街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

プロフィールを見る

ホッキョクグマの色彩嗜好性を考える ~ 無彩色系、寒色系を好み、暖色系は苦手か?

a0151913_20274940.jpg
FIFAワールドカップ準決勝の対ブラジル戦でのドイツ代表の勝利を「予言」するヴッパータール動物園のアノーリ
Photo(C)Uwe Schinkel /Westdeutsche Zeitung

先月、「ドイツ・ヴッパータール動物園のアノーリがFIFAワールドカップで『予言ダコのパウル君 』の後継となるか」 という投稿でヴッパータール動物園のアノーリがFIFAワールドカップのドイツ代表チームの試合の勝敗の「予言」に挑戦したことを御紹介しています。 この時のアノーリの「予言」はドイツ勝利でしたが結果的にはそれは当たっていたことになります。 その「予言」のシーンを再度ご紹介しておきましょう。



実は今週月曜日に現地の8日に行われた準決勝の対ブラジル戦の「予言」にアノーリは同じような方法で挑戦しており、アノーリの「予言」はドイツ勝利だったそうで、これも当たったことになります。 こういった「予言」は実にばかばかしい単なる「お遊び」だと思うわけですが、しかし考えてみたいこともあるわけです。 本投稿はあくまで試論ということでご理解下さい。

今回のFIFAワールドカップの試合結果の「予言」には国旗が用いられています。 私はこのアノーリの「予言」結果にはホッキョクグマには色の好みがあるために生じているのではないかと考えてみたく思うわけです。 そうなると国旗の色が問題です。 まず、最初の「予言」でドイツ代表の対戦相手だったポルトガルの国旗(A)、次に今回の「予言」でドイツ代表の対戦相手だったブラジルの国旗(B)、そしてドイツの国旗(C)です。

(A)ポルトガル国旗
a0151913_20384224.jpg

(B)ブラジル国旗
a0151913_20385364.jpg

(C)ドイツ国旗
a0151913_2039342.jpg

アノーリは(A)(C)が与えられると(C)を選択し、(B)(C)が与えられるとやはり(C)を選択したわけです。 では(A)(B)(C)を比較してみて何が言えるでしょうか? (A)(B)にはなくて(C)だけにある色、それは黒です。 さらに、(A)(B)にあって(C)にはない色、それは緑です。 非常に乱暴で粗雑であることは十分承知の上で最初の仮説をこう提示してみましょう、それは 「ホッキョクグマは黒を好み、緑を避ける」という仮説です。 これが本当に正しいのかを考えてみることによってホッキョクグマには色彩嗜好性があるの か否かを考えていきたいと思います。

おっと、そもそもこれを考えてみる前に、ホッキョクグマの視力は色彩を認識できるのかということがまず問題です。 これについてはホッキョクグマの研究者としては世界の第一人者の一人であるアンドリュー・ドローシェー (Andrew E. Derocher) 氏の著作である “Polar Bears: A Complete Guide to Their Biology and Behavior” の記述においてホッキョクグマは人間ほどではないにせよ色彩の認識能力があることが示されています (“Polar bears can see color but not as well as humans.” )。 ところがこのドローシェー氏の著作でさらに非常に注目せねばならない記述は以下の部分です。 これはドローシェー氏のカナダでのフィールドワークの体験を語った部分です。 引用します。

“My first inking of polar bear color vision came while conduct
ing field studies in western Hudson Bay. I was wearing a
bright fluorescent orange rain jacket to help the pilot find me
on the tundra (this was before the days of GPS). One rainy
day when I approached 8-month-old cubs (their mother was
drugged), I noted that they were greatly agitated and bolted
when I approached. Sensing that something was amiss,
I removed my new jacket. I could now approach the cubs.”


以下、このドローシェー氏の著作の関連ページをご紹介しておきます。 右側をスクロールしていただくと関連部分全てを読むことができます。




ドローシェー氏がオレンジ色のジャケットを着ているうちはホッキョクグマはドローシェー氏の接近を大いに嫌ったわけです。 こういったことから、ホッキョクグマはオレンジ色が嫌いである、あるいは避けたいと思っているのではないかと解釈できるように思います。 これを何故かと考えてみれば、それはオレンジ色は彼らの暮らす極地には基本的には存在しない色だからではないでしょうか。 こういった国旗の色の問題とオレンジ色のジャケットの問題を重ね合わせて考えてみますと、最初の 「ホッキョクグマは黒を好み、緑を避ける」 という仮説からさらに一歩進めて以下のような仮説を立てることは可能です。 すなわち、 「ホッキョクグマは無彩色系や寒色系を好み暖色系は好まない」 という仮説です。
a0151913_2151439.jpg
a0151913_21172961.jpg
a0151913_21184139.jpg
先に挙げた三つの国旗のうち(A)(B)はあきらかに暖色系です。 (C)は微妙であり暖色系の部分が多いとも言えますが、黒(無彩色系) が存在しているというのが注目すべき点です。 そうなると、暖色系であってもそれ以上に好きな色が部分的にあればホッキョクグマはそれを嫌わないといってほうがよいでしょうか。 となれば、「ホッキョクグマの好きな色は黒である」 ということが言えないわけではないように思われます。
a0151913_21295251.jpg
ポロロ (2014年3月15日撮影 於 とくしま動物園)

