街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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南フランス・コートダジュール、アンティーブのマリンランドのフロッケに立ちはだかる「繁殖」 という壁

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フロッケ Photo(C)Noémie Gounelle

南フランス、コートダジュールの街アンティーブのマリンランドに暮らす7歳になったばかりのフロッケとラスプーチンのペアはあまりにも有名なのですが最近は意外にもこのブログではほとんど取り上げていませんでした。 なんといっても人工哺育で育てられた雌のフロッケが果たして繁殖に成功するかどうかということは極めて興味深い話で、要するにこれが人工哺育の最終章となることには間違いないと思います。 しかしそれがもっと現実味を帯びてくるのはおそらくもう2~3年先の話だろうと思います。つまりそういったゴールの設定が明確であるが故に現在の状態に今一つ興味が湧いてこないといったこともあるかもしれません。 また、私は2011年の夏にアンティーブのマリンランドを訪問してフロッケとラスプーチンに実際に会ってきましたが夏のコートダジュールといういわゆる観光シーズンにあっては人が多くてこのペアをじっくり観察しようという気にはならなかったわけでした。

さて、そうは言ってもここ1~2年のこのペアの様子を少し振り返っておくのも必要だろうと考えますので今回はマリンランドの公式映像をいくつかご紹介させていただくこととしたいと思います。 前回、「南フランス・アンティーブのマリンランドでのフロッケとラスプーチン ~ マリンランドTVの映像より」という投稿でご紹介したあとの映像です。 どれもなかなか美しい映像です。 音声はonにして下さい。

まず下の映像ですが、主にフロッケの泳いでいる映像が多く紹介されていると同時にこのマリンランドの雰囲気といったものもわかっていただけるように思います。 私はこのようにプール(水槽)が前面にあるという施設はあまり好きではありません。 ホッキョクグマの泳ぎだけが見せ場だというような印象を与えます。 彼らは泳いでいる姿が最も素晴らしいかといえば、私個人的にはそうは思わないということです。 しかしこういった施設は一般受けするでしょう。



この下は動いているラスプーチンとお気に入りの場所で昼寝するフロッケという対比です。 このラスプーチンは今さら言うまでもなく男鹿水族館の豪太の弟です。



この下はラスプーチンのブイ遊びと、そして美しく成長したフロッケの昼寝の姿です。



この二頭の相性が良いことは間違いなく、とにかく繁殖に至るかどうかは興味深いところです。 「人工哺育された雌は繁殖に成功しない。」 というのはよく語られる一種のテーゼであるわけですが、それは飼育下のホッキョクグマの繁殖は極めて難しいことに加え、そもそも人工哺育された(雌の)個体の数自体が極めて少ないという現実からすれば、このテーゼ自体は絶対的なものではないと私は考えます。 このテーゼの基礎にあるのは母親の育児を受けなかった雌の個体は、自らが出産して育児を行うことはないという考え方ですが、しかしそこには本能というものの存在をどう考えるかという問題を含んでおり、なかなか興味深い話になりそうです。 一度過去にご紹介していますが、この下の映像は2008年1月のニュルンベルク動物園での非常に有名なシーンで、興奮したヴェラお母さんが生後一か月にもならない赤ちゃん(フロッケ)を咥えて産室から引きずりだし、そして半ば虐待に近いことを行い始めた時の映像です。 御存じない方には是非とも一度ご覧いただきたいと思います。



このフロッケというのは、いわゆるクヌート/ピース型の完全人工哺育ではなく、こうして途中までは母親が授乳をして育児していたものの何かの事情で育児ができなくなったために人間が介入して人工哺育に切り替えたというパターンです。 こういったパターンの雌の個体までをクヌートやピースなどとと一括りにして 「人工哺育」 とし、そしてさらに 「人工哺育された雌は繁殖に成功しない」 とまで完全に言い切ってよいかという問題もあるわけです。 私はこの「繁殖に成功しない」 ということは 「人工哺育」そのものよりも、むしろその後の「適応化 (Socialization) 」の有無ではないかと考えるわけです。 このフロッケの人工哺育について詳しくは下の過去関連投稿をご参照下さい。

(過去関連投稿)
フロッケの旅立ち、アンティーブの「碧」と「青」の世界へ...
ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択(1) ~ ヴィルマとヴェラの出産 
ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択(2) ~ 消えた赤ちゃん
ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択(3) ~ ヴェラの狂気
ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択(4) ~ 赤ちゃん救出劇
ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択(5) ~ 安楽死/人工哺育是非論への視座
25年前の東ドイツにいた「もう一頭のクヌート」 ~ ユキ(姫路)とポーラ(仙台)の父親の物語
セルビア・パリッチ動物園のビョルン・ハインリヒ死す ~ ユキ(姫路〕 とポーラ(仙台) の父親の訃報
南フランス・アンティーブのマリンランドでのフロッケとラスプーチン ~ マリンランドTVの映像より
南フランス・アンティーブのフロッケの誕生日 ~ 書かれうるか、人工哺育論の最終章のページ
(2011年7月アンティーブのマリンランド訪問記)  
アンティーブのマリンランドへ! ~ フロッケとラスプーチンとの初対面
理念無き商業娯楽施設でのフロッケとラスプーチンの存在
by polarbearmaniac | 2014-12-13 06:00 | Polarbearology

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