街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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バーリン(カンザスシティ)とコリンナ(シュトゥットガルト)が繁殖の舞台から引退か? ~ 25歳の曲がり角

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バーリンとニキータ(カンザスシティ動物園) Photo(C)Kansas City Zoo

出産が期待されていた二頭のホッキョクグマは昨年末に産室内で25歳という非常に微妙な年齢となったものの、結局は出産が無く二頭共に飼育展示場に復帰したニュースが報じられています。 その二頭とはアメリカ ・ミズーリ州のカンザスシティ動物園のバーリンとドイツ・シュトゥットガルトのヴィルヘルマ動物園のコリンナです。

このホッキョクグマの雌の25歳というのは繁殖については異なる二つの評価がなされる年齢です。 まずアメリカのカンザスシティ動物園のバーリンですが、彼女は昨年当時7歳だった雄のニキータをパートナーとして二度目の繁殖挑戦だったわけですが、今回も出産には至らず1月初旬に飼育展示場に復帰しました。 その映像をご紹介しておきます。

このバーリンは今まで出産経験がなかったわけですが、一昨年に引き続いて昨年もニキータとの間で繁殖行為が確認されていたため10月中旬から展示を中止して産室への入り口のあるスペースで飼育されていました。 しかし結局、妊娠しているような兆候がなかったようで1月初旬に飼育展示場に復帰したわけですがカンザスシティ動物園はこういったバーリンに対する一連の展示の有無について特別な公式発表は行わなかったわけですが、それはやはりバーリンの出産に対してあまり過度な期待を持ってほしくないといった気持ちがあったことも間違いないだろうと思います。 欧米の動物園では基本的には雌を産室に「閉じ込める」という発想はないわけで、産室にはその気になれば入っていくことができるという自由度を持たせている場合が多く、カンザスシティ動物園のバーリンの場合もそれにあたっています。

このバーリンは過去に出産経験が無いわけで、こうしてニキータと年齢差のあるペアを組んでいるにはやはりアメリカの動物園における雌不足という事情があるからでしょう。 ともかく25歳という年齢になってそれまで出産が無いバーリンは今年以降についても出産に至るのは極めて困難な状況だと考えられます。 しかしカンザスシティ動物園は当然このバーリンとニキータの同居を今年もすでに開始しており、これはバーリンの繁殖への期待という以上に、相性の良いこのペアの姿を来園者に楽しんでもらいたいということからでしょう。
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コリンナとヨギ(ヴィルヘルマ動物園) Photo(C)Wilhelma Stuttgart

さて、もう一方のドイツ・シュトゥットガルトのヴィルヘルマ動物園のコリンナも産室内で25歳を迎えましたが彼女の出産については多くの期待があったわけです。 彼女は2007年12月に故アントンとの間で雄のヴィルベア (Wilbär) を出産しており、その時は実に素晴らしい育児能力を発揮したわけでした。 その後も二度ほど出産していたそうですが赤ちゃんは誕生の2~3日後に亡くなってしまって成育には至らなかったそうです。 このコリンナのパートナーだったアントンは昨年2月に飲み込んだ異物が原因で不幸な死を遂げてしまったのですが、今度はミュンへのヘラブルン動物園の当時14歳の雄のヨギがパートナーとしてヴィルヘルマ動物園に繁殖のために出張してきたわけで、昨年春にこのヨギとの間で繁殖行為が確認されていたため昨年はコリンナの出産に大きな期待がかかっていたというわけです。 このヨギがヴィルヘルマ動物園に到着した後の様子をTVのニュース映像で見てみましょう。



しかし1月下旬にヴィルヘルマ動物園はコリンナにはもう出産は無いとして彼女は飼育展示場に復帰したそうです。 彼女が妊娠していたのならば、じっとしているはずのものが今回の彼女はそうではなかったということだそうです。 ヴィルヘルマ動物園は相当に落胆している様子です。 コリンナは出産・育児経験があるとはいえすでに25歳になったわけで今年以降も他園の雄の出張を受けてさらなる繁殖に挑戦させるというのには相当に微妙な年齢です。 ヴィルヘルマ動物園では数週間のうちに同園での向こう20年間のホッキョクグマ飼育についてどうするかを決定する予定だそうです。 何か非常に根本的な方針を考えていくということなのでしょうか。 つまりホッキョクグマの飼育を止めてしまうという決定も十分あり得るように思います。 私などは今年は欧州の雄のエース中のエースであるニュルンベルク動物園のフェリックスをヴィルヘルマ動物園に出張させてイチかバチかもう一度だけコリンナに繁殖に挑戦させてやりたいようにも思うのですが、そういったこと無しにこれでコリンナを繁殖の舞台から引退させるということになりそうです。

ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダは一昨年の11月に産室内で26歳の誕生日を迎え、そしてその後の12月に彼女の16頭目の子供となるザバーヴァを出産しているわけですが、これは出産・育児を何度も繰り返して成功させた彼女にして可能なことであり、出産経験のないカンザスシティ動物園の25歳のバーリンはもうこれで繁殖成功への道はほぼ完全に絶たれたと考えてよいと思いますが、出産・育児経験はあるとはいえヴィルヘルマ動物園のコリンナもこれで繁殖の舞台からの引退はいたしかたのないことかもしれません。 日本でもバリーバ(横浜)やサツキ(旭川)は25歳にまではなっていませんが繁殖の舞台からは引退させてやってよいと思いますしキャンディ(札幌)は場所を変えてもう一度挑戦させてやるというところが精一杯ということではないでしょうか。 バリーバやサツキについては産室に「閉じ込める」という発想ではないやり方ならばさらに挑戦させることは負担ではないと思いますが、施設の構造上の問題がありますから直ちに対応は難しいかもしれません。 しかしそういう「閉じ込める」という発想をしないとしても、だいたい24/25歳 (つまり産室内で25歳の誕生日を迎えるといった年齢) がホッキョクグマの繁殖可能年齢の上限だと考えておいてよいのではないでしょうか。 ウスラーダは現代における別格のホッキョクグマであり、長年にわたって出産を繰り返していますからそういう上限は当てはまらないというだけの話です。

雌のホッキョクグマの繁殖可能年齢に上限については「ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダの歩む道 ~ 再説: 繁殖可能年齢上限」という投稿を是非ご参照いただきたいのですが、雌のホッキョクグマの最高齢出産世界記録は38歳2か月、最高齢出産成功世界記録 は35歳11か月という驚異的な記録が存在しています。 これは両方ともアメリカ・デトロイト動物園で飼育されていたドリス (1948 ~ 91) が打ち立てた輝かしい記録です。 しかしそういう記録があるからと言ってホッキョクグマを全てその年齢まで繁殖に挑戦させるということは現実ではありえないでしょう。 ちなみに、このドリスは世界最高齢記録(43歳10ヶ月)も保持しているわけです。 まさに「伝説のホッキョクグマ」 といったところでしょう。

(資料)
NNCNOW (Jan.20 2015 - Former Duluth polar bear back on exhibit)
KCTV5News (Jan.8 2015 - Berlin makes return to public display on frigid day fit for polar bears)
STUTTGARTER-NACHRICHTEN.DE (Jan.28 2015 - Kein Mutterglück für Eisbärin Corinna)
BILD (Jan.28 2015 - Eisbärin Corinna bekommt kein kleines Bären-Baby)

(過去関連投稿)
*バーリン関連
アメリカ・ミネソタ州ダルース、スペリオル湖動物園のバーリンのお誕生会 ~ 個体の死因追及について
アメリカ・ミネソタ州ダルース、スペリオル湖動物園のバーリンが同地域を襲った洪水で飼育場から一時逃亡!
アメリカ・ミネソタ州スペリオル湖動物園のバーリンが洪水からの一時避難のためコモ動物園に収容
アメリカ、スペリオル湖動物園のバーリン、避難先のコモ動物園の展示場 ("Polar Bear Odyssey") に登場
アメリカ・ミネソタ州、コモ動物園のバーリンが腹部の検査手術を受ける
アメリカ・ミネソタ州コモ動物園のバーリンの手術後の回復は順調 ~ 再び展示場へ
アメリカ ・ ミネソタ州 コモ動物園のバーリン、手術後の経過は良好 ~ 待望される完全回復
アメリカ ・ コモ動物園のバーリンがカンザスシティ動物園へ ~ 「ニキータとバーリンの物語」は可能か?
アメリカ・ミネソタ州のスペリオル湖動物園で不在のバーリンのお誕生会 ~ “Berlin is our family."
アメリカ・コモ動物園のバーリンがカンザスシティ動物園に無事到着 ~ 繁殖に大きな期待を寄せる地元
アメリカ・ミズーリ州カンザスシティ動物園の展示場にバーリンが遂に初登場 ~ 期待に加熱する地元報道
アメリカ・カンザスシティ動物園の年齢差ペア、バーリンとニキータの初手合い ~ 圧倒的年齢差克服のカギ
アメリカ ・ カンザスシティ動物園のニキータの病状検査続く ~ 雌のバーリンへも投薬治療が再開
アメリカ ・ カンザスシティ動物園のニキータの病状快方へ ~ “Much Ado About Something ?”
アメリカ ・ カンザスシティ動物園のニキータ、体調が回復し展示場に完全復帰 ~ “Nikita is back !”
ビーグル犬のエルヴィス君の妊娠判定(1) ~ カンザスシティ動物園のバーリンは “妊娠なし”
アメリカ ・ミズーリ州、カンザスシティ動物園のニキータとバーリンの近況 ~ 沈静化した報道
*コリンナ関連
スウェーデン、オルサ・グレンクリット、ベアパークのヴィルベア、静かに 「偉大なる父」 となる日を待つ
ドイツ・シュトゥットガルト、ヴィルヘルマ動物園のアントン、飲み込んだ異物が原因で急死
ドイツ・ミュンヘン、ヘラブルン動物園のヨギがシュトゥットガルトのヴィルヘルマ動物園へ繁殖目的で移動
*繁殖可能年齢関連
アメリカ、デトロイト動物園のベアレ逝く ~ 20歳で初出産に成功したサーカス出身のホッキョクグマの生涯
高齢のデビーを愛し、慈しみ、送った人々 (上)
高齢のデビーを愛し、慈しみ、送った人々 (下)
カナダ・マニトバ州、アシニボイン公園動物園の新展示場施設の建設  ~  偉大なるデビーの遺したもの
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダの歩む道 ~ 再説: 繁殖可能年齢上限
ララ (札幌・円山動物園) は、あと何度出産するか?
by polarbearmaniac | 2015-02-02 23:45 | Polarbearology

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