街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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今シーズンに出産の有無が注目される雌(2) ~ カナダ・サンフェリシアン原生動物園のエサクバク

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エサクバク Photo(C)Zoo sauvage de Saint-Félicien

さて、今年の暮れの出産シーズンで二番目に注目せねばならないのはカナダ・ケベック州のサンフェリシアン原生動物園 (Zoo sauvage de Saint-Félicien) で飼育されている野生出身の11歳の雌のエサクバク (Aisaqvak/Aisaqvaq /Aisakvak) です。 このエサクバクについては今まで何度か御紹介してきましたが2009年の11月30日に雌のタイガと雄のガヌークの双子を産み、その際のこの動物園の情報発信の素晴らしさは記憶に残るところです。 この出産ではパートナーはあの繁殖能力に定評のあるイヌクシュクだったわけですが、その後に彼女のパートナーは欧州との個体交換でオランダからやってきたイレ (Yellé) に変わったわけでした。 このイレは2005年11月のオランダ・レネンのアウヴェハンス動物園であのフギースお母さんから生まれた三つ子のうちの一頭です。 つまりイレは「ロストック系」ということになります。
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イレ (Yellé) Photo(C)TVA Nouvelles

さて、エサクバクはこのイレをパートナーとして2012年、2013年と繁殖に挑戦したわけですが二度とも出産に至らなかったわけです。 この2012年については「カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、展示場に復帰 ~ 本命の意外な失望結果」、2013年については「カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、『本命』の2年続きの失望結果」という投稿をそれぞれ是非再度ご参照下さい。 特に2012年のシーズンでは世界のホッキョクグマ界での出産成功の可能性については札幌・円山動物園のララが「大本命」(結果はマルルとポロロ)、次の「本命」がアメリカ・トレド動物園のクリスタル(結果はスーカーとサカーリ)、そしてこのサンフェリシアン原生動物園のエサクバク(結果は無し)、その次がチェコ・ブルノ動物園のコーラ(結果はコメタとナヌク)という私の事前の評価だったわけですが、これらのうち出産がなかったのはエサクバクだけだったわけです。 ですから今年2014年のシーズンでは私はエサクバクは「本命」から外さざるを得ないと思っています。 問題は何故彼女が二年も続いて前評判に反して結果を出せなかったかです。
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イヌクシュク Photo(C)Toronto Zoo

以前にも述べていますが、その原因はやはりパートナーであった(ある)雄のイヌクシュクとイレの繁殖能力の差に求めざるを得ないのではないかということです。 サンフェリシアン原生動物園のホッキョクグマ繁殖への取り組みは実に優れており、従って環境の変化とか出産準備のための行程表の作成のまずさがあったとは到底思えません。 となると2009年に育児放棄もなく、そして実に安定した態度で産室でタイガとガヌークの双子に授乳し続けたエサクバクに責任があるのではなく、やはり彼女の新しいパートナーであるイレに責任の所在があったとしか他に理由が見つからないわけです。 雄の繁殖能力の問題点は、おそらく人間の場合と基本的なところでは同じではないかと私は勝手に想像していますのでこれ以上は述べません。 今年の2月のエサクバクとイレの雪の上での様子をサンフェリシアン原生動物園の公式映像でご紹介しておきます。 この二頭の相性の良さがうかがわれます。 (*追記 - 下の画面がもし黒く表示される場合には、画面を1、2回クリックするとスタート画面が現れます。)



仮に今年もエサクバクに出産がないとするとサンフェリシアン原生動物園がどのような対応策を考えるのかにも注目したいところです。 もう一度最初のパートナーだったイヌクシュクに来てもらい、そして繁殖に挑戦するという手段は当然あるでしょう。 しかしイヌクシュクはトロント動物園でオーロラとニキータとの間での繁殖に挑戦している段階であり、仮に今年オーロラかニキータに出産があれば来年イヌクシュクはサンフェリシアン原生動物園に出張してくることは可能ではあるものの、そうなるとイレを今後どうするかという問題も生じてくるわけで頭の痛いところです。 ここでごく最近のイレの様子を映像で見てみましょう。





なんとしてもイレの「ロストック系」としての意地を見せてほしいところです。 この今年のエサクバクの出産の有無は雄の繁殖能力の大小というものの存在を非情なまでに示すであろうという点においてエサクバクの出産の有無に注目すべきであるということになるでしょう。 ここで二か月ほど前のエサクバクの姿を見てみましょう。 ララのようにゆっくりした背泳を行っています。



私が勝手にホッキョクグマの出産の有望性に対して格付けした「大本命」、「本命」、「候補」、「期待」という四つのカテゴリーのどこに今年のエサクバクが該当するかと言えば、昨年までの彼女でしたら「本命」ということでしたが、今年は「候補」に一つ格下げされた状態だと思っています。

(過去関連投稿)
カナダでの飼育下期待の星、イヌクシュクの物語
カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、展示場に復帰 ~ 本命の意外な失望結果
カナダ・ケベック州 サンフェリシアン原生動物園のエサクバクとイレのペアへの大きな期待
カナダ・ケペック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、早々と出産準備のための別区画に移る
「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(10) ~ 出産に備えた雌の「隔離」とは?
カナダ・ケペック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバクの産室内の姿が公開 ~ スタッフの余裕
カナダ・サンフェリシアン原生動物園の産室内のエサクバク ~ ” Bonne nuit belle Aisaqvak !”
カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、「本命」の2年続きの失望結果
カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバクとイレのペアの繁殖への挑戦
カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園でのイレの健康チェックトレーニング
by polarbearmaniac | 2014-11-04 18:00 | Polarbearology

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