街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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釧路市動物園のミルクが右耳一部欠損の負傷 ~ ツヨシとの(将来の)同居開始予定に当面は影響無しか?

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ミルク (2014年1月25日撮影 於 男鹿水族館)

ネット上で釧路市動物園の二歳の雌のミルクが右耳を負傷したという情報が流れ、その写真も何枚がアップされているようです。 釧路市動物園のHPにはそれに触れた記載は現時点ではないようです。 何日何時にどのような状況でミルクが負傷したのかを実際に目撃した証言はないようで、ツヨシが関係しているという消去法による推定がなされているのももっともだろうと思います。 動物園の公式情報ではないということは、大騒ぎすべきような問題ではないのだと一応は理解しておくこととしましょう。 そして実際、ミルクも元気で遊んでいるようですし園側も負傷については完全に把握しているようですので感染症などの心配がないという判断でしょうから大丈夫でしょう。 命にかかわるような大事に至らなくて何よりでした。

私がこうしたミルクの負傷した右耳の写真をネット上で見た限りでは、「何故右耳が?」 という疑問を持ちます。 何か非常に不自然な感じがします。 つまり今回のミルクの負傷は、こういった場合の原因としてよくある「ケンカ」といったような「闘争」の要因によって生じたものではないように思うわけです。 「闘争」ならば前脚を使用しますので顔に傷が付く場合が多いのですが、こうした右耳だけの負傷ということはツヨシによるミルクに対する格子を隔てての「親愛の情」の表現が原因だったように思われます。 ミルクの体が成長してもっと大きくなると、それにしたがって左耳も大きくなり、相対的にこの右耳の一部欠損は現在以上に目立つかもしれませんが、しかしそこだけに注目してミルクを見ようという人はいないでしょう。 さてここで釧路市動物園の公式映像でミルクの遊ぶ姿を見ておきましょう。 キャプションによれば2月6日の映像だそうです。



飼育下のホッキョクグマの「闘争」というのは成獣では稀に起こります。 雌同士の「闘争」という点ではこのブログを開設して以降でも以前に 「ベルリン動物園で雌のホッキョクグマ2頭が激しく闘争し負傷」 という投稿をしていますが、この時は飼育展示場に新しい雄が登場したために従来は仲の良かった雌同士がケンカをしたという例です。 ベルリン動物園はこの「闘争」について、雄が現れたことによって雌同士のヒエラルキーの確立が行われようとしたことに原因があると解説しています(ドイツ人らしい分析だと思います)。 しかし格子を隔てていたはずのツヨシとミルクの間に 「ヒエラルキーの確立闘争」 が起こったなどとは考えにくいでしょう。 旭山動物園ではルル/ピリカ、サツキ/ピリカ、ルル/サツキという三通りの雌同士の同居はいずれもうまくいっていますが、最初の段階で事前に長い時間をかけて二頭を隔てて「顔合わせ」をさせたという話はあまり聞きません。 旭山動物園がそれをやっていたことは間違いないと思いますが、せいぜい1 ~ 2日でしょう。 つまり今回の件は雌同士という動物園側にとっては予想しにくい事態であり釧路市動物園に非があったとは直ちには言えないだろうと思います。 ただし、教訓としては記憶に長く留めておくべきことのように思います。 
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ミルク (2014年1月25日撮影 於 男鹿水族館)

さて、ここで気分を変えて心温まる映像を再度見てみましょう。 これは一昨年12月9日にミュンヘンのヘラブルン動物園で誕生したネラとノビの双子の産室内での様子です。 雌のノビがジョヴァンナお母さんの右耳ばかりを集中しておもちゃにして、やりたい放題のシーンです。 幼年個体は比較的母親の耳にいたずらする場合があり、モスクワ動物園のシモーナはこれに手を焼いていたというシーンを見たことがあります。 なにしろ赤ちゃんが母親の耳に噛り付いてぶら下がろうとしたわけで、私も肝を冷やしました。



予定されているといわれるツヨシとミルクの同居というのは、やはり実質上は展示場が一つしかないともいえる釧路市動物園にとっては苦しい選択でしょう。 二頭を終日広い場所で過ごさせてやりたいと考えるのは自然です。 ましてやミルクは全国的にも知名度が急速に上がっていますから終日展示したいと考えても当然です。 ですから今回の事件があっても、同居開始の時期の先送りはあってもその同居の方針自体に変わりはないと思います。 11歳と2歳の雌二頭が同居するといった世界の動物園では稀なシーンが見られるであろうことがそもそも正しいのか、つまりツヨシのパートナー問題への展望は根本問題ですので、これについては取りあえずは脇に置いておきます。 またミルクはツヨシと同居しても現在の「遊びの天才ミルク」の行動に変化はないのかという問題も脇に置いておきます。 いずれにせよ二頭の同居問題に関する同園の苦渋は十分に理解できるところです。
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ミルク (2014年1月25日撮影 於 男鹿水族館)

ただしこれは抽象的な言い方になりますが、私にはやはり何か歯車のどこかがうまく噛みあわない状況を感じてしまいます。 「遊びの天才」ミルクと「繁殖適齢期」のツヨシの二頭が存在しているという、この状況自体がうまく噛みあっていないのではないかということです。 

(過去関連投稿)
ベルリン動物園で雌のホッキョクグマ2頭が激しく闘争し負傷
ミルクの遊びの本質を探る ~ 一つ一つの小さな喜びを積み上げて日々の生き甲斐へと見事に昇華
釧路市動物園の「遊びの天才」ミルクを親子関係から考える ~ 「コロ/クルミ」 と 「クルミ/ミルク」の違い
by polarbearmaniac | 2015-02-14 20:00 | Polarbearology

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