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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・クラスノヤルスク動物園に所有権のあるセードフ司令官の無断移動問題、ほぼ一件落着へ

ロシア・クラスノヤルスク動物園に所有権のあるセードフ司令官の無断移動問題、ほぼ一件落着へ_a0151913_21322649.jpg
ゲレンジーク・サファリパークでのセードフ司令官(右)とラパ(左)
Photo(C)Красноярский зоопарк/Сафари-парк Геленджик

先日、「所有権を持つロシア・クラスノヤルスク動物園の同意無しに他園に移動させられた出張中のセードフ司令官」という投稿で、ロシア・シベリア中部の都市であるクラスノヤルスクの動物園が繁殖目的のために昨年7月にスタールイ・オスコル市にあるスタロースコルィスク動物園に貸し出した11歳の雄のホッキョクグマであるセードフ司令官が、今年の5月に黒海沿岸・ゲレンジーク市のサファリパークに移動していたことをクラスノヤルスク動物園は移動後4か月以上にもなって最近ようやくそれを知ったという件について投稿しています。 たった一頭のホッキョクグマの移動の不明朗さについて追及するマスコミがあるかと思っていましたところ、やはり二社のマスコミがこの件を取り上げていますのでそのうちの一つをご紹介しておきます。

まずクラスノヤルスクの地元TV局であるプリマが “Путешествие Седова приобретает скандальный характер” (「セードフの移動のスキャンダル」) という内容をニュースで報じていますのでご紹介しておきます。 下の写真をワンクリックしていただき開いたページで映像をご覧下さい。 最初に現在のクラスノヤルスク動物園で飼育されているフェリックスの姿や以前のセードフ司令官の様子が紹介されたあと園長さんの一か月前のラジオでのインタビューが紹介され、そこで園長さんは確かに、「セードフ司令官はスタールイ・オスコル市で元気でいる」と話しています。 実はこの時にはすでにセードフ司令官とパートナーのラパはゲレンジーク市のサファリパークに移動しており、そしてそのニュースや映像は6月にすでにネットで流れていたわけです。
ロシア・クラスノヤルスク動物園に所有権のあるセードフ司令官の無断移動問題、ほぼ一件落着へ_a0151913_2129578.jpg
(*後記 - 上の映像を下に貼り付けておきます。


さて、このTV局は上の番組でスタールイ・オスコル市での取材を基に、実はクラスノヤルスク動物園の園長さんがセードフ司令官のサファリパークへの移動を本当ははとうの昔に知っていて表面上はスタールイ・オスコル市で飼育されていると言っていたのだと指摘し、そしてクラスノヤルスク動物園とスタロースコルィスク動物園との間の契約はそもそもセードフ司令官の他園への移動については想定されていない内容であることを指摘しています。 そして今回のセードフ司令官の移動には何か誰かの個人的利益がからんでいるだろうとこの番組では推察しているわけです。 今になってクラスノヤルスク動物園の園長さんは、契約違反を行ったのはスタロースコルィスク動物園であると相手方を非難していると報じています。

どうもよくわかりませんね。 何事もよくわからないのがロシアという国です。今回の件で一番利益を得ているのはゲレンジークのサファリパークでしょう。 何故なら、新施設においてセードフ司令官とラパという二頭をペアとして展示できたからです。 集客にも大きな力となっているでしょう。 一番損をした(らしい)のはクラスノヤルスク動物園でしょう。 園長さんの言うことが正しいならば、いつの間にかセードフ司令官が別の場所に移動されてしまったからです。 ロシアにおけるこうした不明朗な事件が起きた場合に、そこには必ずポケットが潤う個人が存在しているということです。 一番利益を得た個人なり団体は、そういった状態を作り出すために誰かのポケットに金を入れてあげるというケースはよくあるわけです。

さて、6日のこの報道を大いに気にしたらしいクラスノヤルスク動物園は今日になって一連の経緯を時系列に従って明らかにする今回の事件を説明する公式発表を行いました。それを簡単にご紹介しておきます。 ("временной передержке" はその内容から「BL契約」と解して問題はないと思います。)

●2013年5月14日 - スタロースコルィスク動物園との間のBL契約締結
●2013年7月 4日 - セードフ司令官がスタロースコルィスク動物園に到着
●2014年5月 5日 - セードフ指令官がゲレンジーク・サファリパークへ移送
●2014年9月24日 - クラスノヤルスク動物園がセードフ指令官の移動を別ソースにより知り、スタロースコルィスク動物園にその事実を確認
●2014年9月28日 - クラスノヤルスク動物園がスタロースコルィスク動物園との間のBL契約を解除
●2014年9月29日 - クラスノヤルスク動物園がゲレンジーク・サファリパークとの間で2016年12月31日を終了期限としたBL契約を締結
●2014年10月2日 - クラスノヤルスク動物園がセードフ司令官のゲレンジーク・サファリパークへの移動を正式発表
●2014年10月3日 - クラスノヤルスク動物園の園長代理(総務担当責任者)がゲレンジーク・サファリパークを訪問し同施設の責任者と会談、及び飼育展示場の状況視察
●2014年10月8日 - クラスノヤルスク動物園の園長にスタロースコルィスク動物園の園長よりの手紙が届き、「同園の財政状況の悪化により新ホッキョクグマ飼育展示場の建設計画が宙に浮き、かつ夏の到来が近づいて現在の施設ではセードフ司令官とラパの健康状態に自信を持てないため他園への移動を考えていくつかの動物園と接触し、結果としてゲレンジークのサファリパークに移動させることとした。その移動についてセードフ司令官の所有権を持つクラスノヤルスク動物園との事前の合意なしに行ったことを謝罪したい。」という内容。


