないまま彼女は「癲癇 (Epilepsy)」 と闘っているという状態です。 いや、「第二ステージ」がなかったがために「癲癇 (Epilepsy)」 と闘わざるを得なかったというほうがひょっとして真実かもしれませんが、そもそも人工哺育と「癲癇 (Epilepsy)」 との間の関係は証明されえない永遠の謎なのだと認識するならば、それは「ニワトリと卵」 との先行問題のようなものとして問われ続けられることなのかもしれません。 極めて難しい問題です。

(過去関連投稿)
カナダ・トロント動物園のオーロラとニキータの物語 ~ 双子姉妹と繁殖との関係
カナダ・トロント動物園でホッキョクグマの三つ子の赤ちゃん誕生! ~ 2頭は死亡するも1頭が生存
カナダ・トロント動物園で誕生し人工哺育で育てられている雄の赤ちゃんの近況 ~ 「レミー」 と命名
カナダ・トロント動物園で人工哺育で育てられている雄の赤ちゃんレミーの生後三週間後の映像が公開
カナダ・トロント動物園で誕生し、人工哺育となった雄の赤ちゃんのレミーが生後2か月となる
カナダ・トロント動物園での人工哺育の雄の赤ちゃんのレミーが初入浴
カナダ・トロント動物園での人工哺育の雄の赤ちゃんのレミーが遂に雪の戸外へ
カナダ・トロント動物園で誕生し人工哺育で育てられている雄の赤ちゃんレミーは生後11週間が経過
カナダ・トロント動物園、人工哺育の赤ちゃんレミーの一般公開開始予告と正式名称の募集を発表
カナダ・トロント動物園で人工哺育の赤ちゃんのレミー、一般公開となる
カナダ・トロント動物園の赤ちゃんの命名候補の一つに対してイヌイットから疑問の声上がる
カナダ・トロント動物園の赤ちゃんの名前が 「ハンフリー」 に決まる ~ 赤ちゃん自らが行った除幕式
カナダ・トロント動物園のハンフリーが順調に生後5か月が経過 ~ オーロラお母さんにとっての正念場
by polarbearmaniac | 2014-06-12 23:45 | Polarbearology

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