街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカ・欧州連合からの農産品禁輸で制裁に対抗したロシアの措置がロシア国内の動物園に与える影響

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モスクワ動物園のシモーナ (2013年10月4日撮影 於 モスクワ動物園)

ウクライナの政情の混乱から端を発してアメリカと欧州連合が発動したロシア制裁措置に対してロシアのプーチン大統領が、それらの欧米からの制裁に報復する目的でアメリカやEUからの農産品や食品の輸入を禁止する大統領令に署名しました。 このことによってロシアの動物園の飼料調達に影響が出るであろうことをロシアのモスコフスキー・コムソモーレツ紙 (Московский комсомолец) が8月7日付けの記事で報じています。 同紙が取材したモスクワ動物園の状況について簡単にご紹介しておきます。
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モスクワ動物園のムルマ (2013年10月4日撮影 於 モスクワ動物園)

モスクワ動物園では飼育している動物たちのために果物と野菜については毎日約300キロを調達しているわけですが、これらの多くは主に欧州産であるとのことで、これは動物たちだけでなくモスクワに暮らす人々の嗜好でもあるそうです。スペイン産のパパイアとマンゴーは特にモスクワ動物園に暮らすサルたちの大好物であるそうで、これがロシアに入ってこないということになるとサルたちにとってはいささか困ったことにもなるようです。 ポーランド産のリンゴを好物にしている動物たちもいて、これはロシアの農家では生産されないものだそうで、この調達にも障害となるそうです。 ホッキョクグマに関しては魚とエビの調達に影響があるそうです。 これは多分今までフィンランド産やノルウェー産の魚類をホッキョクグマたちのために調達してきたということなのでしょう。 以前にもご紹介したことがありましたが、ロシアの動物園というのは欧米や日本の動物園よりもはるかに多くの量の魚をホッキョクグマに与えるわけです。 こうして今まで動物たちが好物にしていたものを自国産やトルコ産や南米産のものを代用にするように切り替えていくことが考えられますし、あるいは今まで調達していなかった新しいもの与える試みがなされるだろうとも報じられています。
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レニングラード動物園のウスラーダ (2014年5月4日撮影 於 サンクトペテルブルク、レニングラード動物園)

一方、サンクトペテルブルクのレニングラード動物園について地元のニュースサイトによりますと、レニングラード動物園の動物たちの飼料調達はそのほとんどがロシア国内産であり、今回のロシア政府の禁輸措置によって影響は受けないとレニングラード動物園の広報担当者の発言を報じています。 私の知る限りレニングラード動物園は以前からその台所が苦しく飼料費をかなり節約するために安い国内産のものを調達していたわけで、今回の件についてはこういったことが逆に幸運となったようにも思われます。

いずれにせよ今回の問題は、欧米諸国でソ連が存在していた時代に対ソ連外交を実行していた世代のスタッフが去り、新しい世代が欧米のそれぞれの政権を担うようになってきたためロシアという国がどういう発想をするか、ロシアという国がどう行動するかへの理解ができなくなってしまったことに原因があると私は思っています。 ですから欧米諸国はウクライナにおける危険な民族主義者の存在を軽視し、ウクライナをロシアからの影響から一方的に引き離して西側の勢力範囲に入れることを画策しようとするわけですが、こういうことを行うとロシアがどう反応するかについての理解と予想ができなくなってしまったということでしょう。 例外的なのはドイツのメルケル首相ですが、彼女も最近は他の欧米諸国に引きずられてしまっているわけで、これからこのロシアの問題はロシアのウクライナ侵攻の現実の可能性も含めて予断を許さない状況になるかもしれません。 マスコミの多くは、中国とロシアがアメリカを中心として形成されてきた世界秩序に挑戦しているという理解をしているようですが、私に言わせればそれは中国については正しいかもしれませんがロシアについては正しいとは言えないと考えています。 現在のロシアの反応は、あくまでも歴史的・地理的要因によってロシアが過去から現在に至るまで抱いてきた西欧に対する深い猜疑心と警戒心がああいった形で外に表れてきているというにすぎないと私は考えています。 ソ連時代であっても現在であっても、ロシア人が西欧に感じていることはそう変化してはいないわけです。 例によって定評のあるイギリスのフィナンシャルタイムズ(Financial Times) による今回の措置についての影響に関する分析を聞いてみましょう。





なるほどとは思うものの、表面的な分析のようにも感じます。

(資料)
Московский Комсомолец (Aug,7 2014 - Санкции России ударили по московскому зоопарку: обезьянам придется сесть на диету)
Metro News (Aug.7 2014 - Животные Ленинградского зоопарка питаются местными кормами)
ロシアの声 (Aug.9 2014 - 堅固さが試されるプーチン路線)
by polarbearmaniac | 2014-08-10 06:00 | Polarbearology

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