身近な例を思い出してみれば、あのとくしま動物園のポロロは以前から黒い蓋が大好きですが、あの蓋というのはただの板のようなもので他のおもちゃと比較してたいしておもしろいものではないように思うのですが、しかしポロロはあれが好きなようです。 最近ホッキョウグマに与えられるおもちゃとしてオレンジ色のブイとか黄色いガス管がありますが、彼らはそれらの色そのものは好みではないが、おもちゃとしては楽しいのであれらで遊んでいるのだという解釈を私はとりたいと思います。 仮にオレンジ色(暖色系)のブイと黒(無彩色系)のブイ、あるいは黄色いガス管と黒いガス管を一緒に与えたとすれば、彼らは黒い方(無彩色系)を選択して遊ぶのではないかと私は考えています。 黒い蓋はおもちゃとしてはつまらないものなのに、色が黒いだけでポロロは喜んでいるという解釈をとりたいと思うわけです。

非常に少ない事例でホッキョクグマの色彩嗜好性を考えるのは非常に粗雑で危険ではありますが、しかし彼らの本来の生息地は暖色系に満ち溢れている熱帯のアフリカなどとは違い、基本的に無彩色系(雪や氷)や寒色系(海水)の世界です。 ホッキョクグマが主食としているアザラシも体は無彩色系です。 ですから、ホッキョクグマは本能的に暖色系は好まないという理屈が成立することは無理ではないだろうと私は考えています。

今回のテーマのホッキョクグマの色彩嗜好性とか、性別の異なる双子の授乳時の位置関係とか、ホッキョクグマのバランス感覚などは、少なくとも今までホッキョクグマの研究者の著作や研究報告でそれに関する記述を見た記憶がありません。 こういった私の仮説が本当に成立するかどうかは別として 今まで研究者の触れていないテーマについても今後は自分で掘り起こして自ら仮説を立てつつ問題意識を持って取り組んでいきたいと思っています。 他人のやらないことをやり、言わないことを言いたいというのがこのブログ開設者の信条です。

(*追記 - 今後動物園にホッキョクグマに会いに行くときは暖色系を避けた服装をしていったほうがいいかもしれないと私は真面目に考え始めています。 少なくともそのほうが彼らの素晴らしい表情を写真に撮れるかもしれないとも思うわけです。 これは少なくとも私の仮説が正しいとすればの話ですが。) 

(資料)
Westdeutsche Zeitung (Jul.8 2014 - WM-Orakel: Anori tippt auf Deutschland)
“Polar Bears: A Complete Guide to Their Biology and Behavior” (by Andrew E. Derocher)

(過去関連投稿)
ドイツ・ヴッパータール動物園のアノーリがFIFAワールドカップで「予言ダコのパウル君」の後継となるか
by polarbearmaniac | 2014-07-10 01:00 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
エッセイ、コラム
街角にて
未分類

最新の記事

ロシア・西シベリア、セヴェル..
at 2017-06-22 23:00
ロシア・中部シベリアに記録的..
at 2017-06-21 18:30
アメリカ・フィラデルフィア動..
at 2017-06-20 23:50
デンマーク・オールボー動物園..
at 2017-06-19 22:00
オーストラリア・ゴールドコー..
at 2017-06-19 20:30
モスクワ動物園・ヴォロコラム..
at 2017-06-18 21:00
フランス・ミュルーズ動物園の..
at 2017-06-17 23:00
エストニア・タリン動物園の雄..
at 2017-06-16 23:55
ロシア・西シベリア、ボリシェ..
at 2017-06-15 23:55
ロシア・ウラル地方 ペルミ動..
at 2017-06-14 23:55

以前の記事

2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ライフログ


人生と運命 1


スターリン―青春と革命の時代


モスクワは本のゆりかご


私のモスクワ、心の記憶


自壊する帝国 (新潮文庫)


甦るロシア帝国 (文春文庫)


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


ロシア 春のソナタ、秋のワルツ-1999-21st


それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影


ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫)


わがユダヤ・ドイツ・ポーランド―マルセル・ライヒ=ラニツキ自伝


ベルリン戦争 (朝日選書)


Hof――ベルリンの記憶


カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺


北京烈烈―文化大革命とは何であったか (講談社学術文庫)


慟哭の通州――昭和十二年夏の虐殺事件


主題と変奏―ブルーノ・ワルター回想録 (1965年)


藤田嗣治 異邦人の生涯


Barle's Story: One Polar Bear's Amazing Recovery from Life As a Circus Act


Hotel Adlon: Das Berliner Hotel, in dem die grosse Welt zu Gast war


Ein seltsamer Mann


Alma Rose: Vienna to Auschwitz


St Petersburg: A Cultural History


Gulag


The Guest from the Future: Anna Akhmatova and Isaiah Berlin