街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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男鹿水族館のクルミの出産日、出産頭数、性別を過去のデータで予想する ~ 「11月30日前後に雄か雌の一頭」

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クルミ (2013年7月27日撮影 於 男鹿水族館)

この時期になると行っているホッキョクグマの出産に関する予想を今年も行ってみることにします。 いつも申し上げていますが、これは単なる時間つぶしのようなものでしかありえず、予想してみたところでどうなるものでもありません。 予想とはいっても、ある程度の傾向を示すという以上のものではありえません。 この予測の根拠は、こういった予測に使用するデータとしては世界でほとんど唯一とも言えるロシアの生物学者であるイーゴリ・トゥマノフ氏の研究報告である ”Reproductive Biology of Captive Polar Bears (by IGOR TUMANOV. Research Institute of Nature Conservation of the Arctic and North, St. Petersburg, Russia)” のデータを今回も用いることにします。 以前の投稿でもご紹介していましたが昨年の暮れに日本平動物園はこのデータを参照していたことが確実ですので、そういった意味でもこの研究報告をホッキョクグマの出産予想に用いることに問題があるとは思えません。 このイーゴリ・トゥマノフ氏の研究報告は1932年から1988年の間でのレニングラード(現在は「サンクトペテルブルク」)のレニングラード動物園での50回のホッキョクグマの出産によって生まれた88頭の個体についての統計記録から導き出された貴重なデータです。
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クルミ (2013年7月27日撮影)

さて、実はこのトゥマノフ氏の研究報告を用いて2010年12月25日に誕生した一頭(つまりアイラ)の性別予想、そして一昨年の12月8日に誕生したララの子供たち(つまりマルルとポロロ)の性別予想を行ったわけですが、その際には産室内の一頭(つまりアイラ)と二頭の赤ちゃん(マルルとポロロ)はいずれも雌であるという予想をしましたが、これらは両方とも結果的に当たったわけです。 一方、男鹿水族館のクルミの赤ちゃんについては雄と予想しましたが実際は雌だったわけです。 こういうものは実際に当たったかどうかよりも予想そのものが何かの根拠に基づいていたかどうかが重要だと思いますので、「なんとなくそういう感じがする」 という予想よりは幾分ではあれ価値があるのではないかとも考えるわけです。 ましてや、頭数や性別が判明してから後になって 「実は私は最初からそう思っていたのだ。」 などという発言をするよりもましでしょう。
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クルミ (2013年9月14日撮影)

現時点 (11月10日) ではまだクルミに期待されている出産までには時間があるようですし、交尾日はわかっているものの出産日がわからない時点での頭数、性別予想は一層困難を極めるわけですが、今回は仮にクルミがこのあたりに出産した場合にどうだろうかという形での予想をしておきたいと思います。 その前にまずは「『ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)』よりの考察(5) ~ 赤ちゃんの頭数・性別は事前予測可能か」 という投稿を再度ご参照下さい。

まずこのトゥマノフ氏の研究報告のうちで基本的なデータを以下に整理しておきます。 尚、 この「妊娠日数/期間 (Pregnancy Duration)」 はAZAのマニュアルで言う "Total Gestation times"(懐胎日数/期間)と同じ意味です。

(1)交尾日、出産日、妊娠期間、出産頭数、性別との関係
交尾日    平均妊娠日数 出産平均頭数 性別(オスの確率)
2月11-28日   281日      1.55    50.0%
3月 2-31日    254日     1.80     51.9%
4月 1-30日    237日     1.75     54.3%
5月 8-16日   207日     2.25     55.6%
6月 5-13日   166日     1.50     33.3%

(2)妊娠期間と平均出産頭数との関係
妊娠期間        平均出産頭数
164 - 233日間     1.88
239 - 256日間     1.76
260 – 294日間     1.64

(3)1回の出産あたりの出産頭数の確率
1頭出産の確率  -  28%
双子出産の確率  - 68%
三つ子出産の確率 -   4%

さて、今年の男鹿水族館での豪太とクルミの交尾ですが、同水族館のブログを拝見しますと少なくとも最初に確認された日は2月22日のようですし、朝日新聞もそう報じています。 トゥマノフ氏の研究報告のデータは全て最初の交尾日を交尾日として採用するというルールがあるわけですから当然2月22日だけを交尾日として採用することにします。

