街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア南部・ロストフ動物園、サーカス出身の12歳の雄、イョシの注目される今後

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イョシ Photo: youtube

ロシア南部・ドン川下流にある都市であるロストフ・ナ・ドヌ (Росто́в-на-Дону́) の動物園で飼育されているサーカス出身の12歳の雄のホッキョクグマであるイョシについては、かつて彼がサンクトペテルブルクのレニングラード動物園に別れ告げてこのロストフ動物園に移動してきた様子などを投稿してきました(過去関連投稿参照)。 最近彼について話題にしたのは上野動物園のデアのパートナー候補として彼はどうだろうかということを述べた投稿でした(「女神デアのパートナー問題の推移や如何 ~ 候補はイコロかキロルかイョシか?」)。 実際のところその来日の実現性は乏しいことは百も承知で、このイョシの存在について注意を喚起したいということでもあったわけです。 私は2010年の5月と7月にサンクトペテルブルクでこのイョシに会っていますが、本当に狭い獣舎に小さな形ばかりのプールのある場所に押し込められていて非常に気の毒に思いました。 そういったサンクトペテルブルク時代のイョシの様子について映像を下にご紹介しておきます。 冒頭はCMです。

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次にロストフ動物園でのイョシの姿も見ておきましょう。



さて、このロストフ動物園における現在のイョシの立場ですが、これはなかなか微妙なところがあります。 ロストフ動物園がホッキョクグマの幼年個体のペアを求めた過程でキエフ動物園による詐欺の被害者になってしまった件は以前に「ロシア南部・ロストフ動物園とウクライナ・キエフ動物園との間の紛争 ~ 『ホッキョクグマ詐欺』事件の概要」という投稿でご紹介しています。 結局のところロストフ動物園はこのホッキョクグマの幼年個体のペアの入手のためにモスクワ動物園に泣きついたわけですが、結果的に入手できたのは2012年11月にチェコ・ブルノ動物園で誕生した雌のコメタだけだったわけです。 ロストフ動物園はこのような状況になるに至ってコメタのパートナーとなるのはこの現在12歳のイョシ、そしてペルミ動物園から5年間という期限付きで預かっている11歳の雄のテルペイなのだと急に言い始めたわけで、これはどう考えてもおかしな話です。
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イョシとテルペイ Photo(C)Комсомольская правда

モスクワ動物園はロシア、ウクライナ、チェコにまたがるホッキョクグマなどの複数の動物の交換スキームを構築して「EARAZAのホッキョクグマ繁殖計画」の名のもと、自園の手持ちではないブルノ動物園の雌の幼年個体であるコメタをロストフ動物園に送りこんだものの、雄の幼年個体については現時点ではロストフ動物園のために調達できていないということです。 「アンデルマ/ウスラーダ系」であるコメタにはこの血統以外の幼年個体をパートナーとすることが望まれるわけですが、そういう雄の幼年個体をロシア国内に見つけることは現時点では不可能であり、それに苦慮しているとみて間違いないでしょう。 ロストフ動物園はモスクワ動物園とは非常に友好的な関係であり、「ペアとして送られてこないのは契約違反である」という主張もできないというわけでしょう。 そのために急遽、イョシやテルペイがコメタの将来のパートナー候補なのだと言いださざるを得なくなったというわけです。 しかしどうでしょうか、私はモスクワ動物園はそのうちに出現するであろう野生の雄の孤児個体を連邦政府の自然管理局 (RPN - Федеральная служба по надзору в сфере природопользования) にかけあってロストフ動物園で保護・飼育させようという考えなのだろうと思っています。

仮にそうなった場合このイョシをどうするかですが、モスクワ動物園で引き取って、ウムカ(ウンタイ)が死亡したためにパートナーを失ったムルマのパートナーにするということも考えられます。 というのもこのイョシは野生出身でムルマのパートナーにすることに血統面では優位性があるからです。 しかしイョシの権利は野生出身個体とはいえ依然としてサンクトペテルブルクのサーカス団にあり連邦政府の自然管理局にあるわけではありませんから他の動物園がサーカス団と交渉してこれを入手することは不可能ではないというわけです。 ただし、男鹿水族館に訴えられ敗訴した日本の大手動物商のロシア国内におけるホッキョクグマ事情の理解のお粗末さなどから考えれば、このイョシの入手交渉などを期待するには能力不足は明らかでしょう。

さて、ロストフ動物園はこのイョシを今後どうしようというのでしょうか。 ロストフ動物園でのイョシの今後、そしてはたして同園はモスクワ動物園から雄のホッキョクグマの幼年個体を入手できるのかについては注目したいところです。 ロシアの動物園における台風の目はこのロストフ動物園だろうと思います。

(資料)
Комсомольская правда (Apr.5 2014 - В Ростовском аэропорту встретили белую медведицу из Чехии)

(過去関連投稿)
(*イョシ関連)
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のイョシ、ロストフ動物園に引き取られる
サンクトペテルブルクに別れを告げるイョシ ~ サーカス出身のホッキョクグマの境遇
ロシア・サンクトペテルブルクのイョシ、新天地ロストフへ出発
ロシア南部 ロストフ・ナ・ドヌのロストフ動物園のイョシ ~ 安住の地での近況
ロシア南部・ロストフ動物園のイョシ、安住の地で元気に暮らす ~ ロストフ動物園の奇妙な計画
(*テルペイ関連)
ロシア・ペルミ動物園におけるセリクとユムカの近況 ~ テルペイがロストフ動物園に移動か?
ロシア・ウラル地方 ペルミ動物園のテルペイがロシア南部 ドン河下流のロストフ動物園に無事到着
ロシア南部 ・ ドン河下流のロストフ動物園に移動したテルペイの近況 ~ 飼育員さんに惚れ込まれる
(*コメタ関連)
ロシア南部・ロストフ動物園とウクライナ・キエフ動物園との間の紛争 ~ 「ホッキョクグマ詐欺」事件の概要
チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシア・ロストフ動物園へ ~ ブルノ、モスクワ、ロストフの巧妙な三角関係
チェコ・ブルノ動物園の双子の雄のナヌクがウクライナ・ムィコラーイウ動物園へ移動か?
チェコ・ブルノ動物園のコメタのロシア・ロストフ動物園への移動が大幅に延期 ~ 複雑な背景を読み解く
チェコ・ブルノ動物園のコメタとナヌクの将来への不安 ~ 忍び寄るロシアとウクライナの紛争の暗い影
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チェコ・ブルノ動物園のコメタがロシアのロストフ・ナ・ドヌに無事到着 ~ 早速ロストフ動物園へ
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ロシア・ロストフ動物園に移動したコメタを想い続けるブルノのファン ~ 残されたコーラお母さんとナヌク
by polarbearmaniac | 2014-06-25 23:45 | Polarbearology

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