街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア極北の油田採掘場に居座るホッキョクグマに自然管理局が対応に苦慮 ~ 動物園送りを選択か?

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トボイ油田の掘削場に居座るホッキョクグマ
Photo(C)Алексея Волкова/Правда Севера

先月中旬からロシア極北のネネツ自治管区のヴァランデイ (Варандей) 地区にあるトボイ油田 (Тобойский нефтепромысел) の掘削場に居ついてしまった2~3歳の一頭の雌のホッキョクグマに対して当局がその扱いに非常に苦慮している様子が連日のように報道されています。
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Photo(C)Правда Севера

このホッキョクグマはもともと秋頃からアンデルマの街に出没していたことが報告されており、WWFロシア支部が住民に注意を呼び掛けていたという経緯があったそうですが、そのホッキョクグマが今度は比較的付近のヴァランデイ地区にあるトボイ油田の掘削場に11月になってから姿を見せ、掘削場で働く作業員の宿舎近くに陣取ってしまい、作業員が戸外に出て作業を行うことに障害となってしまったそうです。 このホッキョクグマは全く攻撃的な態度を魅せてはいないもののWWFロシア支部のアドバイスなどを受けてヘリコプターを出動させで照明弾などを発射して二度も追い払ったわけですが、すぐにまた戻ってくるという状態が繰り返されたそうで、ついに連邦政府の連邦政府の自然管理局 (RPN) の許可のもとネネツ自治管区の当局と資源会社は先週、このホッキョクグマに麻酔銃を発射して捕獲し、そしてヘリコプターに乗せて40キロ離れた場所の地上に下ろして解放したそうです。
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Photo(C)Администрация Ненецкого автономного округа
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Photo(C)Правда Севера

それを報じるロシアのTV局のニュース報道を三つご紹介しておきます。







さて、これで終わっていればめでたしめでたしだったはずでした。 ここまでの経緯は欧州でも報道されていたわけでした。 ところがそれから二日後になってこのトボイ油田の掘削場で働いていた女性が突然ホッキョクグマに襲われて頭部に重傷を負いヘリコプターで付近の街の病院に運ばれるという事件が起こってしまったわけです。 ヘリコプターで遠くに運んだはずのホッキョクグマがまた戻ってきたというわけでした。 それを報じる地元TVのニュース映像です。 本当に襲おうとしたわけではなく親愛の情か何かで女性の体に脚をかけたらその女性がケガをしてしまったというのが事実であるような気がします。 しっかりと戻ってきたこの雌の若年個体の様子が写っています。 また同じような恰好で座り込んでいます。 やはりここがお気に入りというわけですね。



ここに至って連邦政府で野生のホッキョクグマの管理を行う自然管理局 (RPN - Федеральная служба по надзору в сфере природопользования) の地区代表の方は、このホッキョクグマをさらにもう一度捕獲して前回よりも遥かに遠くにあるヴァイガチ島まで運んでしまおうという計画を立てているそうです。 実は自然管理局はすでにこのホッキョクグマを捕獲後に動物園で飼育してもらおうという案もすでに立てていたそうで、はたしてこの雌の若年個体にどのような処置がとられるかが注目されます。 ただし言えることは、射殺してしまおうという考えは全くないという点でやや安心してよいかと思うわけです。

さて当初WWFロシア支部はヘリコプターの音と照明弾の発射でホッキョクグマを追い払えば、もう恐怖心でホッキョクグマはその場所に戻ってこないと考えたのは確かにそれ自体は正しいわけですが、実はこの一連の事件が報道されている途中で明らかになったのは、このホッキョクグマが姿を現した最初の段階でこの油田掘削場の作業員が宿舎でこのホッキョクグマに缶入りの肉や濃縮ミルクなどを与えていたという事実が明らかになってきたわけです。 この若年個体はそうしたものに惹かれてこの掘削場をまるで自分の住家のようにして居ついてしまったわけす。 だからヘリコプターで40キロ離れた場所に移動させられてもまた歩いて戻ってきたということです。 つまり当初人間がこのホッキョクグマに好物を与えてしまったことが、やはりこれが今回の事件の解決が簡単ではなくなってしまった原因のようです。 ロシアの極北ではよく軍人がホッキョクグマに食べ物を与えるというのはソ連時代からあったわけですが、やはり野生のホッキョクグマに人間が食べ物を与えるというのは、今回のケースのように大きな問題を引き起す誘因となることをもっと知っておかねばならないというのが教訓だろうと思います。 今回は「射殺しない」 という結論が先に出ているから安心してよいですが、人間がホッキョクグマに襲われて正当防衛をせざるを得ない状況になった時はお互いにとっての不幸となるでしょう。

(資料)
Администрация Ненецкого автономного округа (Nov.20 2014 - На Варандее началась операция по отпугиванию белого медведя, мешающего нефтяникам работать)
ИТАР-ТАСС (Nov.20 2014 - Для отпугивания белого медведя от буровой установки в Ненецком АО вылетит вертолет)
ДНИ.РУ (Nov.20 2014 - Белый мишка парализовал работу нефтяников)
ИТАР-ТАСС (Nov.20 2014 - В Ненецком автономном округе белый медведь не дает работать специалистам буровой установки)
ИТАР-ТАСС (Nov.21 2014 - Белого медведя, назойливо пытавшегося отобедать у нефтяников, спугнули с помощью вертолета)
ИТАР-ТАСС (Nov.24 2014 - Белый медведь продолжает беспокоить нефтяников в Ненецком автономном округе)
ИТАР-ТАСС (Nov.25 2014 - Белого медведя, продолжающего донимать нефтяников в НАО, депортируют на арктический остров)
ИТАР-ТАСС (Nov.25 2014 - Белую медведицу, мешавшую нефтяникам в НАО, перевезли на арктический остров)
Правда Севера (Nov.26 2014 - Белый медведь зашел в гости к нефтяникам Ненецкого округа)
The Mpscow Times (Nov.28 2014 - Airlifted Polar Bear Treks Back to Populated Oil Field in Russia)
Федеральное агентство новостей (Nov.28 2014 - Белый медведь не хочет покидать нефтяников в НАО)
Интерфак (Nov.28 2014 - Вывезенный на остров Долгий из НАО белый медведь вернулся назад и продолжил мешать нефтяникам)
ИТАР-ТАСС (Nov.29 2014 - Белую медведицу, мешающую работать нефтяникам в НАО, поместят в зоопарк)
Вести (Dec.2 2014 - В гости к нефтяникам: медведицу пришлось "депортировать" из поселка)
ИТАР-ТАСС (Dec.2 2014 - Медведица, досаждающая нефтяникам в Ненецком АО, напала на женщину)
МАНГАЗЕЯ (Dec.2 2014 - Белая медведица, поселившаяся на Тобойском месторождении, напала на женщину)

(過去関連投稿)
ロシア、ホッキョクグマ狩猟割当数を放棄 ~ 全面禁猟へ踏み出す
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by polarbearmaniac | 2014-12-03 23:00 | Polarbearology

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