....ということで、私の見たところクラスノヤルスク動物園は事実を隠さず全て今回の事件の経緯について明らかにしているように思います。 ちゃんと日付を入れて時系列で状況を説明していることに好感を持ちます。 これで今回の件は完全に落着したと考えてよいのではないでしょうか。 当事者であるクラスノヤルスク動物園がこうやってちゃんと説明しているということは、今回の件には不正は絡んでいないということを示していると考えられます。 そして内容には矛盾がありません。 社会の多くの事象について不正が蔓延しているロシアについては、そういった不正がある場合に限って当事者は事情をあまり説明しないわけです。 そして実際、何事においてもそういう場合がロシアでは非常に多いのです。 これがロシアが謎の国である所以というわけです。 ですからクラスノヤルスク動物園の今日の発表は実に的確に事情を説明したもので、内容にも誤りはないと思われます。 それからこのクラスノヤルスク動物園の総務担当責任者の方の行ったスタロースコルィスク動物園とのBL契約解除、及びゲレンジーク・サファリパークとの新BL契約締結の動きも実に的確だったと思います。 ゲレンジーク・サファリパークとの間で直接に契約関係を結ぶことによって事を荒立てずにうまく処理したといってよいでしょう。
ロシア・クラスノヤルスク動物園に所有権のあるセードフ司令官の無断移動問題、ほぼ一件落着へ_a0151913_21353046.jpg
ゲレンジーク・サファリパークでのセードフ司令官
Photo(C)Красноярский зоопарк/Сафари-парк Геленджик

セードフ司令官がラパとの間で繁殖を狙ってペアを組むことはEARAZAの承認済みであり、そして彼が2017年にクラスノヤルスク動物園に戻る前に同園では総面積1500平方メートルある新ホッキョクグマ飼育展示場の建設が予定されているそうです。 ロシアの地方都市の動物園も必死に頑張っているということです。 さてここで昨年7月にセードフ司令官がクラスノヤルスク動物園からスタールイ・オスコル市にあるスタロースコルィスク動物園に到着したときのニュース映像、そしてスタロースコルィスク動物園でのセードフ司令官とラパの様子を伝える映像を再度ご紹介しておきます。 このスタロースコルィスク動物園動物園ではやはり新ホッキョクグマ飼育展示場を新設するという計画自体が身の丈には会っていないように思えます。





さて、こう言うと非常に不謹慎な話なのですが今回の事件が発覚して以来、私は事態の推移に注目することを非常に楽しんだわけでした。 ホッキョクグマをめぐるこういうドロドロとした世界は実は私は大好きなわけです。 ホッキョクグマをめぐってそういうわけのわからないことが非常に多いのがロシアを中心とした「スラヴ世界」なのです。 しかし日本にも時々ありますね。 さて、こういった話はセードフ司令官やラパには本当に申し訳ないと思いますが、彼らもとりあえずは環境の良い場所に移動したわけですし、特に氷上サーカス出身のラパが余生を送る場所としてはゲレンジークのサファリパークは期待していた以上の施設のように思われます。

(資料)
ТРК Прима-ТВ (Oct.4 2014 - Путешествие Седова приобретает скандальный характер)
"Роев ручей" Красноярский зоопарк (Oct.8 2014 - Подробности путешествия Командора Седова.)
Пресс-Лайн.ru (Oct.8 2014 - «Ров ручей» рассказал подробности скандального переезда медведя Седова в Геленджик)
"Лаборатория новостей - Красноярск" (Oct.8 2014 - Руководство «Роева ручья» проверило условия жизни Седова в Геленджике (видео))

(過去関連投稿)
ロシアの氷上サーカス団でスケート演技をするラパに遂に引退の日来る ~ スタロースコルィスク動物園へ
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園のセードフ司令官が今週末に同園を出発し新天地へ
ロシア・シベリア中部 クラスノヤルスク動物園のセードフ司令官が同園を出発し、五千キロの移動の旅へ
ロシア・クラスノヤルスク動物園のセードフ司令官が陸路5日間で無事にスタロースコルィスク動物園に到着
ロシア西部、スタロースコルィスク動物園でのラパとセードフ司令官の近況 ~ ラパの健康状態への危惧
ロシア西部、スタールイ・オスコル市のスタロースコルィスク動物園で、ラパとセードフ司令官の同居が始まる
ロシア・スタロースコルィスク動物園のラパとセードフ司令官が黒海沿岸のゲレンジーク・サファリパークへ
ロシア・黒海沿岸、ゲレンジークのサファリパークで暮らすセードフ司令官とサーカス出身のラパの近況
ロシア・黒海沿岸、ゲレンジークのサファリパークのホッキョクグマ展示場にライブカメラ設置
所有権を持つロシア・クラスノヤルスク動物園の同意無しに他園に移動させられた出張中のセードフ司令官
by polarbearmaniac | 2014-10-08 22:30 | Polarbearology

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