まず上の(2)から見ていきます。 この妊娠期間 (Pregnancy Duration) の最短である164日間というのは実は出産日で当てはめると今年はなんと8月5日にあたります。 そして233日間というのは出産日で当てはめると10月13日ということになります。 さらに次の239日間は10月19日となり、256日間というのは11月5日です。 260日間は11月9日、294日間では12月13日です。 一昨年のクルミの妊娠日数 (Pregnancy Duration) は244日間でしたから、一昨年の妊娠日数が今回も同じだとすると今年は10月24日にすでに出産しているということになるのですが現時点(11月10日)ではまだそのような状態ではないようですから、今年のクルミの妊娠日数 (Pregnancy Duration) は前回よりもかなり多くなることを意味します。 ということは平均出産頭数は下がる傾向を示すということになるわけです。 つまり10月13日をピークとして段々と双子よりも一頭の出産となる可能性が大きくなることを意味します。 そしてクルミの出産の可能性は12月13日(つまり妊娠日数の上限の294日間はこの日)を越えては、ほとんどなくなるということを意味しています。

次に(1)です。豪太とクルミの交尾日は2月22日ですので、この場合の平均妊娠日数を見ますとそれは281日間です。 この281日間というのは日付にしますと11月30日です。 ということは雄の確率はなんと50%、つまり雄か雌かの確率は同じだということです。 そして、クルミの出産の可能性は11月30日を頂点にして現時点(11月10日)ではすでに上がり続けており、そして12月に入るにつれて次第に下がってくるということを意味することとなります。

これらを大雑把にまとめると以下のようになります。 つまり、

クルミの出産日は11月30日前後であり出産頭数は二頭より一頭の可能性がやや高く、性別は雄・雌の可能性は五分五分である。

ということです。 仮にもし双子だったとすれば、それは雄と雌の性別の異なる双子であり、雄と雄、又は雌と雌といったような同性の双子にはならない可能性が大きいでしょう。   それにしても一昨年の豪太とクルミの最初の交尾日は4月4日だったわけで、今回は2月22日とかなり早いですね。 釧路市動物園に出張していたデナリがクルミと交尾したのは記憶では1月初旬だったのではないでしょうか。 クルミの発情の時期というのは年によって非常に幅があるということのようです。 ですから、こういった過去のデータに基づく予測は一層難しさを増すと言えるのではないでしょうか。 しかしそうは言っても、今年のクルミの出産日は前回よりは早いだろうという傾向はあると思います。 いずれにせよ、朗報を期待したいと思います。
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クルミ (2013年7月27日撮影)

それから再度繰り返しますが、こういった予測というのは一種のお遊びだということです。 現実は常に意外性を伴っているということです。 それからもう一つ、あくまで今回の予想はクルミが本当に妊娠していて出産に至った場合という条件が付きます。 ホッキョクグマの場合は何事においても100%ということがありません。 それはシモーナやララやフリーダムのように今年の「大本命」であっても100%出産するとは断言できないということと同じです。

それから実に貴重な映像を見つけました。 それは釧路市動物園における8歳のクルミと彼女の母親である今は亡きコロの30歳頃の映像だそうです。 コロお母さん、さすがに素晴らしい貫禄です。



「偉大なる母」 というのはやはり見ただけでどこか違うものなのです。

(資料)
Reproductive Biology of Captive Polar Bears (by IGOR TUMANOV. Research Institute of Nature Conservation of the Arctic and North, St. Petersburg, Russia)
GOAっと! ぶろぐ (Feb.22 2014 - 同居開始)
朝日新聞 (Feb.23 2014 - 男鹿水族館GAOのホッキョクグマが繁殖行動)

(過去関連投稿)
ララが降誕祭に生んだ赤ちゃんの性別を予想する!
ホッキョクグマ出産統計から見た傾向を再確認する ~ 出産シーズンに向けての知識整理
ドイツ・ヴッパータール動物園で誕生の赤ちゃんの性別を過去のデータで予想する
ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(5) ~ 赤ちゃんの頭数・性別は事前予測可能か
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by polarbearmaniac | 2014-11-10 01:00 | Polarbearology

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