街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

プロフィールを見る

釧路市動物園の「遊びの天才」ミルクを親子関係から考える ~ 「コロ/クルミ」 と 「クルミ/ミルク」の違い

a0151913_10371331.jpg
ミルク  (2013年5月1日撮影 於 男鹿水族館)

釧路市動物園で暮らす二歳の雌のホッキョクグマのミルクについて北海道新聞の本日1月30日付け電子版がその様子を報じています。 「遊びの天才」であるミルクの飼育展示場での様子を伝えています。 その映像を見てみましょう。



私は以前に 「ミルクの遊びの本質を探る ~ 一つ一つの小さな喜びを積み上げて日々の生き甲斐へと見事に昇華」 という投稿でこのミルクの遊びの本質を考えてみたことがあり、私としてはその投稿でこのミルクの遊びが何を意味するかについては自分なりの方法でだいたい説明できたと思っています。 このミルクの遊びは彼女自身が遊び好きであるというよりも、彼女自身の考え方や生き方がこうした特異な遊びにつながっているというのが私の考え方です。 「小さなことでも、何かを達成・実現するために自ら緊張を高め、そしてその緊張を満足感によって解放する」、その手段が彼女の遊びの本質の部分だろうと思っています。 そしてその彼女の遊びは他のホッキョクグマでは全くといって良いほど見ることのできない「人間的」な動きを伴うわけで、見ている者にとっては予想外のおもしろさを感じさせてくれるわけです。 そういったミルクの遊びを三つの映像で再度ご覧いただきたく思います。

ミルクの遊び(1)
ミルクの遊び(2)
ミルクの遊び(3)

以前、コロ(ミルクの祖母)がどのように幼年時代のクルミ(ミルクの母)に接していたかを実際にご覧になった方のお話を聞いたことがありますが、クルミはコロが年齢を重ねた後(22歳だったかな?)に産んだ子供なのでコロはクルミと一緒に遊んでやることはほとんどなかったためにクルミは自分で遊ぶことを習得したというお話でしたが、それは多分その通りだろうと思います。 クルミにとってコロという自分の母親は自分が超えることのできない壁のようなものであっただろうと私は想像します。 一方このミルクに関しても私はコロ/クルミの親子の関係が投影されているだろうと考えていますし、それはクルミがミルクと本当に楽しそうに遊んでいたわけではないのでミルクは自分なりの遊びを開拓したのだということで、さほど大きな間違いではないだろうと思っています。 つまり母親の子供への「非関与性」が大きく関係しているということです。 ここで釧路市動物園でのコロ(当時30歳)とクルミ(当時8歳)の貴重な映像を再度ご紹介しておきます。



さて、しかしコロ/クルミの関係とクルミ/ミルクとの関係の違う点は、ミルクは自分の母親であるクルミをすでに意識の中で「超えている」、つまり母親を上から見つめていたということです。 この点においてクルミ/ミルクの関係はノヴォシビルスク動物園のゲルダ/シルカの親子関係に似ていると考えています。 ウスラーダやフギースといった母親たちはその「絶対的権威」によって子供たちのはるか上に存在しているわけですが、私はこの関係が逆転している例はこのミルクとシルカくらいしか思いつきません。

ホッキョクグマの母親から子供たちが旅立つ時、それまでの親子の一年を振り返るといつも私は、「実は子供たちが主役だったのではなく、本当の主役は母親だったのだ。」 と気が付くのです。 ところがミルクやシルカの場合は、やはりミルクやシルカが主役であり続けたということです。 ホッキョクグマの親子にはやはり多種多様な関係があるということを興味深く感じています。 これこそがホッキョクグマ観察の醍醐味なのです。

(*追記 - ホッキョクグマの母親は出産・育児を繰り返すごとにだんだんと自分の子供に対して「非関与的」になっていくという考え方があります。 釧路市動物園コロ/クルミの関係にそれを見る人がいらっしゃるかもしれません。 私も一時期そのような考え方を持ったこともありましたが、しかし昨年レニングラード動物園で見たウスラーダと彼女の16番目の子供であるザバーヴァとの関係を観察しますと、この出産・育児回数と「関与的」「非関与的」な親子関係とは無関係であるということがわかりました。 ですので、「出産・育児を繰り返すごとに母親はだんだんと自分の子供に対して『非関与的』になっていく」 という考え方は間違いであると現在は考えています。)

