街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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所有権を持つロシア・クラスノヤルスク動物園の同意無しに他園に移動させられた出張中のセードフ司令官

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セードフ司令官 Photo(C)«Сафари-парк»-Геленджик

実に奇妙で不可解な話です。 ロシアらしいといいますか何か物事が順序だって進行しないことはいくつもあるわけですが、さらに今回の件はそう言ったこと以上に相当にキナ臭い感じがあります。 超マニア向けの話ですので興味のない方は一切無視して下さい。

ロシア・シベリア中部のクラスノヤルスク動物園で飼育されていた11歳の雄のセードフ司令官(Командор Седов - ウスラーダの産んだ三つ子の一頭)が繁殖目的のためにベルゴロド州の都市であるスタールイ・オスコル市 (Ста́рый Оско́л) にあるスタロースコルィスク動物園 (Старооскольский зоопарк) に昨年の7月に移動し、そしてそこで氷上サーカスを引退した雌のラパのパートナーとなるという一連の動きがありました。 ところが突然今年の5月にセードフ司令官は突然、黒海沿岸のリゾート地であるゲレンジーク市のサファリパークにラパと共に忽然と姿を見せたわけです。 これらの経緯の全ては全部投稿してきたつもりですので過去関連投稿をご参照下さい。
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スタロースコルィスク動物園でのセードフ司令官(左)とラパ(右)
Photo(C)4725.ru/ИТАР-ТАСС

そもそもセードフ司令官がクラスノヤルスク動物園からスタロースコルィスク動物園に移動したのはスタロースコルィスク動物園のあるスタールイ・オスコル市 がクラスノヤルスク市長に対して、セードフ司令官を3年間の期限付きでクラスノヤルスクからスタールイ・オスコルに移動させ、最近からこの動物園で飼育されるようになったサーカス団を引退したラパと同居させて繁殖を狙いたいと申し入れてきたからです。 つまりセードフ司令官の移動はあくまでも繁殖目的の「貸し出し」(端的に ”Breeding Loan” と言い切っても差し支えないでしょう)であるわけです。 

さて、クラスノヤルスク動物園は先週になって初めてスタロースコルィスク動物園に貸し出したはずのセードフ司令官が実はゲレンジークのサファリパークに移動したことを知ったそうで、ようやく昨日になってその事実を公に発表しました。 この発表と同時にマスコミはクラスノヤルスク動物園を情報の発信の源とする報道を行い始めたわけです。 クラスノヤルスクの地元局も昨日にはって初めてこの移動のニュースを報じていますので下の写真をワンクリックしていただくとそのニュースを見るjことができます。
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セードフ司令官がゲレンジークのサファリパークに移動したのは今年の5月であり、そしてゲレンジークでラパと共に一般公開されたのは6月です。 それから三カ月以上も経過しているのにクラスノヤルスク動物園は今頃になってセードフ司令官の移動を知ったということはつまり、スタロースコルィスク動物園はセードフ司令官の所有権を持つクラスノヤルスク動物園に無断でセードフ司令官をゲレンジークのサファリパークに移動させたことを意味します。 スタロースコルィスク動物園はセードフ司令官(そしてラパ)をゲレンジークに移動させた理由を自園で新しいホッキョクグマ飼育展示場を建設する期間中、この二頭を期限付きでゲレンジークに移動させたのだとクラスノヤルスク動物園に説明しているそうです。 しかしどうでしょうか、写真でスタロースコルィスク動物園の様子など見ますと非常に素朴な動物園でホッキョクグマ飼育展示場を建設するような余力のある動物園とは到底思えないわけです。
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ゲレンジークのサファリパークでのセードフ司令官(左)とラパ(右)
(C)Комсомольская правда

セードフ司令官の移動を今頃になって知ったクラスノヤルスク動物園はあわてて総務責任者をゲレンジークに派遣してセードフ司令官の飼育状態を確認し、そして今回の移動についての事情を確かめようとしているそうです。 さらにクラスノヤルスク動物園は自らが所有権を持つセードフ司令官のこういった形での移動に法的な問題があるのではないかと専門家に検討させるとも明らかにしています。 ここで、以前にもご紹介したことのあるセードフ司令官とラパのサファリパークでの姿を伝えるTVニュースを再度また見てみましょう。



さて....まず本件ですが、私はクラスノヤルスク動物園とスタロースコルィスク動物園との間でのセードフ司令官に関する契約の詳しい具体的内容はわからないものの、同種の契約においては基本条項においていかなる場合でもスタロースコルィスク動物園はクラスノヤルスク動物園の同意・承諾無しにセードフ司令官を他園に移動させることはできないであろうことは容易に察しがつくわけです。 何故今回のようなこんなおかしなことが生じたかが問題です。 実はゲレンジークのサファリパークはその経営の実態がよくわからない施設です。 しかし突然として立派なホッキョクグマ飼育展示施設を建設し、そしてその完成に合わせるかのようにセードフ司令官とラパが移動してきたわけです。 そもそもロシアでは、こういった今までホッキョクグマを飼育していない施設がホッキョクグマの飼育展示を始めようとするときはモスクワ動物園に話を持って行ってホッキョクグマの個体を融通してもらうというのが一般的なのです。 私が先日訪問したイジェフスク動物園(ウドムルト動物園)もそうやってホッキョクグマの飼育展示を始めたわけです。 このイジェフスク動物園(ウドムルト動物園)はれっきとした公営の動物園ですがゲレンジークのサファリパークは自治体の多額の出資はあるらしいものの公営とまでは言えないようです。 このサファリパークはモスクワ動物園ではなく、こういった形でスタロースコルィスク動物園に話を持っていき、そして二頭のホッキョクグマを「確保」 したということではないでしょうか。 ゲレンジークのサファリパークはセードフ司令官の所有権がクラスノヤルスク動物園にあることを知ってか知らずか、こうやってこの二頭を確保すれば自らの施設の立派さ、豪華さを楯にとって永続的にセードフ司令官ろラパを自らの施設で飼育展示できると自信を持っているように見えます。 もし今回の件で仮にスタロースコルィスク動物園とゲレンジークのサファリパークとの間で金銭のやりとりでもあったとすればこれは大変な話です。 ましてや、ゲレンジークのサファリパークはあくまで自分が「善意の第三者」であることをを装い、そしてスタロースコルィスク動物園からホッキョクグマを購入したのだからセードフ司令官の所有権は自分たちにあるなどと主張すれば、これは一大スキャンダルとなるでしょう。
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セードフ司令官 Photo(C)«Сафари-парк»-Геленджик

