街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園でのシークーとネヌ、ヌノの同居 ~ ドキュメンタリー番組より

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イルカお母さんとネヌ、ヌノの双子 Photo(C)Explore.org
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シークー Photo(C)Explore.org

デンマーク・コリンのスカンジナヴィア野生動物公園 (Skandinavisk Dyrepark) でイルカお母さんから2011年11月22日に誕生し人工哺育で育てられた雄のシークー (Siku)、そして翌年の2012年11月21日に同じイルカお母さんから誕生し、そして母乳でイルカお母さんに育てられた双子である雄のネヌ (Nanu) と雌のヌノ (Nuno) については今まで数多くの投稿を行ってきました。 実は今月6月に入ってデンマークのテレビ局であるTV2が、このスカンジナヴィア野生動物公園のシークー、イルカお母さん、ネヌ、ヌノについて二回にわたってドキュメンタリー番組 「シークーと双子たち (“Siku og tvillingerne”)」 をデンマーク国内に放送しました。 これを視聴してみたところ非常に素晴らしい番組で私は大いに堪能しましたので、是非これをご紹介いたしたいと思います。 これは必見の映像だと申し上げてよいでしょう。 私はPart 1 と Part 2 をそれぞれ3回も見てしまったほどです。 まず、このドキュメンタリー番組の放送前に予告編として報道された短い映像をご覧いただきたく思います。 音声はon に設定してください。



まずPart 1 ですが、これはイルカお母さんの2011年と2012年の二回の出産での赤ちゃんの成長を追ったものです。 多くが初めて見る映像であり、そして非常に興味深いものですが、とりわけそのなかでも興味深かったのは、人工哺育されて成長したシークーの「適応化 (Socialization)」の試みとして雌のスミラと同居をさせるシーンですが、この二頭の出会いの様子です。 それからイルカお母さんを双子の赤ちゃんのネヌとヌノから一時引き離し、そしてスタッフが赤ちゃんの予防注射や性別判定などを行おうというシーンで、油断しているうちに閉じ込められてしまったイルカお母さんが興奮して狂ったように扉を叩くシーン、そして解放されたイルカお母さんが走って双子の赤ちゃんのもとに向かうシーンです。 以下の映像がこのPart 1 (約28分)です。



さて、次のPart 2 ですが、これは実に興味深い試みがなされたことが映像で明らかにされています。 それは、人工哺育で育てられたシークーと一歳年下の双子のネヌとヌノを同居させるという試みです。当然イルカお母さんもそこにいるわけですが、イルカお母さんは人工哺育されたシークーが自分の息子であるなどとは認識できないわけで、彼女にとってみれば大事なのは双子のネヌとヌノだけです。 ネヌとヌノはシークーに対して恐る恐るではあれ興味があるわけですが、イルカお母さんはシークーを警戒しており、「あんたいったい何なのよ!」 という感じでシークーを追い払うシーンが何回もあります。 シークーはまだ二歳半とはいえ雄ですからイルカお母さんと遜色のないほど体が大きくなっています。 この同居は考え方によっては非常に危険なわけですが、スカンジナヴィア野生動物公園のラルセン園長は果敢に同居を試みたわけです。 これはシークーの「適応化 (Socialization)」の最終段階の試みという意味付けなのだろうと思います。 しかしやがてシークーは孤立してしまったようです。 イルカお母さんはシークーの存在など無視してネヌとヌノの双子に平然と授乳を行います。 この授乳シーンにご注目下さい。向かって右側、つまりイルカお母さんの左乳を吸っているほうが体の大きいわけで、これが雄のネヌでしょう。 つまり、 「性別の異なる双子の場合、雄(オス)の赤ちゃんは母親の左乳を吸い、雌(メス)の赤ちゃんは右乳を吸う」 という以前からの私の仮説の結論はここでも依然として維持されていることが示されたように思います。 それから給餌のシーンではラルセン園長は必ず名前を呼んでから肉を投げ与えていますが、これはわかり易くて素晴らしいことだと思います。 ここでもイルカお母さんはシークーを威嚇しており、シークーは走って逃げています。 やはりシークーは孤立してしまいますが、まあこれはしょうがないでしょう。 イルカお母さんにしてみれば自分の子供であるネヌとヌノを守ろうということであり、彼女はシークーも自分の子供であることなど到底理解していないわけです。 最後のシーンですが、私の眼にはやはりシークーは寂しそうに見えます。 人工哺育の悲しさというものさえ感じてしまいます。 以下の映像がこのPart 2 (約28分)です。



広くて環境の良いこのスカンジナヴィア野生動物公園は広大な面積と環境の良さ、寒冷な気候などというものと同時に、このラルセン園長の深い見識によって、おそらく世界の動物園としてはホッキョクグマの飼育に関して最も優れた施設といって過言ではないでしょう。 まったくうらやましい話です。  ここまでくれば、もうエンリッチメントのためのおもちゃなどは全く不要で、そういう発想すら全く出てこないということです。 比喩としては不適格かもしれませんが、ホッキョクグマ飼育施設が「マニトバ基準」をクリアするということは、サッカーで言えば代表チームがワールドカップ本大会に出場することと同じレベルでしょう。 ところがこのスカンジナヴィア野生動物公園は、ワールドカップ本大会の決勝戦に毎回出場するというレベルです。 決勝戦の相手は多分、スコットランドのハイランド野生公園だろうと思いますが、園長さんの見識の分だけスカンジナヴィア野生動物公園が優勢でしょう。 今後はアジア出場枠が減らされるであろうことを考えれば日本代表(つまり日本の動物園)は少なくともワールドカップ本大会に出場(「マニトバ基準」クリア)だけでもしなければなりません。 本大会に代表チームが出場しませんと、サポーターが試合後のゴミ拾いをすることができません。

