街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ホッキョクグマの生態調査方法 (“Capturing-and-Tagging 法”) が個体に悪影響がないことが判明

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キロロ (2013年3月16日撮影 於 浜松市動物園)

ホッキョクグマの生息数評価などについての硬派な話題を投稿したいとは思うのですが、そういった内容の投稿を行い始めると数回は連続した投稿が必要で、この時期には向かない話となるでしょう。 今回は単発的な話題を投稿することにしたいと思います。 なにしろこの時期は落ち着きませんので今回はホッキョクグマの生息数や生態調査に用いられる方法についてのみ触れておきます。

以前に 「ホッキョクグマの生態・生息数調査に衛星画像利用の試みがなされる ~ 果たして本当に有効か?」 という投稿で野生のホッキョクグマの生態調査や生息数調査について用いられる方法は大雑把にいって二つあるということを述べました。 それは
(A)Capturing-and-Tagging 法 (*Mark-and-Recapture法)
(B)Aerial survey 法

というもので、その内容についてもすでに述べています。 この(A) の "Capturing-and-Tagging 法" についてですが、昨年あたりから、この方法はホッキョクグマの負担をかける方法であるという一部の批判も出てきているわけで、それはホッキョクグマを動かないようにするための鎮静剤の効果がもたらす負担と、ホッキョクグマの体にタグなどの一種の装置を装着させるために彼らの生態に良くない影響を与えるのではないかという二点からなる批判です。 (*追記 - 報道を参照しますと、科学者たちがこの方法を採用することに最も反対しているのはイヌイットのようで、彼らが言うにはこの方法ではホッキョクグマたちの体内に化学物質が残留して健康に悪影響を与えるというだけでなく科学者のこの調査方法はイヌイットの文化にとって重要であるホッキョクグマへの敬意の欠如であると主張しているそうです。 このイヌイットによる批判は笑止千万ですね。 彼らはホッキョクグマというものはイヌイットのために存在していると考えているようです。 だから全体生息数の把握、そして保護などという観念がないわけですね。)  過去40年間にわたってこの方法でアラスカのボーフォート海の南側でホッキョクグマの生態を研究してきたアメリカの地質調査所(USGS - United States Geological Survey)、そして魚類野生動物保護局 (U.S. Fish and Wildlife Service)、そしてチュクチ海でのWWFの調査の様子を一部映像でご紹介しておきます。







アメリカ地質調査所 (USGS - United States Geological Survey)はこういった調査方法に対する一部からの批判に応える形で、この調査方法が本当にホッキョクグマに悪影響を与えているのかを調査しました。そして報告書としてまとめられたものが発表されました。 この ” Effects of capturing and collaring on polar bears: Findings from long-term research on the southern Beaufort population” という報告書は “Wildlife Research” 誌に発表されたわけですが、残念なが出版社のサイトではこの研究報告は有料で購入する以外に全文を読むことができませんが、USGSがそのサイトで簡単な内容を説明しています。 それによりますと、すでに過去のこの方法で血液などのサンプルを採取したホッキョクグマを再度また捕獲して同じように血液などを採取し、そしてそれらを比較するという方法などを用いて得た結論は、こういった調査方法はホッキョクグマの健康や活動に何ら悪影響を与えていないという調査結果が出たそうです。 具体的なデータなどを含めその詳しい内容は全文を読まなければよく掴みきれないものの、こうした調査方法が彼らの生態に悪影響を与えていないということになれば、この方法が今後も用いられていくことになると思います。

こういった調査はホッキョクグマを取り巻く環境の悪化のスピードが増すであろうことを考えればやはり急がねばなりませんし、おそらくこれが現在のところ最も確かな方法だと思われます。

(資料)
U.S. Geological Survey (Newsroom / Dec.15 2014 - New Scientific Study Supports that Capture-based Research is Safe for Polar Bears)
USGS Alaska Science Center (Journal Article - Effects of capturing and collaring on polar bears: Findings from long-term research on the southern Beaufort population)
CSIRO Publishing ("Effects of capturing and collaring on polar bears: findings from long-term research on the southern Beaufort Sea population")
Polar Bears International (Capture-Recapture Estimation and Polar Bears)
(*追加資料)
CBC (Dec.17 2014 - Polar bear tranquillizers, collars do no lasting harm: study)

(過去関連投稿)
ホッキョクグマの生態・生息数調査に衛星画像利用の試みがなされる ~ 果たして本当に有効か?
by polarbearmaniac | 2014-12-16 23:45 | Polarbearology

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