街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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近年の海氷面積減少によりホッキョクグマの集団レベルでの北極点方向への移動傾向が明らかになる

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ホッキョクグマの集団レベルでの移動傾向
(C)USGS/PLOS ONE

アメリカの地質調査所(USGS - United States Geological Survey)の研究者チームが新しい研究調査による報告を発表しています。 科学雑誌である PLOS ONE の最新号に発表されたその報告のタイトルは “Implications of the circumpolar genetic structure of polar bears for their conservation in a rapidly warming Arctic” というもので、これはホッキョクグマの四つの生息区分地域からホッキョクグマを集団として19の地域個体群を抽出し、過去20年間ほどの遺伝子流動 (Gene flow - ある集団から別の集団への対立遺伝子、あるいは遺伝子の移動) を調べてみたところ過去20年ほどの結果としてこの四つの生息区分地域のうちハドソン湾西岸地区を含む"Southern Canada" とロシア極北を含む"Eastern Polar Basin" という二つに生息区分地からカナダ最北部の群島地域を含む"Canadian Archipelago" という生息地へとホッキョクグマの集団レベルでの北の方向への移動傾向が確認できたそうです。 USGSはもっと以前の遺伝子流動のデータもチェックしてみたところ、過去にはこのような北の方向への移動は見られないということです。 つまりやはり近年の海氷面積の減少によってホッキョクグマたちは集団レベルで、より海氷が安定している北極圏の中心に少しづつ移動しているという傾向がわかってきたというわけです。

さて、一方でホッキョクグマたちが食料を求めて南下してくるという傾向も近年は報告されているわけで今回のUSGSの研究報告とは逆の傾向を示しているかのようにも考えられるわけですが、しかし今回の分子生物学の手法による研究報告ではホッキョクグマたちは集団レベルでは、より北の北極点に移動する傾向を見せているわけで、近年観測される彼らの南下についてはあくまで個体レベルの話でしかないのだという理解をしておくのが正しいということなのでしょう。 つまりUSGSが分子生物学の手法によって明らかにした今回の研究報告の示すところでは、ホッキョクグマたちは海氷面積の減少によって本来の生息地から南下してヒグマと交雑することによって生き残っていくという従来の推測は正しくない可能性が非常に強く、より北へ、より北へと、海氷の安定した地域を求めてさらに北上していくだろうということを意味することになるのだということになります。 やはり分子生物学の手法によって出された結論(北上)は、単なる生態系を重視する従来の生物学の考える予想(南下)とはかなり違うということに驚きます。

(資料)
PLOS ONE (Jan.6 2015 - “Implications of the circumpolar genetic structure of polar bears for their conservation in a rapidly warming Arctic”)
United States Geological Survey (press release) (Jan.6 2015 - Polar Bears Shifting to Areas with More Sea Ice -- Genetic Study Reveals)
Discovery News (Jan.6 2015 - Polar Bear Gene Flow Shows Move to Icier Regions)
(*追加資料)
Washington Post (Jan.7 2015 - As ice melts, polar bears migrate north)
Scientist (Jan.7 2015 - Going with the Flow)
Alaska Public Radio Network (Jan.7 2015 - Canadian Archipelago Likely To Become Important Polar Bear Conservation Region)
Alaska Dispatch (Jan.10 2015 - Study shows polar bears relocating to icier Canadian Archipelago)
by polarbearmaniac | 2015-01-07 17:00 | Polarbearology

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