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南フランス・アンティーブ、マリンランドでフロッケが出産に成功! ~ 雌の人工哺育個体繁殖不能論の崩壊

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産室内のフロッケと赤ちゃん Photo(C)MARINELAND

大きな、そしてある意味では歴史的とも評価できるニュースが入ってきました。 ドイツのニュルンベルク動物園より正式発表があり、今年の元旦に私が行ってきたばかりの南フランス・コートダジュール、アンティーブのマリンランドでニュルンベルク動物園で2007年12月に誕生し人工哺育で育てられた雌のフロッケが昨年11月26日に一頭の赤ちゃんを出産していたそうです。 フロッケは出産当時は6歳で現在では7歳になっています。 父親はもちろん男鹿水族館の豪太の弟であるラスプーチンです。 このフロッケの繁殖への挑戦について私は昨年12月13日に「南フランス・コートダジュール、アンティーブのマリンランドのフロッケに立ちはだかる『繁殖』という壁」という投稿を行ったのですが、なんとその時点で実はフロッケは出産していたということになります。 私は正月元旦にマリンランドに行きました時もフロッケの姿は見当たらず、まだ産室なのだろうと軽く考えていましたが、本当に出産していたとは思ってもいませんでした。 そしてマリンランドでは来園者に静寂を求めるような注意書きを何一つ貼っていませんでした。 
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Photo(C)MARINELAND

今回のフロッケの出産の情報はマリンランドの公式発表ではなく、マリンランドがフロッケの生まれたドイツのニュルンベルク動物園にその事実を伝え、そしてニュルンベルク動物園が赤ちゃんの誕生を正式発表したということです。 マリンランドは公式の立場では本日現在、まだ沈黙を守っているようです。 要するにマリンランドは非常に慎重な姿勢だということです。 フランスのマスコミも現時点ではこの情報は掴んでいないようです。 赤ちゃんが誕生したマリンランドではなく、なんと母親が生まれたニュルンベルク動物園のほうが先に正式発表してしまったということです。 なんだか滑稽な話ですね。 こういうことは前代未聞でしょう。 赤ちゃんの誕生からもう75日が経過していますので、このフロッケの産んだ赤ちゃんは、どうやらうまく成育しているようです。 (*追記 - 一時間ほど前にフランスのマスコミがこれを報じ始めました。 赤ちゃん現在の体重は10キロになっており、フロッケお母さんは赤ちゃんに二時間おきに授乳しているそうです。 獣医さんを中心とした数名のチームが産室内のモニターカメラの映像を常にチェックしているそうです。 それからマリンランドもSNSのページで赤ちゃん誕生の事実をようやく公表しました。)
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Photo(C)MARINELAND

以前から、「人工哺育された雌は繁殖に成功しない。」 という一種のテーゼが存在していたわけです。 このテーゼの基礎にあるのは 「母親の育児を受けなかった雌の個体は、自らが出産して育児を行うことはない」 という考え方ですがこれについて私は幾分は疑問をもっていたわけです。 というのは、以前にも申し上げていますが、ホッキョクグマの母親は産室内で出産した直後の行動は本能で行っているはずで、自分がそういう経験をしたかどうかとは関係がないだろうと考えられるからです。 母親の母性は出産から幾分時間が経過しでから少しずつ発揮され、そして本能を押しのけてだんだんと母性が大きな役割を果たすというのが正しい考え方だろうと思うわけです。 実はこのフロッケは母親であったヴェラお母さんの授乳を生後四週間近く受けた後に人工哺育に切り替えられたわけで(この経緯については過去関連投稿をご参照下さい)、「クヌート/ピース型」の完全人工哺育ではないわけですから、「人工哺育された雌は繁殖に成功しない。」というテーゼが完全に崩壊したわけではないという考え方もあるわけですが、しかしこのフロッケは母親の本能から母性発揮への移行期を経験していない個体であることには違いなく、そのことを考えるとこの「雌の人工哺育個体繁殖不能論」 は崩壊したと考えるのが正しい評価でしょう。 そしてフロッケは人工哺育された後もラスプーチンという遊び友達を相手にして 「適応化 (Socialization)」 に見事に成功した個体であり、これが今回の出産成功に大きく寄与したことは間違いないものと思われます。 これはマリンランドの快挙である以上に、フロッケを人工哺育し、そして「適応化 (Socialization)」に成功したニュルンベルク動物園の快挙だろうと思います。

以前にもご紹介していますが、マリンランドでのフロッケとラスプーチンの昨年9月の様子を再度見てみましょう。 音声はon でお願いします。



なるほぢ、「瞑想するフロッケ」の姿が見えます。 今にして思えば、やはり出産の予感といったものが感じ取れるような気もします。
(*追記 - ペルミ動物園のアンデルマの息子がメンシコフ、そのメンシコフの娘がシモーナ、そのシモーナの娘がヴェラ、そのヴェラの娘がフロッケ、そしてフロッケの娘/息子が今回の赤ちゃんです。 言い換えますと、アンデルマにとって息子はメンシコフ、孫はシモーナ、曾孫はヴェラ、玄孫はフロッケ、そして今回の赤ちゃんはアンデルマにとって来孫ということになります。 いやはや、まったく凄いものです。 アンデルマの直系の一族の繁栄はアンデルマの人徳、いや熊徳でしょう。)

(資料)
Tiergarten Nürnberg (Aktuelles aus dem Tiergarten/Feb.9 2015 - Eisbärin Flocke ist Mutter)
Stadt Nürnberg (Feb.9 2015 / Tiergarteninformation 6/2015 - Eisbärin Flocke ist Mutter)
Nordbayern.de (Feb.9 2015 - Eisbärbaby mit Verbindung nach Nürnberg: Flocke ist Mutter)
mein-mitteilungsblatt.de (Feb.9 2015 - Eisbärin Flocke ist Mutter)
Bayerischer Rundfunk (Feb.9 2015 - Flocke ist Mutter)
(追加資料)
20minutes.fr (Feb.0 2015 - Antibes: Flocke et Raspoutine, les ours polaires de Marineland, ont donné naissance à un bébé)
Francetv info (Feb.9 2014 - Un bébé ours polaire est né au Marineland d'Antibes)

(過去関連投稿)
フロッケの旅立ち、アンティーブの「碧」と「青」の世界へ...
ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択(1) ~ ヴィルマとヴェラの出産 
ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択(2) ~ 消えた赤ちゃん
ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択(3) ~ ヴェラの狂気
ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択(4) ~ 赤ちゃん救出劇
ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択(5) ~ 安楽死/人工哺育是非論への視座
25年前の東ドイツにいた「もう一頭のクヌート」 ~ ユキ(姫路)とポーラ(仙台)の父親の物語
セルビア・パリッチ動物園のビョルン・ハインリヒ死す ~ ユキ(姫路〕 とポーラ(仙台) の父親の訃報
南フランス・アンティーブのマリンランドでのフロッケとラスプーチン ~ マリンランドTVの映像より
南フランス・アンティーブのフロッケの誕生日 ~ 書かれうるか、人工哺育論の最終章のページ
南フランス・コートダジュール、アンティーブのマリンランドのフロッケに立ちはだかる「繁殖」 という壁
(2011年7月アンティーブのマリンランド訪問記)  
アンティーブのマリンランドへ! ~ フロッケとラスプーチンとの初対面
理念無き商業娯楽施設でのフロッケとラスプーチンの存在
(2015年1月アンティーブのマリンランド訪問記)
元旦事始めはアンティーブのマリンランドへ ~ 回遊のラスプーチンとの再会
by polarbearmaniac | 2015-02-09 21:00 | Polarbearology

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