街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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現在日本国内最高齢のホッキョクグマはどの個体か? ~ カアチャン、ユキ、ナナの三候補を比較する

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カアチャン (2014年6月21日撮影 於 カドリードミニオン)
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ユキ (2014年7月5日撮影 於 周南市徳山動物園)
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ナナ (2014年7月12日撮影 於 仙台市八木山動物公園)

現在日本で飼育されているホッキョクグマで最高齢は、いったいホッキョクグマなのかということを確認しておきましょう。 最初にこう申し上げるのもおかしな話なのですが、実は本当のところはわからないということです。 もう4年前に旭山動物園のコユキさんが亡くなったニュースを私は旅先のモスクワで知りましたが、あの当時はコユキさんが当時日本で最高齢であったことは誰もが周知の事実だったわけですが、現在では「日本最高齢はどのホッキョクグマなのか」を我々はあまり意識していないように思います。 今回はこのことを少し整理しておきたいと考えます。 候補としては三頭の雌がいるわけです。 それは、

① カアチャン (カドリードミニオン)
② ユキ (周南市徳山動物園)
③ ナナ (仙台市八木山動物公園)


です。 ここ数週間にわたって私は立て続けにこの三頭と再会したわけで、そのときのことも交えて整理しておきたいと思います。  まず、それぞれの園が彼女たちのbioについて公にしている情報をあげておきます。

① 「1985年に来園し」、「ホッキョクグマのカアチャンは、推定34歳以上の日本一高齢のクマの一頭です。」 (ホッキョクグマ舎前掲示板)
② 「昭和61年(*注 – 1986年)4月9日来園」 (ホッキョクグマ舎前掲示板)
③ 「1984年12月15日生」 (ホッキョクグマ舎前掲示)

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①カアチャン (2014年6月21日撮影 於 カドリードミニオン)

まず①カアチャンです。 「1985年に来園し」についてですが、これは私の資料によれは1985年12月に来園したことになっています。 カアチャンは(カナダの)野生出身ですから、前年1984年暮れに誕生し、翌年1985年の春以降に野生孤児として保護され、そして同年に日本に売られたと考えるのが最も自然ではありますが、しかしカドリードミニオンが「ホッキョクグマのカアチャンは、推定34歳以上の日本一高齢のクマの一頭です。」 と言うからにはカアチャンの誕生は1980年以前であることを示す何かの資料が存在している可能性があるでしょう。 つまり、カアチャンが1985年(12月)に来園した時にはカアチャンはすでに4~5歳になっていたということを意味するわけです。 となれば、カアチャンは現在すでに34歳にはなっているだろうということを意味します。 しかし、ここで先日の投稿、「カアチャン、その謎に満ちた出自、そして実年齢の怪 ~ "Ursus Maritimus arcānus"」を再度是非ご参照頂きたいのですが、少なくとも私の経験上では私の眼でカアチャンがすでに34歳(以上)になっているとは到底見えないということです。 さらにここで注目すべき事実に目を向けねばならないのですが、2010年10月3日にカアチャンのパートナーだったトウチャンが亡くなったときの報道を以前の投稿である「カドリー・ドミニオンのトウチャン逝く...」をご参照頂きたいのですが、その時にトウチャンは1980年9月に来園し死亡したときは推定30~31歳だったと報じられていることです。 つまり、仮にトウチャンが現在も生存していたとすれば、現時点でまさに「推定34歳以上の日本一高齢のクマの一頭」 に該当することになります。 トウチャンの来園は1980年9月、カアチャンの来園は1985年12月と5年の開きがあるにもかかわらず、カドリードミニオンはカアチャンの現在の年齢を、トウチャンが現在も生きていたと仮定した場合の現在のトウチャンの年齢と取り違えているためにカアチャンは「推定34歳以上」であると言っているのではないか...私はそう考えています。 少なくともそう考えると話の辻褄は合うことになります。 それを踏まえたうえで、先日の私のカドリードミニオン訪問記でも書きましたが、私はこのカアチャンは実は1983年暮れの生まれではないかと睨んでいるわけですが、確実な根拠というものはなく、周辺情報による単なる推論にすぎませんので、ここでそれを繰り返して述べることはしないでおきます。 一般的。常識的に言えることとしては、カアチャンは1984年暮れの生まれである確率が高いということでしょう。 つまりカアチャンは現在29歳だと考えておいてよいだろうということです。

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②ユキ (2014年7月5日撮影 於 周南市徳山動物園)

次に②ユキです。 これについては先日の「美しく年齢を重ねたユキ、その出自の奇妙な謎に迫る ~ カアチャン、ミッキー、謎の死亡個体X を結ぶ線」を再度是非ご参照頂きたいのですが、ユキも(カナダの)野生個体であり、1986年4月9日来園という日付から考えればユキは1984年暮れの生まれであることの確率は極めて高いだろうということです。 つまりユキも現在29歳だと考えておいてよいだろうということです。