(資料)
北海道新聞 (Jan.30 2015 - 2歳のホッキョクグマ、ネットで話題「人間みたい」 釧路市動物園

(過去関連投稿)
*男鹿水族館、釧路市動物園訪問記
男鹿水族館の赤ちゃん、はじめまして!!
クルミの赤ちゃん(クーシャ - 仮称) の素顔と性格 ~ 一般公開日初日の印象
クルミお母さんの性格と母親像 ~ その 「対象非関与型母性」への評価について
梅雨期の出羽の国、男鹿水族館でクルミ母娘との再会
美しく成長を遂げつつあるミルク ~ その素顔と性格
クルミお母さんの母親像を再度考える ~ 「求心性」、「非求心性」の第三の座標軸から見えてくること
クルミ母娘の夏の日 ~ 大きな展示場へ移動した親子との再会
"La tristesse allante de Milk" ~ クルミとミルクの母娘関係と行動の基本的構図を探る
悪天候、そして夏の終わりの男鹿水族館 ~ 転換点を迎えたクルミとミルクとの母娘関係
驚くべき進化を遂げつつあるミルク ~ "Efforcez-vous d'entrer par la porte étroite..."
過ぎ去らない夏の残る男鹿水族館 ~ クルミとミルクの母娘模様
ミルクの楽しいおもちゃ遊び ~ 超一流の遊びの能力
独立自尊のミルク、その涙無しの旅立ち ~ また釧路でお会いしましょう、お元気で!
ミルクの遊びの本質を探る ~ 一つ一つの小さな喜びを積み上げて日々の生き甲斐へと見事に昇華
*ホッキョクグマの母親像
「情愛型」 と 「理性型」、「対象関与型」 と 「対象非関与型」 のそれぞれの母親像の違いを探る
クルミお母さんの母親像を再度考える ~ 「求心性」、「非求心性」の第三の座標軸から見えてくること
クルミ、その特異なる母性へのオマージュ ~ 「母親」 たることを拒絶した、その逆説的母親像への敬意
by polarbearmaniac | 2015-01-30 11:00 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
エッセイ、コラム
街角にて
未分類

最新の記事

ロシア南部 ・ ドン河下流の..
at 2017-06-27 19:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2017-06-26 23:50
アメリカ・オレゴン動物園のノ..
at 2017-06-25 22:30
ロシア・サンクトペテルブルク..
at 2017-06-24 23:30
ロシア・ペンザ動物園のベルィ..
at 2017-06-23 23:00
ロシア・西シベリア、セヴェル..
at 2017-06-22 23:00
ロシア・中部シベリアに記録的..
at 2017-06-21 18:30
アメリカ・フィラデルフィア動..
at 2017-06-20 23:50
デンマーク・オールボー動物園..
at 2017-06-19 22:00
オーストラリア・ゴールドコー..
at 2017-06-19 20:30

以前の記事

2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ライフログ


人生と運命 1


スターリン―青春と革命の時代


モスクワは本のゆりかご


私のモスクワ、心の記憶


自壊する帝国 (新潮文庫)


甦るロシア帝国 (文春文庫)


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


ロシア 春のソナタ、秋のワルツ-1999-21st


それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影


ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫)


わがユダヤ・ドイツ・ポーランド―マルセル・ライヒ=ラニツキ自伝


ベルリン戦争 (朝日選書)


Hof――ベルリンの記憶


カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺


北京烈烈―文化大革命とは何であったか (講談社学術文庫)


慟哭の通州――昭和十二年夏の虐殺事件


主題と変奏―ブルーノ・ワルター回想録 (1965年)


藤田嗣治 異邦人の生涯


Barle's Story: One Polar Bear's Amazing Recovery from Life As a Circus Act


Hotel Adlon: Das Berliner Hotel, in dem die grosse Welt zu Gast war


Ein seltsamer Mann


Alma Rose: Vienna to Auschwitz


St Petersburg: A Cultural History


Gulag


The Guest from the Future: Anna Akhmatova and Isaiah Berlin