街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ララの子供たちの将来(下) ~ ドイツ・ハノーファー動物園のシュプリンターとナヌークのハロウィン

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ハノーファー動物園のハロウィン Photo(C)Erlebnis-Zoo Hannover

前投稿よりの続き)
北ドイツの都市であるハノーファーの動物園 (Erlebnis-Zoo Hannover) については今まで何度もここで取り上げて投稿してきました。 この動物園で飼育されているのは間もなく7歳になる雄のシュプリンターとナヌークの二頭です。 彼らは未だにパートナーが決まっていないという若年個体であり、欧州屈指の飼育展示場であるこの動物園の「ユーコンベイ (Yukon Bay)」 で華麗な独身貴族を過ごしています。 最近の彼らの姿を見ておきましょう。





2012年夏に札幌の円山動物園はこのハノーファー動物園に個体交換交渉を持ちんだことと、その交換候補として円山動物園がハノーファー動物園に提示したのがアイラ(現 おびひろ動物園)であったことについてはドイツにおける報道の中でハノーファー動物園の園長さんへのインタビューで全て明らかになった件についてもすでに投稿していますので過去関連投稿(「ドイツ・ハノーファー動物園に2012年夏に札幌・円山動物園が提示した交換候補個体はアイラだった!」)をご参照下さい。 この交渉によって日本側(円山動物園)は欧米における飼育基準を満たす施設の建設を行うという宿題を背負ったわけで、円山動物園のそれを実現させる計画が着々と進行していることも御承知の通りです。
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ハノーファー動物園のハロウィン Photo(C)Erlebnis-Zoo Hannover

一方、このハノーファー動物園は依然としてシュプリンターとナヌークのパートナー問題が未解決の状態のようですが、そろそろ欧州でもホッキョクグマの移動の話が出てくる季節になりつつあるわけで、このシュプリンターとナヌークのいずれかにEAZAのコーディネーターが果たしてパートナーを割り振るかも注目すべきことではありますがパートナー探しに四苦八苦している欧州の動物園はハノーファー動物園の他にも複数存在しているわけで、ハノーファー動物園としても楽観視など到底できない状態でしょう。 円山動物園の新施設の完成は2017年だったと記憶していますが計画通りに進行するかについては必ずしも断言できないでしょう。 円山動物園は新施設完成のあかつきにいったいどこの欧州の動物園と交渉しようとするのか、あるいは話をアムステルダムのEAZAのコーディネーターに持っていくのかどうかについてもよくわかりません。 仮に2017年の段階でもシュプリンターとナヌークにパートナーが割り振られていないとすれば、やはり再度交渉相手はハノーファー動物園となるのかもしれません。 となると日本側の交換候補個体はアイラ、マルル、ポロロの三頭となるでしょう。 しかしいくらなんでもその時点までシュプリンターやナヌークが独身でいるということは考えにくいかもしれません。 となれば、ララが今年の年末、あるいは来年の年末に産むであろう子供たちが欧州の別の動物園の個体との有力な交換候補となるような気がします。 欧州側はロストック系の個体となるでしょうから、そうなると考えうる一つはブレーマーハーフェン臨海動物園のヴァレスカお母さんがこれから産むであろう子供たちという線が出てきます。 ロストック系から外れればロッテルダム動物園のオリンカお母さんのこれから産むであろう子供たちというのも有力候補の一つでしょう。

しかしどうでしょうか、円山動物園のララの子供たちと欧州の個体との交換は結局のところ実現しないだろうと私は考えています。 その理由は簡単です。 円山動物園のララの子供たちはEEPの問題がクリアできても Red Tape の問題で欧州(EU域内)には「入れない」はずだからです。 というのは、欧州側の税関当局、動物検疫当局が通関の際に要求してくる(東アジアからの)ホッキョクグマの個体の過去何年間かの健康証明 (“Health Certificate”) を日本側は用意することができないはずだろうからです。 円山動物園は帯広のアイラや熊本のマルルや徳島のポロロについてその誕生後から現在に至るまで定期健診をやっている(あるいは帯広や熊本や徳島の動物園に依頼した)などという話を聞いたことがありません。欧州が要求するであろう基準の予防注射など接種していないと思います。 つまり、アルゼンチンのメンドーサ動物園のアルトゥーロをカナダに移動させようとした話が失敗したように、この健康証明 (“Health Certificate”) を相手国に提示することはできないでしょう。 ですから欧州個体は日本に来ることができても日本の個体は欧州(EU域内)に入ることはできないはずです。 つまり、欧州との個体交換は結局のところ実現しないだろうというのが私の予想です。 だから、イコロもキロルもアイラもマルルもポロロも、今後も日本に留まることになるでしょう。 (こう書くと 「よかった!」 と喜ばれる方々が札幌や熊本や徳島に大勢いらっしゃるかもしれませんが、日本のホッキョクグマ界にとっては一層難しい状況が待ち受けてくることになるでしょう。) 
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アイラ (2012年8月19日撮影 於 おびひろ動物園)

