街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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恩賜上野動物園のユキオ逝く ~ 我々のもとから永遠に去った心優しきホッキョクグマの死を悼む

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ユキオ (2014年4月27日撮影 於 恩賜上野動物園)

恩賜上野動物園で飼育されていた雄のユキオが本日11月25日に急性膵炎で亡くなったことが発表されました。享年26歳。 (*追記 - 中日新聞と読売新聞が上野動物園に取材した報道によりますと、「19日から食欲がなくなり、動きが鈍くなった。 22日に展示を中止し投薬治療をしていたが、食欲は戻らず、飼育員が25日午前8時頃、寝室で死んでいるのを見つけた。」 ということだったそうです。)
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ユキオ (2014年8月17日撮影)

ユキオさんは実に独特のキャラクターを感じさせるホッキョクグマでした。 こういったユキオさんのような優しさを感じさせてくれるホッキョクグマというのは私は今まで海外でも会ったことがありません。 繁殖目的のためのユキオさんの釧路出張、そしてその後の東京への帰還と、私はユキオさんに対しては一般のファンの方々とは異なり、一貫してかなり厳しい見方をしていたわけですが、それは 「繁殖」 という名の舞台がある種の 「戦い」 の場であるという性格を持つことは否定しきれず、そういった「戦場」 に赴くユキオさんは「戦士」といったものに相応しくない、心からの優しい平和的なホッキョクグマだったことに対する私の複雑な感情が投影されたものだったということになるでしょう。
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ユキオ (2012年6月2日撮影 於 釧路市動物園)

今にして思えばユキオさんは、ホッキョクグマの姿に偉大さに対する憧憬を求めはするものの癒しを求めない私とは、いささか距離のあったホッキョクグマだったかもしれないと思っています。 ここで生前のユキオさんの姿を見ておきましょう。 まず釧路市動物園における一般公開を伝える徐元ニュース映像をご紹介しておきます。 冒頭はCMです。


  

さらにユキオさんの釧路市動物園における映像を一つご紹介しておきます。

(2012年11月17日撮影)

さらに釧路から東京に帰還したユキオさんの様子を二つ再度ご紹介しておきます。 かなり苦しそうな表情です。

(2014年7月13日撮影)

(2014年7月13日撮影)

こういった映像を振り返ってみますと、果たしてユキオさんが釧路に赴いたことそのものが果たして正解だったのか、そして目的を果たせなかったとはいえ再び東京に戻ってきたことが正解だったのか...考えてみるといくつかの異なる意見があって当然であると思うわけですが、しかしそれを今更語ってもしょうがないことでしょう。 今回のユキオさんの死の原因は急性膵炎ということですが、東京に帰還した後のユキオさんは何か周囲の時の流れにに取り残されてしまったような孤独感と寂寥感を感じさせました。 「自分の時代は終わった」 と自覚していたとしても不思議ではないかもしれません。 そういった意味では、まるで静かに退場していったかのように見える物静かで温和な一頭の初老のホッキョクグマの男の姿が胸を打つように私には感じます。
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ユキオ (2014年8月17日撮影)

心よりユキオさんに哀悼の意を捧げます。 本当に今までご苦労様でした。 安らかに眠ってください。

(*追記 - 実はこの下の写真はユキオが生まれたドイツのミュンスター動物園 (Allwetterzoo Münster) がユキオの生まれた翌年の1988年に発行した園の案内書の表紙の写真です。 タイトルは “Junger Eisbär”(若いホッキョクグマ)となっています。 私はこの写真の幼年個体がユキオである可能性はこの案内書の発行時期から言って極めて高いと思っていますが、100%の確証はありません。 というのもユキオは生まれてからなんと7ヶ月半で 「強制離乳」 とされてしまったわけで - つまり円山動物園生まれのあのポロと同じく母親から引き離されたということ - その後すぐに動物商に売られてしまったという不遇の経歴があるわけです。 とするとこの写真の幼年個体がユキオであるためにはこの写真の幼年個体が生後7ヶ月半以下の若さでなければならないわけですが、体の大きさから考えると幾分微妙な感じも残るわけです。 ホッキョクグマの幼年個体というのは写真を撮る角度によっては実際よりもかなり大きな体のイメージとなることが多いわけで、そういったことも含めて決定的な判断は難しいと思います。) 
(*追記2 - やはりユキオの幼年時代の写真ということでよいようです。)

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(資料)
東京ズーネット (Nov.25 2014 - ホッキョクグマの「ユキオ」、やすらかに
(*追加資料)
Allwetterzoo Münster - Zooführer (Junger Eisbär) 1988

(過去関連投稿)
釧路市動物園のユキオとツヨシ ~ 残された繁殖の時間の限られたペアの姿
釧路市動物園へ ~ 余生安楽モードのユキオへの苦言
釧路市動物園のユキオが上野動物園へ、男鹿水族館のミルクが釧路市動物園へ ~ その後を予想する
釧路市動物園のユキオが4月に上野動物園へ帰還 ~ "Never bark up at the wrong tree"
釧路市動物園でユキオのお別れ会が開催 ~ ほろ苦さを後に残したユキオの釧路滞在
上野動物園にユキオが無事帰還 ~ 報じられるデアとのペア形成はあり得るのか?
上野動物園に帰還したユキオ ~ "Heaven does not help those who don't help themselves."
ユキオに容赦なく流れた時間 ~ 失われつつある幸運・尊厳・体力・気力、増大する不満と呪詛
ユキオの夏の日 ~ "Yukio v mlhách..."
by polarbearmaniac | 2014-11-25 15:00 | Polarbearology

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