クラスノヤルスク動物園はゲレンジークのサファリパークとスタロースコルィスク動物園との間でいかなる契約が締結されているのかをチェックする必要があります。 それが本当にスタロースコルィスク動物園のホッキョクグマ飼育展示場建設期間中だけの「預託」であるならばよいですが、仮にそうではなかった場合はクラスノヤルスク動物園は問題の解決を訴訟に求めることは十分に考えうる話です。 私は今回の話は何か非常に不透明、不明朗な行為が行われているように推測します。 何故かと言えば、スタロースコルィスク動物園はクラスノヤルスク動物園にセードフ司令官の移動について全く了解を得ようとしていなかったからです。 事後にも話をしていないわけです。 どうも本件もまた「スラヴ世界の闇」を匂わせる事件のような気がします。 相当に厄介な問題となるかもしれません。 今回の件の発覚に軌を一にするように前回ご紹介したゲレンジークのサファリパークのライブカメラが映像配信を停止しているというのも実に奇妙です。 ホッキョクグママニアとしては興味津々といったところですが、セードフ司令官やラパには気の毒な話です。

(資料)
"Роев ручей" Красноярский зоопарк (Oct.2 2014 - Седов уехал в Геленджик)
Interfax Russia (Oct.3 2014 - Полярный медведь Седов переехал с супругой в Геленджик)
ИТАР-ТАСС (Oct.3 2014 - Красноярский белый медведь Командор Седов временно переехал в Геленджик)
Комсомольская правда (Oct.3 2014 - Белый мишка из «Роева ручья» крутит любовь в Геленджике)
ГТРК Красноярск (Oct.3 2014 - Белый медведь Седов перебрался в Геленджик)

(過去関連投稿)
(*ラパ関連)
サーカス団(ロシア)のホッキョクグマの訓練風景
ロシアの氷上サーカスでスケート演技をするホッキョクグマのラパ ~ その引退の日は遠し
ロシアの氷上サーカスのホッキョクグマ ~ 現役で活躍するラパ、そして引退したホッキョクグマたちの余生
ロシアの氷上サーカスのホッキョクグマのラパ、ベラルーシ公演でも大好評となる
ロシアの氷上サーカスに出演のホッキョクグマたち、元気に公演を続ける
ロシアの氷上サーカスに出演のラパたち5頭のホッキョクグマの最近の様子
ロシアの氷上サーカス団のホッキョクグマたち、モスクワのボリショイサーカスに出演し大好評
ロシアの氷上サーカス団でスケート演技をするラパに遂に引退の日来る ~ スタロースコルィスク動物園へ

(*セードフ司令官関連)
ロシア・クラスノヤルスク動物園の2頭の伊達男たち ~ 華麗なる独身生活を謳歌?
ロシア・クラスノヤルスク動物園のプール開き
ロシア・クラスノヤルスク動物園の夏の始まり ~ プールを雌2頭に占領されてしまったセードフ司令官閣下
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園のプール開き
ロシア・シベリア中部のクラスノヤルスク動物園のセードフ司令官の10歳のお誕生会 ~ 行方不明の兄弟たち
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園のセードフ司令官の希望無き恋 ~ 野生出身の雌は高嶺の花
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園のセードフ司令官が今週末に同園を出発し新天地へ
ロシア・シベリア中部 クラスノヤルスク動物園のセードフ司令官が同園を出発し、五千キロの移動の旅へ
ロシア・クラスノヤルスク動物園のセードフ司令官が陸路5日間で無事にスタロースコルィスク動物園に到着

(*ラパとセードフ司令官の同居関連)
ロシア西部、スタロースコルィスク動物園でのラパとセードフ司令官の近況 ~ ラパの健康状態への危惧
ロシア西部、スタールイ・オスコル市のスタロースコルィスク動物園で、ラパとセードフ司令官の同居が始まる
ロシア・スタロースコルィスク動物園のラパとセードフ司令官が黒海沿岸のゲレンジーク・サファリパークへ
ロシア・黒海沿岸、ゲレンジークのサファリパークで暮らすセードフ司令官とサーカス出身のラパの近況
ロシア・黒海沿岸、ゲレンジークのサファリパークのホッキョクグマ展示場にライブカメラ設置
by polarbearmaniac | 2014-10-04 06:00 | Polarbearology

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