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③ナナ (2014年7月12日撮影 於 仙台市八木山動物公園)

最後に③のナナです。ナナは飼育下の出身で、カナダ・ウィニペグのアシニボイン公園動物園であのデビーから1984年12月15日に誕生したという事実に間違いはありません。 ですからナナも現在29歳ということです。

さて、これをまとめます。 

① カアチャンは推定29歳
② ユキは推定29歳
③ ナナは29歳

ということになるわけです。 となると、この三頭のどれが日本で本当の最高齢なのかは確定不能ということになるわけです。 ただしかしどうも欧米では暗黙の慣例があるらしく(日本もそうでしょうか?)、誕生月日の不明な野生誕生個体と、誕生月日がはっきりしている飼育下誕生の個体の二頭の生年が同じ場合において「最高齢」を語る場合には、飼育下出身の個体に「最高齢」を名乗らせるという慣例のようです。 そうなるとこの①②③のうち飼育下出身はナナだけですから、ナナに日本最高齢を名乗る資格があるということになるでしょう。 そういうことを御存知らしい仙台市八木山動物公園はナナの展示場前に個体紹介の写真の下に 「ナナちゃんは国内最高齢です。」 と、ちゃんと記載しています(下の写真)。 この記載は欧米流(そして日本でも?)ではまさに正しい記述であるということになります。
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さて....では本当のところはどうなのか...これを考えてみましょう。 先日の投稿で私は①カアチャンの生年は実は1983年暮れである可能性を指摘したつもりです。 ②ユキについても私は1983年暮れが本当の生年ではないかと一時考えてみたことがあるのですが、それはどうも成立するのが難しいだろうという考えを現在持っています。 ③についてはこれで間違いありません。 ということは、私は②③よりも①が実のところ一歳年上である可能性を捨てきれないわけですから、真実は①が日本国内最高齢である可能性があると考えるわけです。 ②と③ですが、一般的に野生下のホッキョクグマの誕生月は12月よりも11月が主流で多いらしいということを考慮に入れれば、同じ1984年の誕生とはいっても②のほうが12月に誕生した③よりも誕生日が早い可能性は大きいような気がします。 よってあくまでこれは私の個人的な憶測ですが、本当の誕生の順番は①→②→③ではないかということです。 しかしあくまでも真実は「神のみぞ知る」といったところでしょう。

以上を私なりに以下にまとめます。

① カアチャンは日本最高齢のホッキョクグマではないかと推測できる。
(Kaachan is presumed to be the oldest.)。

② ユキは日本最高齢のホッキョクグマのうちの一頭である。
(Yuki is acknowledged to be one of the oldest.)。

③ ナナは日本最高齢のホッキョクグマである。
(Nana is the oldest.
)。


こういうことではないでしょうか。 ですから実際にどの個体の誕生日が最も早かったかは別の問題として、一般的には仙台のナナが日本国内最高齢のホッキョクグマであるとしておくのが正しいだろうということです。 国内のホッキョクグマの血統管理を担当している旭山動物園も多分そのような見解だろうと思います。 そういったこともあって仙台市八木山動物公園も「ナナちゃんは国内最高齢」 と言い切っているのだろうと思います。

(*追記 - ナナの母親であったあの偉大なるデビーは1966年に野生下で誕生したと推定されていますが、彼女が亡くなったのは2008年11月17日でした。 彼女は1966年の11月に生まれたのか12月に生まれたのかは野生下であるために不明であり、仮に12月に生まれていれば彼女が亡くなった時には正確には42歳ではなく41歳だったことになります。 こういったことによってデビーの高齢生存記録は歴代第二位なのか第三位なのかが完全には確定できないということです。 野生個体の年齢をどう考えるかはなかなか難しい面があるということです。 これについては「高齢のデビーを愛し、慈しみ、送った人々 (下)」という投稿の最後の追記1をご参照下さい。)

(*後記 - その後の調査でカアチャンの生年が1983年であり、そして彼女が国内最高齢であることがわかりました。こちらの投稿をご参照下さい。)

(過去関連投稿)
カドリー・ドミニオンのトウチャン逝く...
カアチャン、その謎に満ちた出自、そして実年齢の怪 ~ "Ursus Maritimus arcānus"
美しく年齢を重ねたユキ、その出自の奇妙な謎に迫る ~ カアチャン、ミッキー、謎の死亡個体X を結ぶ線
29歳となったナナ、その決して色褪せぬ優雅さ ~ 伝説化された偉大なホッキョクグマの娘ここにあり!
by polarbearmaniac | 2014-07-14 23:45 | Polarbearology

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