(*追記 - 余談になりますが、世界から賞賛されているかのように報じられているあの行為は、それがたとえ善意であっても実は通常はやってはいけない行為です。 何故やってはいけないかということの理由は日本の外に出てある程度長く暮らせば、なるほどとわかることで、それをあえて説明すべきものではないと思います。 人が説明すべき性格のものではありません。 私は若かりしときは欧州の歴史のある有名なコンサートホールやオペラハウスで休憩時間中に飲んだ空のシャンペングラスをカウンターに戻しに行っていましたが、そうする人々は非常に稀でした。 ですから休憩時間が終了するときには客の飲んだ空のグラスがテーブルに無造作にたくさん放置されるわけです。 欧州では相当のレベルの客層が集まるこういった場所で、日本では決してありえない非常に醜いと思われる光景を目にしたわけでした。 しかし年齢を重ねてみて初めて、飲み終わった空のグラスはカウンターに戻さずそのまま放置するのが実は正しいとやっと理解しました。 それは何も「片づける人の仕事を奪う」 という理由からでは必ずしもありません。 これ以上は述べません。 欧州ではいろいろと本には書いていないことを勉強させてもらいました。 非常に極端に、そして抽象的に言えばサッカーの日本代表が常にワールドカップでベスト4に入るほどの実力が備わったときにはサポーターはあれをやらなくなっているでしょう。 それは日本が内向きの習慣や特異な因習を捨て、そして非常に特殊な閉じた社会であることを止めた時だろうと思います。 そうなった時に初めて日本代表のワールドカップ優勝の可能性も出てくるでしょう。 サポーターが試合後にゴミ拾いをしている間は優勝は無理というものです。)

さて、ここでこのシークーとネヌ、ヌノ、そしてイルカお母さんの一緒に暮らしている飼育場のライブカメラの映像を再度ご紹介しておきます。 右下に赤く Live と表示されている場合はライブ映像です。 欧州中部時間の午後2時から4時まで(現在は夏時間が採用されていますので日本時間では午後9時から11時まで)がライブ映像です。 それ以外の時間帯は前日のハイライトが配信されています。 ノヴォシビルスク動物園のゲルダ親子のライブ映像もすごいですが、このスカンジナヴィア野生動物公園からの映像も、かなりなものです。



シークーは少なくともネヌ、ヌノとはうまくいっているようには見えます。

(資料)
TV 2 | ØSTJYLLAND (Siku og tvillingerne)
TV 2 | ØSTJYLLAND (Jun.9 2014 - Siku og tvillingerne 1:2)
TV 2 | ØSTJYLLAND (Jun.16 2014 - Siku og tvillingerne 2:2)

(過去関連投稿)
(*以下、シークー関連)
デンマーク・東ユトランドのスカンジナヴィア野生動物公園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生!
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園で人工哺育されている赤ちゃんの映像
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園のシークーの生後32日目の映像
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園のシークーの報道映像
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園で人工哺育されているシークーの生後66日目の映像が公開
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園の赤ちゃん、シークーが遂に屋外へ
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園の赤ちゃん、シークーの戸外初登場の映像
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園の赤ちゃん、シークーが飼育場に登場
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園の赤ちゃん、シークーのライブカメラ映像、遂に公開開始!
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園の赤ちゃん、シークーのライブ映像ハイライト
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園の赤ちゃん、シークーのライブ映像ハイライト (2)
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園の赤ちゃん、シークーのライブ映像ハイライト (3)
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園の赤ちゃん、シークーのライブ映像ハイライト (4)
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園の赤ちゃん、シークーのライブ映像ハイライト (5)
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園の赤ちゃん、シークーのライブ映像ハイライト (6)
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園の赤ちゃん、シークーのライブ映像ハイライト (7)
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園、シークーのライブ映像ハイライト (8)
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園、シークーのライブ映像ハイライト (9)
デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園、シークーのライブ映像ハイライト (10) ~ 満一歳となる
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園で進行中の2つのドラマ ~ イルカ親子、そしてシークー
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園でのシークーの 「適応化 (Socialization)」 が順調に進行中
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園のスミラ逝く ~ 「適応化 (Socialization)」 への大きな功績

(*以下、ネヌとヌノの双子関連)
デンマーク ・ コリンのスカンジナヴィア野生動物公園でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生!
デンマーク のスカンジナヴィア野生動物公園で誕生の双子の赤ちゃんの産室内映像を地元TV局が公開
デンマークのスカンジナヴィア野生動物公園で誕生の双子の赤ちゃんの生後70日目の映像が公開
デンマークのスカンジナヴィア野生動物公園で誕生の双子の赤ちゃん、産室内で歩行する ~ 生後74日目の映像
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園で誕生の双子の赤ちゃん、生後79日目の映像が公開
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園で誕生の双子の赤ちゃん、生後87日目の映像が公開
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園で誕生の双子の赤ちゃん、遂に戸外へ!
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園で昨年11月誕生の双子の赤ちゃんの近況 ~ 凛々しい顔立ち
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園で春の陽光を浴びるイルカお母さんと、お行儀の良い双子ちゃん
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園の双子の赤ちゃんの近況を伝える地元のTV局の番組
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園で進行中の2つのドラマ ~ イルカ親子、そしてシークー
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園でのイルカお母さんと双子の赤ちゃんのライブ映像の配信開始
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園の双子の赤ちゃんたちの近況
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園のホッキョクグマたちの織りなす多彩なドラマ
デンマーク・コリンのスカンジナヴィア野生動物公園の双子の成長 ~ お行儀の良さは環境の良さが原因?
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園のイルカお母さんの双子の性別と名前決定 ~ 雄がネヌ、雌はヌノ
by polarbearmaniac | 2014-06-24 23:45 | Polarbearology

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