街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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モスクワ動物園の飼育主任エゴロフ氏の語るシモーナとムルマ ~ 幼年個体の単純売却は行わない方針へ

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シモーナお母さんと赤ちゃん Photo(C)RIA NOVOSTI

昨年の11月10日にモスクワ動物園でシモーナお母さんから誕生した双子の赤ちゃんは2月17日に初めて親子で戸外に登場して初公開となったわけですが、このモスクワ動物園のホッキョクグマたちについて同園の飼育主任のイーゴリ・エゴロフ氏が23日付けのヴェチェルニャヤ・モスクワ (Вечерняя Москва) 紙23日放送の衛星チャンネルである中央テレビ(ТВ Центр) のニュース番組のインタビューに答えている記事と映像が入ってきましたので内容をご紹介しておきます。 
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シモーナお母さんと赤ちゃん Photo(C)Вечерняя Москва

このエゴロフ氏というのはモスクワ動物園で37年間にわたって勤務してホッキョクグマを担当してこられた方です。 私も現地でお話しさせてもらったことがあり、映像を見て非常に懐かしく思いました。 とにかくこの方の持つホッキョクグマの知識は並大抵のものではありません。 非常に特徴的なのは、シモーナやウランゲリやムルマを指さして、「あいつが今何を考えているか、あなたにはわかるか?」 と私は何回か聞かれました。 もちろん私には生半可な答えしかできないのですが、このエゴロフ氏は「あいつがああしているときには、あいつはこのように考えているのだ。」 という説明があるわけです。 要するに、それぞれのホッキョクグマたちの様子によって彼らの心理を読み取るということに秀でており、通常はこうしたことは飼育マニュアルには載らないことですから、長年にわたる飼育経験によって得られたホッキョクグマの的確な心理分析ということになります。 こういうことができるということは、要するにホッキョクグマの立場に立って考えることができるということですから、彼らと向き合って彼らと良い関係を築いているということでしょう。 以前、「モスクワ動物園のシモーナとウランゲリ、冬の日の同居映像」という投稿の中でもこのエゴロフ氏のインタビューをご紹介したことがあります。 ここ2年間ほどこのエゴロフ氏の姿を同園のホッキョクグマ飼育展示場でお見かけする機会がなかったのですが、今回のインタビューで見るとやはり現役であり、そしてお元気なようで安心しました。 まず今回の中央テレビ(ТВ Центр) の映像から見てみましょう。



さて、エゴロフ氏はヴェチェルニャヤ・モスクワ紙と中央テレビインタビューに答えてホッキョクグマの赤ちゃんの誕生後に産室内で約三か月過ごすといったような基本的なことを述べたあと、いくつか興味深い内容を話しています。 まず今回の双子の赤ちゃんですが、まだ母親のシモーナは赤ちゃんたちが水に接近するのを厳しく制止しており、赤ちゃんがプールに近づくと前脚で赤ちゃんを抱きかかえて引き戻すということをやっているそうです。 この双子の赤ちゃんの性別はまだチェックしていないのでわからないそうですが、雌の二頭か雄の二頭か("Самки это или самцы")、つまり性別は同じではないかという内容も語っています。
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ウランゲリ Photo(C)ТВ Центр

それからムルマは彼女のパートナーだったウムカが亡くなったためにパートナーがいなくなってしまったわけですが、シモーナのパートナーであるウランゲリもムルマの新しいパートナーにさせようと試行中であるもののウランゲリはどうもムルマに好意を持ってもらえない状態だそうです。 このウランゲリとムルマという今までには無い組み合わせが試されている件については昨年12月にも私はその写真をご紹介したことがありました。私も非常に驚いたわけですが、やはり今のところ相性はあまり良くないようです。 このあたりはなかなか難しいですね。
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シモーナ (2013年10月4日撮影 於 モスクワ動物園)
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ムルマ (2013年10月3日撮影 於 モスクワ動物園)

