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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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札幌・円山動物園で22歳のキャンディが一頭の赤ちゃんを出産するも死産と判断される

札幌・円山動物園で22歳のキャンディが一頭の赤ちゃんを出産するも死産と判断される_a0151913_17345582.jpg
キャンディ (2014年10月13日撮影 於 札幌・円山動物園)

札幌・円山動物園が本日8日に発表したところによりますと同園で飼育されている22歳のキャンディが12月5日に一頭の赤ちゃんを出産したものの鳴き声や動きなどが認められないことから、同園では死産であったものと判断したとのことです。 大変に残念なことです。

非常に驚きました。 それは、デナリとの間で繁殖行動 (マウント)は確認できたものの繁殖行為(交尾)は確認されていないと説明されていたキャンディが出産したという事実についてです。 このキャンディの繁殖行為については担当飼育員さん個人としては「交尾は確認していない」 ということなのか、「園として確認していない」 ということなのかが私には最後まではっきりとはわからなかったという事情がありました。 さらに先日、旭山動物園がサツキとルルの産室入りの情報をHPで発表した際に この二頭の交尾日まで公表したという鮮やかさが記憶に鮮明だったわけで、私としてはキャンディについては何かもやもやとした感じが拭いきれなかったという事情も今回の私の驚きの背景にあるわけです。
札幌・円山動物園で22歳のキャンディが一頭の赤ちゃんを出産するも死産と判断される_a0151913_14432870.jpg
キャンディ (2013年11月4日撮影 於 札幌・円山動物園)

円山動物園の公式ブログを拝見しますと、デナリとキャンディの同居7日目の4月22日にも確認できたのは繁殖行動(マウント)だけであり繁殖行為(交尾)については定かでない旨の記述が見えます。 それ以降、このデナリとキャンディとの同居の記載はなくなってしまうわけですが、一応4月22日を交尾日だったとして採用しますと、今回出産のあったのは12月5日ですから、「妊娠日数/期間 (Pregnancy Duration/Total Gestation times)」 は227日間となります。 例のロシアの生物学者であるイーゴリ・トゥマノフ氏の研究報告 (”Reproductive Biology of Captive Polar Bears by IGOR TUMANOV. Research Institute of Nature Conservation of the Arctic and North, St. Petersburg, Russia” ) ではこの4月22日という交尾日では平均の妊娠日数 (Pregnancy Duration) は237日間であり、それから判断するとキャンディの出産日としては12月15日前後が最も可能性が高かったということになります。 そして今年のキャンディの出産の可能性がほぼなくなる妊娠日数 (Pregnancy Duration) の最大である294日間がどの日にあたるかを計算しますと、それは来年の2月11日にあたるわけです。 つまり、キャンディの最も出産の可能性が高いはずであった12月15日前後から最終となる日まで彼女には58日間という余裕があったというわけです。 キャンディのように一応は過去に出産経験がある個体では、この58日間という日数的余裕は実は今回の彼女の出産に非常に有利に働いたということが言えそうで、だからこそ現実に今回彼女は22歳という年齢になってもなんとか出産にだけはこぎつけたということが言えるかもしれません。 そうなると、今年の男鹿水族館のクルミがこの最大妊娠日数から彼女の出産のピークであった日を引くと13日間という日数しか示さない事実を考えれば、今年のクルミはトゥマノフ氏の研究報告が示すデータから読み取れる傾向を否定すべく真っ向から挑戦を挑んでいるということを意味することになるのかもしれません。

さて、このキャンディについてですが私はこれで彼女のデナリをパートナーとした繁殖への挑戦はやはり終わりにすべきではないかと考えます。 これ以上さらに無理をさせて来年以降も挑戦を続けさせるとなりますと果たしてどうでしょうか。 やはり物事には 「終わり」 とか 「潮時」 と いうものがあるように思います。 かえすがえすも残念だったのは、このキャンディの2012年12月の最初の出産、そしてさらに遡れば彼女がもっと若いうちに彼女との相性の良いパートナーと共に繁殖に挑戦するチャンスが与えられていたならば...という気がします。

(資料)
円山動物園 (Dec.8 2014 - ホッキョクグマの「キャンディ」が出産しましたが、残念ながら死産でした)

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by polarbearmaniac | 2014-12-08 14:30 | Polarbearology

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