街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ベルリン動物園の故クヌートのパートナーとして一時内定していたエヴァ ~ 当時のニュース映像より

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エヴァ Photo(C)BN DeStem

オランダ・アイントホーフェンの地元紙のサイトがランチタイムに過去にあった地元のニュースの映像を自身のアーカイヴから再び紹介するというシリーズを行っています。 たまたま先週の26日に過去のニュース映像としてホッキョクグマが登場していましたのでご紹介しておきます。 その映像は2008年6月26日のニュース (“Het Nuenense vriendinnetje van ijsbeer Knut”) で、登場しているには現在はスウェーデンのオルサ・グレンクリット (Orsa Grönklitt) のベアパーク (Björnpark) で暮らしているエヴァ (Ewa)です。 

言うまでもなくこのエヴァのスウェーデンでの現在のパートナーはあのヴィルベア (Wilbär) なのですが、実はエヴァは当初あのベルリン動物園のクヌートのパートナーとなるはずだったわけです。 このあたりのことはこのブログの開設前のことですので、ここで簡単に当時の事情をまとめておきたいと思います。
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クヌートとトーマス・デルフラインさん Photo(C)ZUMA Press

2006年12月5日にベルリン動物園でサーカス出身のトスカから生まれ、その後は飼育担当のトーマス・デルフラインさんに人工哺育で育てられたクヌートですが、翌2008年の7月から単独での展示となり彼を目当てに以前にも増して多くの来園者がベルリン動物園を訪れたわけでした。 実は2008年の春頃からベルリン動物園の内部ではこのクヌートを他園に移動させた方が良いという意見が一部で出始めたていたわけでした。その理由としてはクヌートは飼育担当のトーマス・デルフラインさんに慣れ過ぎていてその姿を求める態度を見せ続けていたということと、多くの来園者に見られることに慣れ過ぎてしまい周囲に人がいないと鳴き声を上げるという状態になっていたために、単独生活に慣れさせる必要があると考えられたわけでした。 そういったこともあって2008年の6月25日にEAZAのコーディネーターの調整もあり、このクヌートをスウェーデンのオルサ・グレンクリットに移動させ、そしてそこで彼のパートナーはオランダ・レネンのアウヴェハンス動物園で2005年11月にフギースお母さんが産んだ三つ子の一頭であるエヴァとなるということが発表されたわけでした。 この発表のあったときにエヴァはオランダのヌエネン(ニューネン)にある「動物帝国 (Dierenrijk)」で飼育されていたわけですが、今回アイントホーフェンの地元紙のサイトが過去のアーカイブから紹介した映像はこの発表のあった時の「動物帝国」におけるエヴァの姿です。 それをご覧いただきましょう。 飼育員さんが 「これがあなたのパートナーです。」 とクヌートの写真をエヴァに見せていますが、エヴァはもちろん何のことやら全く理解していません。


しかしこの話は結局実現しなかったわけです。それは2008年の翌7月になってクヌートの父親であるラルスの権利を有していたノイミュンスター動物園がベルリン動物園に対してクヌートの存在によってあげた利益の支払いを求めて訴訟を提起したからでした。 そもそも契約ではラルスの第一子の権利はノイミュンスター動物園にあるわけで、クヌートの権利自体が全てノイミュンスター動物園にあるわけですからノイミュンスター動物園がこういう訴訟をおこしても何ら不思議ではないわけです。 こういった状況ではクヌートのスウェーデンへの移動の話は実現するはずもなく、ベルリン動物園は引き続きクヌートを飼育する意思のあることを明らかにし、そしてベルリン市長もクヌートがベルリンに留まることを強く支持したわけです。 これで結局クヌートはベルリンに留まることになり、オランダのエヴァのスウェーデン行きも中止となったわけでした。 こういった騒動の中でクヌートの育ての親であったトーマス・デルフラインさんは2008年の9月に亡くなっています。

ベルリン動物園は翌2009年の夏にノイミュンスター動物園と和解し、クヌートの権利をノイミュンスター動物園より取得し43万ユーロの和解金(補償金)をノイミュンスター動物園に支払うことで決着がついたわけです。そして2009年の9月になってクヌートの遊び友達としてベルリン動物園に約1年の予定でやってきたのが現在あのノビとネラの育児中であるミュンヘン・ヘラブルン動物園のジョヴァンナだったということです。

オランダのエヴァのほうは2009年5月になってようやくスウェーデンのオルサ・グレンクリットに移動し彼女のパートナーとなったのはドイツ・シュトゥットガルトのヴィルヘルマ動物園 (Wilhelma) で2007年12月10日にコリンナお母さんから生まれたヴィルベアだったとおうわけです。 このヴィルベアについては以前の投稿である 「スウェーデン、オルサ・グレンクリット、ベアパークのヴィルベア、静かに 『偉大なる父』となる日を待つ」をご参照下さい。

ともかくも欧州における壮大なホッキョクグマのドラマだったということです。

(資料)
Eindhovens Dagblad (Jun.26 2014 - ED Lunchvideo: het Nuenense vriendinnetje van ijsbeer Knut)
BN DeStem (Jun.27 2008 - Ewa, vriendinnetje voor Knut)
Der Spiegel online International (Knut - Related articles, background features and opinions about this topic)

(過去関連投稿)
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スウェーデン、オルサ・グレンクリット、ベアパークのヴィルベア、静かに 「偉大なる父」 となる日を待つ
by polarbearmaniac | 2014-07-01 23:45 | Polarbearology

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