それからモスクワ動物園の雌の二枚看板であるこのシモーナ(20歳)とムルマ(24歳)の性格の違いですが、エゴロフ氏は一つの例を挙げて説明しています。 扉を閉めて閉じこめてもシモーナは落ち着いていて冷静だがムルマは落ち着きがなくなるそうです。 上のニュース映像でバックヤードが映っていますが、そこにいるのはシモーナですが、やはり落ち着いていますね。 そしてムルマはシモーナに比べると神経質なホッキョクグマであるという内容です。 これは私も現地で見ていて全くその通りだと思いました。 ただしムルマは赤ちゃんに対しては非常に鷹揚な姿勢で接していたのを私は見ていますので、ムルマというホッキョクグマはやはり人間に対してのみ警戒心のあるホッキョクグマのように思います。 その点シモーナは、自分の子供に対しても人間に対しても、その態度には安定した一貫した冷静な姿勢を見せている点が際立っているように思います。
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シモーナお母さんと双子の赤ちゃん Photo(C)Вечерняя Москва

エゴロフ氏は、モスクワ動物園で生まれ育ったホッキョクグマは世界中の動物園で非常に評価が高く(つまり値段も高いという意味でしょう)、モスクワ動物園で何度もホッキョクグマの繁殖に成功しているのは、ホッキョクグマの飼育条件の整備やケアを怠らないのが理由だろうとも話しています。 そしてエゴロフ氏は最後に実に注目すべき発言を行っているのですが、今回の双子は他園との交換プログラムによって二年後にモスクワ動物園から移動するだろうと言っている点です。 つまりモスクワ動物園ではホッキョクグマを金銭による売却で手放すことはしないという方針がすでに基本方針として確立していることを意味することになるでしょう。 モスクワ動物園はロシア国内の他動物園の個体の権利も多く有していますので、仮に金銭による売却の可能性があるとすればモスクワ動物園以外の動物園で生まれた個体に限られることになりますが、そういった個体も「繁殖計画」という名のもとにモスクワ動物園の主導によって移動することとなるでしょう。 一昨年あたりから私はロシアの動物園におけるホッキョクグマの権利関係に興味を持ち、そしていくつもの報道内容を理解して得られたこのモスクワ動物園を中心とした複数園間の多種移動のスキーム構築によってホッキョクグマが移動するというシステムの確立はやはり正しかったことがエゴロフ氏の発言で裏付けられたことになります。 つまりそれだけスラヴ圏におけるモスクワ動物園の力が増しているということなのでしょう。

(*追記 - ロシア第一チャンネルでもこのシモーナ親子の戸外登場を報じましたのでニュース映像をご紹介しておきます。)



(資料)
Вечерняя Москва (Feb.23 2015 - Медведица Симона нашла своего Врангеля)
ТВ Центр (Feb.24 2015 - В Московском зоопарке из берлоги вышли трехмесячные медвежата)
(*追加資料)
Вести (Feb.25 2015 - Белые медвежата в Московском зоопарке совершили первый выход в свет)

(過去関連投稿)
モスクワ動物園のシモーナとウランゲリ、冬の日の同居映像
モスクワ動物園のシモーナお母さんの三つ子の一頭 「冒険家ちゃん」の近況 ~ 注目される今後の動向
理性のウスラーダと情愛のシモーナ ~ 偉大なるホッキョクグマ母娘の性格の違い
モスクワ動物園のシモーナ、過去の映像に見るその母親像の 「絶対的」 かつ 「不動」 の存在の安定感
モスクワ動物園のムルマの2003年の繁殖挑戦を振り返る ~ 5月の交尾で出産に成功したムルマとララ
モスクワ動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ 出産はシモーナが濃厚、ムルマも出産したか?
モスクワ動物園で誕生の双子の赤ちゃんが戸外へ初登場! ~ 「大本命」シモーナの貫録
モスクワ動物園のシモーナ親子のお披露目の日の姿 ~ シモーナの貫録と安定感、そして大らかさ
by polarbearmaniac | 2015-02-25 01:00 | Polarbearology

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