街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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バリーバ、クルミ、ポーラの「戦い」の休戦 ~ Female Bears of the Past, Present and Future

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バリーバ (2013年2月10日撮影 於 横浜ズーラシア)
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クルミ (2013年7月27日撮影 於 男鹿水族館)
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ポーラ (2013年2月2日撮影 於 仙台・八木山動物公園)

昨年のシーズンに出産が期待されていたバリーバ(よこはま動物園ズーラシア)、クルミ(男鹿水族館)、ポーラ(仙台八木山動物公園) についてはそれぞれ黙示的、非公式的といったような情報発信の性格の違いこそあれ、昨年の繁殖シーズンの出産への試みは実質上断念した旨の意向がそれぞれの飼育園より発せられています。 冷静に考えてみれば、そもそも 「飼育下でのホッキョクグマの繁殖は極めて難しい」 という一般論が単にこの三頭にも適用されたに過ぎないという理解で正しいでしょう。 世界中の動物園を見渡して出産に成功せずに産室から出てきた雌についていちいち個別に述べていてはいくら時間があっても足りませんので本来はこういったケースは省きたいのですが、今回は特別に触れておくことにします。
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バリーバ (2013年2月10日撮影 於 横浜ズーラシア)

バリーバ(24歳)については、2012年、2013年、2014年と三度の繁殖挑戦を行ったわけで、これで繁殖の舞台からは引退させてやるのがよいと思われます。 もう無理させる必要はないでしょう。 繁殖の舞台においては過去 (past) のホッキョクグマにしてやっても当然の年齢なのです。 これは私なりの用語表現ですが 「繁殖資源 (Reproduction Resources)」 という概念の存在を考えてみた場合、それは繁殖可能期の個体、そしてその個体が飼育されているスペースという二つの要素から構成されるものです。 前者については繁殖可能な年齢である雄のジャンブイにこれ以上バリーバをパートナーとさせることは貴重な野生出身個体である彼の今後の繁殖シーズンへの 「空費」 につながりかねませんし、後者についてズーラシアはジャンブイのパートナーとしてバリーバも含めて雌を二頭飼育して両方に繁殖に挑戦させようということならば話は別ですが、そうするような意図が現時点では見えていないという点です。 つまりこれを簡単に言いかえればジャンブイとバリーバのペアに今年以降も繁殖に挑戦させるのは 「繁殖資源の空費」 というわけです。 さらにこのバリーバについては、これはあまり言いたくない話ですが彼女の血統上の極めて重大な問題点と疑惑が100%完全には払拭できていないということもあります(「ピース、その生と死の地平線の彼方に ~ 彼女の癲癇(てんかん)は母親の血統の『負の遺産』が原因?」。 (*追記 - 上の投稿を読んでいただければわかりますが、私はこの「疑惑」は事実ではないと考えています。しかしそれはあくまでも「状況証拠」のようなものが根拠であり、事実ではないということの直接証拠はなく、したがって私の見解は完璧な証明ができないでいるいうことです。ですから「疑惑」は100%払拭できないというのはそういった意味からです。) (*後記 - その後多くの調査を行ってみましたが、この「疑惑」は実は限りなく真実に近いという結果が出てしまいました。)
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クルミ (2013年7月27日撮影 於 男鹿水族館)

次にクルミ(18歳)です。 これは周囲やファンにはかなり彼女の出産への期待が大きかったわけで、彼女が今回も出産するのはもう当然だといったような雰囲気すらありました。 まさに現在形 (present) のホッキョクグマです。 ただしかし、やはり飼育下でのホッキョクグマの繁殖一般について言えること (つまり「ホッキョクグマの繁殖は非常に難しい」) について彼女がその例外となるのだというものではなかったということです。 クルミと豪太の間の繁殖挑戦についてですが、クルミが男鹿に移動したのは2011年4月であったものの実質上の繁殖挑戦は2012年のシーズンが最初であり、その最初でいきなり成功したわけですが、あまりにうまくいきすぎてしまったということです。 二度目以降も最初のようにうまくいくほどホッキョクグマの繁殖は簡単ではないということですし、ましてや一昨年には秋田県の首長自らがクルミの二度目の繁殖挑戦のための強引で拙速な舞台作りに政治的権力を用いて暗躍するなど本来は決してあってはならない動きを見せたわけで、そうしたことによって私個人的にはクルミの早速の二度目の出産成功を期待する気持ちは急速に萎えてしまっていたということです。 いや、それは私だけではなかっただろうと思います。
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ポーラ (2013年2月2日撮影 於 仙台・八木山動物公園)

次にポーラ(10歳)ですが、彼女にはまだまだこれから先 (future) のあるホッキョクグマです。 しかも彼女のパートナーはあの偉大なウスラーダが彼女の多くの子供たちの中でも長女のシモーナと同様に最も長い期間に渡って手塩にかけて育てたカイ(ラダゴル・メンシコヴィチ)です。 ポーラについては気長に、そして静かに見守るべきでしょう。

(過去関連投稿)
バリーバの素顔 ~ 熟成を期待される隠された彼女の母性発揮の最後のチャンスはあるか?
ピース、その生と死の地平線の彼方に ~ 彼女の癲癇(てんかん)は母親の血統の「負の遺産」が原因?
独立自尊のミルク、その涙無しの旅立ち ~ また釧路でお会いしましょう、お元気で!
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男鹿水族館のクルミの苦戦の理由は何だったのか? ~ “The Female Bear of Uncertainty”
25年前の東ドイツにいた「もう一頭のクヌート」 ~ ユキ(姫路)とポーラ(仙台)の父親の物語
セルビア・パリッチ動物園のビョルン・ハインリヒ死す ~ ユキ(姫路〕 とポーラ(仙台) の父親の訃報
セルビア・パリッチ動物園のシンバ (姫路のユキ、仙台のポーラの母) がハンガリーのソスト動物園へ
猛暑など意にも介さぬ驚異的スタミナのポーラ
台風一過の暑さにも俊敏な動きを披露するポーラ ~ エース級の若年個体が真のエースとなる日
ウスラーダお母さんの10番目の子供、カイ (八木山動物公園 / ロシア名 : ラダゴル )のロシア時代の姿
カイ (仙台・八木山動物公園 / ロシア名:ラダゴル) とウスラーダお母さんの物語
by polarbearmaniac | 2015-01-08 18:00 | Polarbearology

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