円山動物園はこの健康証明 (“Health Certificate”) と欧州側の「輸入許可 (Import Permit)」 の件、早急に欧州側に確認を取ったほうが良いかもしれません。 そして上に私が述べたことが仮に万が一でも本当だったとすれば(実はこれは微妙な点もあるのですが)、すでに生まれているイコロやキロルやアイラやマルルやポロロを交換候補個体とすることを断念せざるを得ないはずです。 ハノーファー動物園は2012年の段階でそういった問題を全く考慮していなかったか、あるいは日本側がそういった健康証明 (“Health Certificate”) を当然用意できるだろうと考えたかのどちらかのため、個体交換の実現性を真剣に調査してそれができない理由を円山動物園の基準を満たさないホッキョクグマ飼育展示場にあるのだと単純に結論付けたわけです。 だから円山動物園は個体交換の実現のために新施設建設という方針を打ち出したわけですが、ここに大きな落とし穴が潜んでいる可能性を再度チェックしてみたほうがよいでしょう。 仮に私が上に述べたことが事実であると判明すれば、もしこれからも円山動物園がララの子供たちと欧州個体との交換を狙うなら今後ララが産むであろう子供たちについてのみ、欧州側が要求してくるであろう健康証明 (“Health Certificate”) を用意できるように定期健康健診を行っておくことが必要だと思われます。 欧州とカナダとの間で個体交換が実現できたのは欧州もカナダも互いに相手側が要求する健康証明 (“Health Certificate”) を用意できたからです。

話を前に戻しますが、ハノーファー動物園のシュプリンターとナヌークはそういった人間の側の心配や思惑などと無関係に今年もハロウィンの季節を迎えて仲良くカボチャにありついているようです。 将来ここにララからすでに生まれている子供たちが加わるということは、まずないと思われます。

(資料)
Erlebnis-Zoo Hannover (Oct.23 2014 - Spuktakulär schön schaurig!)
Hannoversche Allgemeine (Oct.23 2014 - Eisbären naschen an Halloween-Kürbissen) (Oct.23 2014 - Im Zoo beginnt die Winterzeit)

(過去関連投稿)
ドイツ・ハノーファー動物園の新施設 Yukon Bay
ドイツ・ハノーファー動物園に仲良しトリオ出現 ~ ユーコンベイで3頭の同居開始
ドイツ・ハノーファー動物園の大きな成功
ドイツ・ハノーファー動物園のアルクトスとナヌークの双子兄弟に4歳のお誕生祝い ~ 将来への不安
ドイツ・ハノーファー動物園のウィーン生まれの双子に別離の時来る ~ アルクトスがスコットランドへ
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スコットランドのハイランド野生公園、ウォーカーとアルクトスの近況 ~ 雌の伴侶欠乏世代の個体たち
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ドイツ ・ ハノーファー動物園とホッキョクグマ展示場「ユーコンベイ (Yukon Bay)」 が味わった苦味
ドイツ・ハノーファー動物園と個体交換交渉を行った札幌・円山動物園 ~ その背景を読み解く
札幌・円山動物園の新ツインズ(ノワールとブランシュ – 仮称)、そして他のララの子供たちの将来 (上)
札幌・円山動物園の新ツインズ(ノワールとブランシュ – 仮称)、そして他のララの子供たちの将来 (中)
ドイツ・ハノーファー動物園に2012年夏に札幌・円山動物園が提示した交換候補個体はアイラだった!
札幌・円山動物園のマルルとポロロが移動先で2年間限定預託であることの意味は何か?~ その後を予想する
アルゼンチン・メンドーサ動物園のアルトゥーロのカナダ移送が不可能となる ~ “The case is closed.”
by polarbearmaniac | 2014-10-25 06:00 | Polarbearology

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