人気ブログランキング | 話題のタグを見る


街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

今シーズンに出産の有無が注目される雌(2) ~ カナダ・サンフェリシアン原生動物園のエサクバク

今シーズンに出産の有無が注目される雌(2) ~ カナダ・サンフェリシアン原生動物園のエサクバク_a0151913_322574.jpg
エサクバク Photo(C)Zoo sauvage de Saint-Félicien

さて、今年の暮れの出産シーズンで二番目に注目せねばならないのはカナダ・ケベック州のサンフェリシアン原生動物園 (Zoo sauvage de Saint-Félicien) で飼育されている野生出身の11歳の雌のエサクバク (Aisaqvak/Aisaqvaq /Aisakvak) です。 このエサクバクについては今まで何度か御紹介してきましたが2009年の11月30日に雌のタイガと雄のガヌークの双子を産み、その際のこの動物園の情報発信の素晴らしさは記憶に残るところです。 この出産ではパートナーはあの繁殖能力に定評のあるイヌクシュクだったわけですが、その後に彼女のパートナーは欧州との個体交換でオランダからやってきたイレ (Yellé) に変わったわけでした。 このイレは2005年11月のオランダ・レネンのアウヴェハンス動物園であのフギースお母さんから生まれた三つ子のうちの一頭です。 つまりイレは「ロストック系」ということになります。
今シーズンに出産の有無が注目される雌(2) ~ カナダ・サンフェリシアン原生動物園のエサクバク_a0151913_334668.jpg
イレ (Yellé) Photo(C)TVA Nouvelles

さて、エサクバクはこのイレをパートナーとして2012年、2013年と繁殖に挑戦したわけですが二度とも出産に至らなかったわけです。 この2012年については「カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、展示場に復帰 ~ 本命の意外な失望結果」、2013年については「カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、『本命』の2年続きの失望結果」という投稿をそれぞれ是非再度ご参照下さい。 特に2012年のシーズンでは世界のホッキョクグマ界での出産成功の可能性については札幌・円山動物園のララが「大本命」(結果はマルルとポロロ)、次の「本命」がアメリカ・トレド動物園のクリスタル(結果はスーカーとサカーリ)、そしてこのサンフェリシアン原生動物園のエサクバク(結果は無し)、その次がチェコ・ブルノ動物園のコーラ(結果はコメタとナヌク)という私の事前の評価だったわけですが、これらのうち出産がなかったのはエサクバクだけだったわけです。 ですから今年2014年のシーズンでは私はエサクバクは「本命」から外さざるを得ないと思っています。 問題は何故彼女が二年も続いて前評判に反して結果を出せなかったかです。
今シーズンに出産の有無が注目される雌(2) ~ カナダ・サンフェリシアン原生動物園のエサクバク_a0151913_3112998.jpg
イヌクシュク Photo(C)Toronto Zoo

以前にも述べていますが、その原因はやはりパートナーであった(ある)雄のイヌクシュクとイレの繁殖能力の差に求めざるを得ないのではないかということです。 サンフェリシアン原生動物園のホッキョクグマ繁殖への取り組みは実に優れており、従って環境の変化とか出産準備のための行程表の作成のまずさがあったとは到底思えません。 となると2009年に育児放棄もなく、そして実に安定した態度で産室でタイガとガヌークの双子に授乳し続けたエサクバクに責任があるのではなく、やはり彼女の新しいパートナーであるイレに責任の所在があったとしか他に理由が見つからないわけです。 雄の繁殖能力の問題点は、おそらく人間の場合と基本的なところでは同じではないかと私は勝手に想像していますのでこれ以上は述べません。 今年の2月のエサクバクとイレの雪の上での様子をサンフェリシアン原生動物園の公式映像でご紹介しておきます。 この二頭の相性の良さがうかがわれます。 (*追記 - 下の画面がもし黒く表示される場合には、画面を1、2回クリックするとスタート画面が現れます。)



仮に今年もエサクバクに出産がないとするとサンフェリシアン原生動物園がどのような対応策を考えるのかにも注目したいところです。 もう一度最初のパートナーだったイヌクシュクに来てもらい、そして繁殖に挑戦するという手段は当然あるでしょう。 しかしイヌクシュクはトロント動物園でオーロラとニキータとの間での繁殖に挑戦している段階であり、仮に今年オーロラかニキータに出産があれば来年イヌクシュクはサンフェリシアン原生動物園に出張してくることは可能ではあるものの、そうなるとイレを今後どうするかという問題も生じてくるわけで頭の痛いところです。 ここでごく最近のイレの様子を映像で見てみましょう。





なんとしてもイレの「ロストック系」としての意地を見せてほしいところです。 この今年のエサクバクの出産の有無は雄の繁殖能力の大小というものの存在を非情なまでに示すであろうという点においてエサクバクの出産の有無に注目すべきであるということになるでしょう。 ここで二か月ほど前のエサクバクの姿を見てみましょう。 ララのようにゆっくりした背泳を行っています。



私が勝手にホッキョクグマの出産の有望性に対して格付けした「大本命」、「本命」、「候補」、「期待」という四つのカテゴリーのどこに今年のエサクバクが該当するかと言えば、昨年までの彼女でしたら「本命」ということでしたが、今年は「候補」に一つ格下げされた状態だと思っています。

(過去関連投稿)
カナダでの飼育下期待の星、イヌクシュクの物語
カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、展示場に復帰 ~ 本命の意外な失望結果
カナダ・ケベック州 サンフェリシアン原生動物園のエサクバクとイレのペアへの大きな期待
カナダ・ケペック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、早々と出産準備のための別区画に移る
「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(10) ~ 出産に備えた雌の「隔離」とは?
カナダ・ケペック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバクの産室内の姿が公開 ~ スタッフの余裕
カナダ・サンフェリシアン原生動物園の産室内のエサクバク ~ ” Bonne nuit belle Aisaqvak !”
カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、「本命」の2年続きの失望結果
カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバクとイレのペアの繁殖への挑戦
カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園でのイレの健康チェックトレーニング
by polarbearmaniac | 2014-11-04 18:00 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
飼育・繁殖記録
街角にて
未分類

最新の記事

........and so..
at 2023-03-27 06:00
モスクワ動物園のディクソン(..
at 2023-03-26 03:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-25 02:00
ロシア・西シベリア、ボリシェ..
at 2023-03-24 02:00
鹿児島・平川動物公園でライト..
at 2023-03-23 01:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-22 03:00
名古屋・東山動植物園でフブキ..
at 2023-03-21 01:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-20 02:00
モスクワ動物園のディクソン ..
at 2023-03-18 22:20
ロシア・サンクトペテルブルク..
at 2023-03-18 03:00

以前の記事

2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索