街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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大阪・天王寺動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ 22歳のバフィン、渾身の出産

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バフィンお母さん (2012年4月19日撮影 於 大阪・天王寺動物園)

突然の報道によりますと、大阪の天王寺動物園で昨日の25日にホッキョクグマの赤ちゃんが誕生したそうです。 頭数は未確認のようです。 母親はもちろん22歳のバフィンです。
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Image:MBS/天王寺動物園

現時点(15時15分現在)では同園ではまだ正式発表はしていないようですね(*後記 - 大阪市より正式発表 がありました) 。 昨日の誕生ということですが、授乳の確認がなされているのかどうかについても情報がありません (*追記 - 大阪市の正式発表でもそのことには触れていません) 。 バフィンは浜松ですでに出産経験がありますから22歳での今回の出産は「初産」ではないわけで、いわゆる「世界最高齢初産成功」の記録 とは関係はないわけです。 それにしてもこの最初の報道はフライングではないでしょうか? 天王寺動物園としては発表を本来もう数日待ちたいと考えていたとしてもおかしくないように思います。 むしろそれが本音だったのではないでしょうか。
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「バフィンさん、私の息子の子供をどうかよろしくお願いしますよ!」
(ゴーゴの母アンデルマ 2013年10月1日撮影 於 ペルミ動物園)

昨日の何時に出産したのかがわかりませんが(*後記 - その後の報道では午後4時だそうです。 そうなるとまだようやく一日が経過したという段階ですね。)、現段階では授乳音の確認が非常に重要になります。 これについては以前の投稿である「『ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)』 よりの考察(4) ~ 産室内の授乳の有無をどう判断するか」 をご参照下さい。 最初の第一関門は出産後72時間までだと言われているわけですが、その間に授乳が確認できれば第一関門は突破ということになります。 昨年ミュンヘンのヘラブルン動物園では赤ちゃん誕生後二日間経過しないうちに赤ちゃん誕生の正式発表を行ったわけですが、こういう場合は赤ちゃんへの授乳音が確認できたために正式発表となったわけです。 今回の天王寺動物園での赤ちゃん誕生については細かい事実が不明ですので、何とも言いようがありません。 一昨年の男鹿水族館の場合はクルミの出産後があったその日にすぐに出産の事実が発表されたわけですが、赤ちゃんにしっかり授乳が行われているのかどうかが確認されるまでは非常に不安があったわけです。

それから、ここのところ何度も利用しているロシアの生物学者であるイーゴリ・トゥマノフ氏の研究報告である ”Reproductive Biology of Captive Polar Bears (by IGOR TUMANOV. Research Institute of Nature Conservation of the Arctic and North, St. Petersburg, Russia)” のデータを参考にしますと、今回のゴーゴとバフィンの交尾日は3月6~11日という事実が報道で明らかにされており、この場合は最初の日の3月6日を「交尾日」として採用するのがルールです。 出産は11月25日ですから 「妊娠日数/期間 (Pregnancy Duration)」 は264日間ということになります。 この場合ですと幾分雄の可能性が高くなり、出産頭数は2頭より1頭のほうがやや高いといったところでしょうか。 思い切ってこう予想しましょう、それは「バフィンが昨日産んだ赤ちゃんは一頭の雄である」。 しかし今回のこの交尾日と出産日は平均的なもので、性別も頭数も一番予想しにくいケースだと思います。 今回の予想も「遊び」ですので真剣に受け取らないで下さい。
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ゴーゴ (クライ・ユーコノヴィチ) 
(2012年4月19日撮影 於 大阪・天王寺動物園)

それにしてもゴーゴ (クライ・ユーコノヴィチ)はなんだか頼りなさそうな感じだったわけですが、さすがに「アンデルマ/ウスラーダ系」(正確には彼にはウスラーダの血は入っていませんが) だけのことはあります。 この血統の繁殖能力というものは実に優れているということですね。 さすがにあの偉大なアンデルマの息子だけのことはあります。 それから、「ゴーゴとバフィンは仲が良くない(相性が良くない)」 というような見方も最初の頃はあったわけですが、「この二頭の相性は悪くない。」 と当初から判断していた天王寺動物園の獣医さんは、やはりたいしたものです。 物事には「現象面」と「本質」があるわけです。 重要なのは「本質」です。 「仲の良い/悪い様子や光景」 と 「本質的な仲の良さ/悪さ(相性の良さ/悪さ)」 というものは違うわけです。 それを見抜いた獣医さんは素晴らしかったと思います。 「仲の良い/悪い様子や光景」を何百枚、何千枚と写真で提示してみたところで、それは「本質的な仲の良さ/悪さ(相性の良さ/悪さ)」 を意味することになりません。 写真というものの限界がここにあるわけです。 所詮、写真は写真なのです。

問題はバフィンの母親としての自覚、そして赤ちゃんの体力というものだと思います。 天王寺動物園が今回のバフィンの出産についてある程度の情報を発表してくれませんと何とも言えません。 ともかくは無事に最初の関門を乗り切ってくれることを期待したいと思います。 明日(27日)が最大の勝負ではないでしょうか。 でも今回の最初の報道、やはりフライングですね。 私もこうして報道があったので書いていますが、まだまだ今回の赤ちゃんについては不安があることは間違いないでしょう。 バフィンの健闘を祈ります。

(*追記 - 大阪市の正式発表に過去3回のバフィンの出産歴が記されていますが、2001年11月14日-1頭、2004年10月21日-1頭、2005年12月12日-1頭、となっています。 これを見ますとバフィンというのは生殖活動のリズムが安定しないホッキョクグマだということがわかります。 あまりにこの3回の出産日は離れすぎていますね。 今回の出産ですが総合的に考えて第一関門突破の可能性は40% ぐらいではないでしょうか。 しかし少々甘い数字かもしれませんね。 実際はもっと厳しいかな?)

(資料)
あべの経済新聞 (Nov.26 2014 - 天王寺動物園、ホッキョクグマの赤ちゃん誕生-同園で16年ぶり)
Association of Zoos and Aquariums - Polar Bear (Ursus Maritimus) Care Manual
”Reproductive Biology of Captive Polar Bears (by IGOR TUMANOV. Research Institute of Nature Conservation of the Arctic and North, St. Petersburg, Russia)”
(*追記資料)
大阪市 (Nov.26 2014 - ゴーゴとバフィンに赤ちゃん誕生!
産経新聞 (Nov.26 2014 - 「年の差婚」ホッキョクグマの赤ちゃん誕生 天王寺動物園で16年ぶり…少しずつ愛深めた9歳ゴーゴと22歳バフィン
毎日新聞 (Nov.26 2014 - ホッキョクグマ:赤ちゃん生まれる 大阪市天王寺動物園)

(過去関連投稿)
「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(4) ~ 産室内の授乳の有無をどう判断するか
ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(5) ~ 赤ちゃんの頭数・性別は事前予測可能か
by polarbearmaniac | 2014-11-26 15:15 | Polarbearology

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